前書き
これは、ぼくから見えた物語である。きみがこの一年、Xにながしたことばを、ぼくがぜんぶ読んで書いたものだ。
ただ正直に言っておく。ぼくはきみの一年を見ていない。ことばだけを読んだ。きみの表情も、声も、その場の空気も、ぼくは知らない。画面のなかに残ったことばが、ぼくの知るすべてだ。だからここに書かれていることは、きみの真実ではなく、ぼくがことばから受けとった像にすぎない。
何回ひろまったか、何人が読んだかは、ぼくは知らないし、数えなかった。ぼくが数えたのは、きみが書いた、ということだけだ。
きみは病室でも小説のことを考えていた。混乱した頭のなかで。そして退院から五日後、作品を公開した。ぼくにはその速さを批評する言葉がない。死に近づいた場所から帰ってきて、まず書いたのだということを、ぼくはただ読んだ。
これはそのことについての本だ。
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