← 作品ページへ戻る

讐牟D.C.滅亡都市

連載中(書きかけ)

天音ろっく

66,998 字

ディストピア・サバイバルSF群像劇

"滅びゆく都市の残響に、希望と絶望が交錯する群像劇。"

終末世界を描いた、ダークサバイバル・バトルファンタジー! シュメル歴六百七年八月九日。突如として現れた異形の生命体によって、一瞬のうちに荒廃と化してしまった都市ニゲラ。 保護された施設で無気力なまま過ごしていたエヴァは、ある日突然、施設を襲撃しにやって来た美青年と出会う。 「殺してやる」 そう告げた銀髪の美しい青年の言葉に導かれ、ただ死ぬことを目的として付いて行くことにする。 彼はただの破壊者か、救済者か。その先に得るものは一体なんなのか。 隠された政府の陰謀と、未知なる恐怖との戦い。そこに生きる人々が目にする真実とは──? 生きることに何の価値も見出せず、いっそのこと死んでしまいたいと願う者。恐怖に震えながらも絶望の中で必死に生き抜こうとする者。 大切なものを奪われ、ただ復讐に生きる者。 それぞれが複雑な心境を胸に抱えながらも、生き残った者達は新たな仲間達と出会い、別れ、そして明日を生きる為に戦い続ける。 人類存亡を懸けた壮絶なバトルが──今、始まる。

← 右から左へスクロール

【終わりの始まり編】プロローグ

「──エヴァ」

 その呼び声に背後を振り返ってみると、柔和な笑みを浮かべる美しく整った顔立ちの青年と視線がぶつかる。
 プラチナブロンドの髪は綺麗に整えられ、風に揺れてサラサラと流れる様子はとても柔らかそうだ。微笑んでいても、どこか少し冷たさを感じる涼しげな目元によく似合っている。
 そんな彼は、おそらく誰の目から見ても好青年にしか見えないのだろう。事実、文武両道で絵に描いたような優等生の彼は、妹の私とは違って両親自慢の息子なのだ。

「探したよ」

「…………。ちょっと一人で買い物がしたくて」

「それならそうと、連絡くらいくれないと。迎えに行ったのにいないから心配したよ」

「……ごめんなさい」

「…………。どうやら目当ての買い物はまだのようだね。学校帰りにそのまま遊ぶのはあまりお勧めできないけど……今日は僕がいるからね。エヴァの買い物に付き合うよ」

 私の手元をチラリと確認した兄は、そう告げるとニッコリと微笑む。その有無を言わせぬ空気にコクリと小さく頷くと、私の歩幅に合わせて歩き始めた兄と二人並んで歩みを進める。

 都市ニゲラの中心街はやはり流石とでも言うべきか、通勤通学で利用している人は勿論のこと、買い物や遊び目当ての人達で相変わらず賑わっている。こうして学校帰りに立ち寄ることも滅多にないせいか、ついつい忙しなく視線が彷徨ってしまう。それだけ、煌びやかで目を惹く建物が多いのだ。
 そんな私の様子に気付いたのか、兄は時折「目当てのものは見つかった?」と確認してくるものの、私は小さく横に首を振って応えるだけだった。もとより、目当ての買い物などないのだ。ただ一人でいる為の口実だったのだから。

 人の波にあふれかえる喧騒の中、一人立ち止まった私は前方を眺めた。これだけ沢山の人達が行き交っているというのに、まるで私のことなど誰も見えていないかのように通り過ぎてゆく。
 たまにぶつかってくる人達の勢いに押されては、右へ左へとふらふらとよろける。

「──エヴァ!」

 少し離れた前方で、慌てたような声を上げながらこちらに向かってくる兄の姿を目にした──次の瞬間。突如として上空に眩い閃光が走り、その眩しさに思わず目を瞑った私は、その光を遮るようにして右手をかざした。
 うっすらと開いた視界の先に見えたのは、上空一面を覆うほどの鮮烈な黄みがかった白い光。その場にいた誰もが足を止め、一瞬にして遠のく喧騒。

「綺麗……」

 思わず溢れ出たその言葉は、自分でも気付かないほどに無意識だった。時間にしてどれくらいだっただろうか──おそらく数秒の出来事だったのであろうそれは、突然の轟音とともに押し寄せた爆風によって、私の身体を勢いよく吹き飛ばした。
 打ち付けられた身体でゆっくりと上半身を起こすと、ズキリと痛みの走った左足へと視線を向けてみる。

 「……ゔ……、っ」

 その痛みに思わず小さな呻き声を上げると、私は瓦礫に挟まった左足を引き抜いた。一体、何が起きたのだろうか──。最後に目にしたのは、眩いほどの閃光だったことだけは覚えている。
 呆然とする頭のままゆっくりと辺りを見渡してみると、そこかしこに血を流して倒れている人々の姿、煤すすまみれで泣いている子供の姿が目に入る。つい先ほどまで華やかに活気づいていた街並みは跡形もなく崩れ落ち、所々で炎を上げながら瓦礫と化している。
 その地獄絵図のような惨状を前にしてもなお、私の壊れた心は何一つ変わりなかった。そんな自分自身にツキリと胸を痛めると、悲しみにそっと顔を歪めながら、擦り傷だらけの両手で地面を固く握りしめる。

(いっそ、このまま死ねたらよかったのに──)

 
 吹き付ける熱風にプラチナブロンドの髪を靡なびかせながら、私はただ、静かに目の前の光景を眺めた。

 ──シュメル歴六百七年、八月九日。

 この日、都市ニゲラは突如として現れた閃光によって一瞬にして崩壊した。

── 第1章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

作品ページへ戻る

コメント

まだコメントはありません。最初のひとことをどうぞ。

しおりを挟みました