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壁の向こうの少年

abejunichi

6,785 字

内面の成長を描く寓話的ファンタジー

"その扉は、君の内側からしか開かない。"

KID Aを改稿した児童文学版

目次(11 章・いまは第 10 章)
  1. 壁の向こうの少年
  2. 第1章 壁の町
  3. 第2章 髪の長い少年
  4. 第3章 壁の声
  5. 第4章 声が出ない夜
  6. 第5章 旅立ち
  7. 第6章 壁の外
  8. 第7章 夢の村
  9. 第8章 英雄はいない
  10. 第9章 声の正体
  11. 第10章 僕の言葉
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第9章 声の正体

僕は、世界のまんなかへ向かった。

何日も歩いた。砂の道をこえ、枯れた森をぬけ、誰もいない平原を横切った。

そこには、天までとどく高い塔があった。白い石でできた塔。まぶしすぎる光があった。近づくと、光は塔そのものから出ているのだとわかった。

でも——中は、からっぽだった。

光は、からっぽの中を反射しているだけだった。なかみのない光。

僕は、たくさんのドアを開けつづけた。どの部屋にも、鏡があった。鏡の中の自分が、僕を見返していた。

一つめの鏡では、僕は怯えた顔をしていた。
二つめの鏡では、泣いていた。
三つめでは、笑っていた。
四つめでは、何も表情のない顔をしていた。

最後のドアを開けたとき、僕はわかった。

「壁の声」は、どこにもいなかった。

この塔に、誰もいなかった。声の主なんて、初めからいなかった。

壁をつくったのも、声をつくったのも、「英雄を待て」と言ったのも——全部、人だった。怖がった人が、怖いままつくった世界だった。怖いから壁をつくり、壁をつくったからもっと怖くなり、怖いから声をつくり、声をつくったから動けなくなった。

そして——最後の鏡の中の自分の胸にも、壁があった。

外の壁をつくったのは、昔の人だ。

でも、中の壁をつくったのは、僕だ。

誰かに「やめろ」と言えなかった僕が、「どうせ無理だ」と思った僕が、自分の言葉を飲み込みつづけた僕が、石を一つずつ積み上げて、つくった壁だ。

外の壁は、人が壊せる。

じゃあ、中の壁は?

鏡の中の僕が、口を動かした。音は聞こえない。でも、口の形でわかった。

「歌え」

と、言っていた。

── 第10章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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