第三章
約束の三日後。白銀の議事堂。 桃太郎は静かに、アップデートした新システム計画書――『天国・地獄還流プロトコル』を掲げた。 「天国を『水槽』として捉えるのをやめてください。大粛清の対象となった魂を地獄へ捨てるのではなく、新設する『更生特区』へ異動させる。そこで罪と向き合い、地獄の痛みを知った魂は、今度は『天国のシステムを維持する側の、強固な精神を持った魂』として再生する。彼らを再び天国へ還流させるんです」 議事堂に激しい逆風が吹き荒れる。 「馬鹿な! 予算の出処はどこだ! 暴徒が溢れ出たらどう責任を取る!」 「予算は治安維持隊の上層管理費の圧縮で捻出します! 防衛の手薄さは三獣のデータをもとに警備補佐に回すことで相殺できる。すべてシミュレーション済みです!」桃太郎の声が喧騒を切り裂く。「責任を取るとは、机の上で安全に数字を間引くことじゃない。現場で最初に血を流す覚悟のことだ!」 さらに財政予測データを展開し、長期的なコスト削減の優位性を冷徹な数字で証明した。
沈黙ののち、採決。 経済財政を司るベテラン委員が、長期的なコスト削減データに折れて賛成に回る。そして最後に、委員長が重々しく挙手した。 「……条件付きならば、私もこの未来に賭けよう。委員長特権をもって、私は桃太郎の『還流プロトコル』を採用する」 敵を論破したのではない。一億を背負う責任者たちが、お互いの正義と理性を認め合った瞬間だった。
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