第八章
白い正義
由理恵は今日も遅かった。早く帰るつもりが引き止められ最終の
新幹線になってしまった。駅ではタクシーがなかなか捕まらなかった。
疲れた身体を引きずりやっとドアを開けた。
光希もう寝たのかな?
気にかけつつも頭の中は明日の人権シンポジウムで一杯だった。
やっぱり白が心地いい
朝 眠い眼をこすって台所に立つ
もう六時十五分 光希は起きてこない
光希 朝だよ 遅れるよ
返事はない
光希
ノックと同時にノブを回す。
いない。 誰もいない。
電話をする おかけになった番号は電源がはいってないのでかかりません。機械音声
軽くパニック 落ち着け 落ち着け
自分に言い聞かせる。
警察?いや学校 頭の中がまとまらない。
そうだ 取りあえず
昨日一緒だった弁護士に相談しよう まだ早いけど
呼び出し音十回目で出る「もしもし」
不機嫌そうな声
すみません由理恵です。昨日はお疲れ様でした。
それで娘が帰ってないのですがどうしたらいいでしょう。
「警察か学校に電話」不機嫌そうな声 ちょっと戸惑っているとスグきれた
先生にかけるのはなんとなく引っかかった。
警察 でもその前に芳恵にかけた。
朝早いことを詫び光希が昨日帰って来てないこと
何か知らないか、聞いてみた。
びっくりする芳恵「昨日は忘れ物をとって来ると言って別れた」
「どこに」
準備室 嫌な予感がした。お詫びを言って
すぐ警察に連絡
それからは
時間は流れるように過ぎていった
あの白の女王の娘が行方不明、連日マスコミは大騒ぎだった。
防犯カメラの映像がでたりその後部活の学生の証言等から
先生が怪しいとの噂がながれた。
直ぐにDNA鑑定また学校の庭から
ミイちゃんの亡骸が発見される。
しかし
光希は行方不明のまま
警察は担任を任意同行を求める
しかし これを拒否 そして海外逃亡
その間警察はDNAが一致したと発表
国際指名手配する。名前はなかった 名称不詳
由理恵は
葬儀がいつ終わったのか自分がそこにいたのかさえ 思い出せない
目に浮かぶのは京都の光景 白地の幕だけあの日の熱気 それだけ
机の上にあった、警察から返還された薄いノート。表紙に「ひみつ」と書いてある。小学生みたいな字で。でも中身は中学生の文字だった。
読むつもりはなかった。胸がいっぱいになる。でも読んでしまった。
ほとんどは他愛もない内容だった。友達のこと、好きなアイドルのこと、給食のメニューのこと。光希らしかった。
ふと見たぺージに、こんな一行があった。
「今日、影山くんを呼んだら、なぜか先生が返事した。ぼーっとしてたのかな。変だった」
由理恵は、そこで止まった。
もう一か所。
「先生が自由が丘の丸井で中学の時よく買い物したって言ってた。でも先生って何歳なんだろう。丸井って今も自由が丘にある?
由理恵は、ノートを閉じた。
光希。お前は、最後まで目が良かった。
翌朝、弁護士に電話した。先生を調べてほしいと言った。丸井、自由が丘、閉店時期も。
弁護士は黙っていた。何か分かったんですか、と聞いた。分からない。でも娘が気づいていた、と言った。
三日後、弁護士から連絡が来た。声が、いつもと違った。
朝倉さん、と言った。担任の謎が解けるかもしれません。
由理恵は、椅子に座ったまま動けなかった。
光希。お前が教えてくれた。死んでも、まだ教えてくれている。
由理恵は、受話器を握りしめた。
怒りが来た。今まで感じたことのない種類の怒りが。
娘を殺した男は、そもそも存在しない人間だった。
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