第四章
改革が進み、更生特区ではかつて地獄へ送られた若者が「還流の案内人」として新たな魂を救う姿があった。桃太郎のシステムは確かに世界を救い始めていた。 しかし、補佐官となった老治安官から手渡されたデータが、桃太郎の息を止めた。どれだけ時間が経っても、精神の「曇り」が晴れず、還流基準に届かない魂が、たった二つだけ存在していた。桃太郎は何度もデータを確認した。計算ミスではない。システムの不具合でもない。更生プログラムも、心理ケアも、すべて正常に機能している。それでも――二つの魂だけは、どうしても救済判定に届かなかった。
【不適格者:おじいさん / おばあさん】
深夜、更生特区の最奥。 「父さん……母さん……!」 鉄格子の向こうで、おじいさんは情けなそうに顔を背けた。「来るな、桃太郎。オレたちみたいな『不純物』に、構うな」 「僕はこのシステムを作ったんだ。二人の更生データを書き換えて、今すぐ天国へ戻すことだって――」 最高権力者の、システムの頂点に立ったからこその言葉に、おばあさんは自分の胸元を押さえた。 「ダメだよ、桃太郎。私たちは憐仁郎をシステムで地獄へ放り込んだ。あのときの叫びが耳から離れないんだよ。私たちが犯した罪の深さは、お前が作ったどんな立派なプログラムでも消せない。自分を許せない魂は、天国の綺麗な空気を吸うほど、胸が苦しくなるんだ。……私たちは、ここにいるのが一番楽なんだよ」 桃太郎は愕然と立ち尽くした。 桃太郎は、初めて自分の作った「正しさ」を信じられなくなった。「嘘だ……そんなの、おかしいよ……! 二人を救うために、毎日泥をすすって、このシステムを作ったんだよ!! なのに、二人が戻ってこられないなら、僕のやってきたことは一体何だったんだ!!」 鉄格子を叩き、泣き叫ぶ息子に、おじいさんは節くれ立った手を伸ばし、涙をそっと拭った。 「桃太郎。お前のおかげで何万もの魂が救われた。お前はオレたちの最高の誇りだ。だから、もういいんだ。オレたちのことは諦めて、お前は上へ戻れ」 「諦められるわけないだろ!!」
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