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literalconnotation ─ なみだの魔法円から現れたのはあたしでした。

連載中(書きかけ)

有城 砂卯

49,005 字

異世界ファンタジー、心理ドラマ

"浮気夫への絶望が、私を異世界へと誘った。これは、もう一人の私を巡る、涙と魔法の物語。"

目次(12 章・いまは第 11 章)
  1. ・0/prólogo≠sorto:始まりは宿運ではない
  2. ・1/sorto≠fatale:宿運は呪縛ではない
  3. ・2/fatale≠lot:呪縛は運否天賦ではない
  4. ・3/lot≠fatum:運否天賦は不可避ではない
  5. ・4=EX/Detour≒Invisible rays
  6. ・5/fatum≠destino:不可避は目的地ではない
  7. ・6/destino≠Fügung:目的地は因果ではない
  8. ・7/Fügung≠qadar:因果は量れない
  9. primus=1:interior ∉ façade─内側にある建前
  10. secundus=2:exterior ∈ truth─外側にある本音
  11. EX≒tertius=3:vertical ⊥ coordinate─垂れる座標
  12. quartus=4:weight ∝ center─重い真ん中
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EX≒tertius=3:vertical ⊥ coordinate─垂れる座標

●1・赤い狼の終末の想い/フォルテイオの把持

 はあぁ……
 
 もう何度、溜め息を吐いたことだろう。
 領主の長男として生まれ、家を継ぐことに躊躇いはない。
 寄り添うべき伴侶がないのは、妹たちを見ていると寂しくもなるけれども、フォルテイオに歳の近い未婚の娘がいないのだから、仕方ない。
 
 だからこそ、思い出すのも憚れる、あの最悪な一週間で、唯一今も掌に残る、感触。
 初めて触れる、母とも妹とも違う触感。

 滑らかで、
 暖かく、
 柔らかで……

 チャルマが五歳になるのだから、もう六年は前の事だ。
 村で昔に作られた、ヴェントクリングィーロ風鈴を持って、ビエスたちは現れた。
 町では、魔除けの鈴と呼ばれているらしい。
 凝らして聴かねば気付かない濁りを、直して欲しいと言われたら、この村の職人ならば色めき立ってしまう。

 新作を作るのは楽しい。
 けれども、直してまで使われるのは、もっと嬉しい。
 それだけだった、はずだった。

 初心を奪われたから、なんだろうか?
 けれど、君に傍にいて欲しいんだ。

 六年ぶりに会った君は、相変わらず無口で。

 ルーモ。
 君が笑うと、どんな風なんだろう、って思うんだ。

────
 
●2・頭状花序の花弁の容/フィリーノの塩梅

 ひいっ!

 チャルマが生まれてから、見ることはなかった夢。
 ……夢ではないのだけど。

 六年前、女神みたいな顔をして現れたビエス。
 ヴェントクリングィーロと、兎とを持って。
 いつものように家に招き入れて、あんなことになるなんて思ってもみなかったけど、けど、あれかしら?あれはあれでよかったのかしら?
 
 ……いや、よくはない。
 断じてよくない。

 それからチャルマが生まれて、毎日が慌ただしくて、すっかり忘れてたのに、来た。
 来るのはわかっていた。
 けど、チャルマはまだ五歳。
 まだ、十年は早い。

 …………なんか、違うのよね。
 知ったからなのかしら?
 おしゃべりなのも、ワケわかんないこと言うのも、こっちの言うことを聞いてるようで煙に撒くのも、あの時のままだけれど。
 子の親と、思うからなのかしら?
 優しくなった……って、なかったっ!

 ビエスは兎を食べに来ただけなのよ。
 ええ、もう下拵えは済んでるから、すぐにでも食べられますよ。

 でもね!チャルマが見つからないと、食べさせてあげないからねっ!

────

●3・見るは高い家の顔/徒疎かなヴィザーゴ

 ふふっ。

 いいねぇ。
 この村のヴェントクリングィーロの音色は、ほんとにいいねぇ。
 
 尤も、手中のヴェントクリングィーロは、カヴァリーロの作で、彼の高祖父殿の作品と比較すれば未熟さはあるけど、若さゆえの味がある。

 それにしても、鈴の一つ一つにフィリーノの容を象った意匠を施すとは……ふっ、馬に蹴られるんだっけ?全くアキラの頭の中は蟋蟀が跳ね回っている。

 ――――赤黒い、舌が蠢く。
 義で己の欲を纏い、醜怪な緑蝋を掲げ、僕に口付ける。
 銀盆のヨカナーンの首が過るのは、アキラに毒されたかしら?

 ふふっ。

 そうだね。
 チャルマは頃合いにはまだ遠いけれど、いいよ、助けてあげる。
 キニガノゾムナラ、ね。

────

●4・バロックのせいのこうき/カヴァリーロの夜香

 へぇ……。

 全く、子供と言うのは驚かされる。
 自分でも、確かに通ってきたはずなのに、チャルマは次から次へと、なにかを拾ってくる。

「これは月蛾の幼虫だね。これから雪の間、葉っぱの中で、おうちを作ってお休みするんだ」
「ゆきのあいだ?ずっーと?ながいよ?もうチャルマとあそんでくんないの?」
「今までも遊んでくれてたわけではないと思うけどね。……そうだよ。春になったら、大きく羽を広げて飛ぶんだよ」
 
「はね!てふさん?!」
「てふさんとはちょっと違うけど、お友だちかな?」
「てふさんのお友だち!」
 この幼虫は、いったいどこまで大きくなるのだろう。
 
 六年前のあの日。
 まだ、フィリーノとは正式に契ったわけではなかったのに、無理矢理ビエスに繋げられ、浅ましくも反応する己れに嫌気が差した。

「……ヴィザーゴとビエスって、同じなのかしら?」
 いつの間にか、庭に出てきたフィリーノ。
「でも、あの子のピアス、あの時のあれじゃない?」
「うっ……それっぽい。……ったく、あのやろう」
 
「ビエスに言っても通じないわよ。それよりチャルマを落とさないかの方が心配だわ。……それにそれ。臭いわよ」
 
 手の中には、羽化した繭、に付着した羽化液。
 
「紡げば、あんなに綺麗なのにねえ」
「でも、形にしてくれるだろう?チャルマとあの子に、お揃いのなにかをつくってあげよう」
「それはいいわね。なにがいいかしらね。でもその前にちゃんと洗わなきゃだわ」
「それは俺がやるよ」
 
「ありがとう」
「どういたしまして」

────

●5・蝸牛の膜の震わす螺旋/チャルマは無邪気

 ほおお!

 でっかいおやま!!
 まほうのじゅもん!!
 とりさん、ばさぁ!って!
 すっごくたのしかったの!
 
 でもね。
 ほんとは、てふさんみられなくてなきそうだったの。
 なみだがでてきそうで。
 でも、ないちゃいけないっておもって。
 そしたら、あきらがおそらにつれてってくれたの!すっごくうれしかった!
 
 だからね。
 おれいにね。
 
 かかは、りょうほうのおみみにみみかざりをしてるけど、あきらはいっこしかしてないでしょう?
 
 だからね。
 ひろってきてあげたいの。
 
 チャルマしってるんだよ。
 みずうみにあきらのみみかざりとおんなじやつが、ときどきおちてるの!

 あっ!
     
 
 

 
 
 
 

── 第11章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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