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重工のメカロニカ

連載中(書きかけ)

赤間世穹

69,848 字

ハードSF・異種族コンタクト

"元素の鼓動と科学の業が交差する、美しくも残酷な鉱石の星のクロニクル。"

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第10番:幼体の行方

 銀から話を聞いた白金は直ぐに金を会議室へ呼んだ。金は依然として落ち着いていて、白金が会議室へ呼ぶことすら想定していたかのように白金が会議室へ移ると既に座って待っていた。
 「集礼の後、広間にいた私にセリウムは導師に対するひとつの見解を話した。とても合理的なものだった。そして海生脊椎動物がまた増えたと直後に話した。その後カルシウムから連絡があり、水銀を向かわせるとどうやら海生脊椎動物の遺伝子だと言う。するとセリウムが通信に割って入って来てね。そしてセリウムはその海生脊椎動物をどこかへ連れて行き、そして情報を得た」
 白金が入り口で呆然と立ち尽くしていると、「座らないのか?」と金は何事でも無いように促した。
 「いや……知っていたのか?」
 どこまで、と言いかけると金は否定した。
 「セリウムが介入したことからある程度の予想はつく。ここへ呼ばれるのも可能性のひとつとしてあったにすぎない。私は別に予知している訳では無いよ、全ての可能性を予測しているに過ぎない。 ──信じて動く。それこそが指導者の務めだ。“科学に絶対はない”、そうでしょう?」
 やはり金には叶わない。白金は苦笑し、対面する形で椅子に座った。
 「問題なのは、外部の存在。我々をどうしたいのか目的が不明だな」
 考える仕草をし出す金に、白金は言う。
 「あらゆる可能性を洗い出す。それが科学者だ……でしょ?」
 ランタンやセリウムの言うような言葉を借りて言うと、金は頷いた。
 「そうだな、そうだ。そもそも奴らは我々が近づかなければ温和な生命体のように見受けられる。だが先程14,400秒前、海生脊椎動物の遺伝子が現れた。好奇心旺盛な個体なのか、ナトリウムのような個体だったのか」
 「その辺は推測するしかないけど、だとしても幼い個体にとっては距離があると思うけどね、向こうからここまでは」
 「まああれらにとって、100km程度造作もないとは思うがね。ナトリウムだって止めなければどこまでも行くだろう」
 白金は納得した。確かに普段は危険だからと直ぐにナトリウムを止めに行くが、彼はかなり好奇心旺盛で、止めに入らなければ星を一周してしまうんじゃないかとさえ思う。幼体にはそれだけの力があるのだろう。
 「他の幼体は……もしかして、拠点以外にも」
 「可能性としては充分にある。だが、そもそも奴らの攻撃手段は尾を振り回したり、食べた岩石を吐き出して飛ばしてくるくらいだ。幼体ならばそれほど危険はないだろうが、当番チームには知らせておこう…………ああ、その心配は要らないか」
 金は肘をつくとにやりと笑った。
 そう、白金は通信機器から全元素にこの会議を発信していた。白金はほくそ笑み、目を伏せると一拍置いて金に尋ねた。
 「他に共有事項は?」
 「そうだな、セリウムが見つけたもの……それをどうにか調べるしかないわけだが、導師の力を借りることは出来るだろうか」
 「彼は科学の知識はあれど、それ以外となれば」
 「ああ。まあ、確認方法の一つだな。導師よ、応答せよ」
 機器に向かって金は告げると、少しの間の後、導師は応えた。
 〈……はい〉
 「補給チームはノルマはもう完遂しただろう? 一度こちらへ戻る時、導師は私の元へ来い」
 〈了解〉と短く返答すると金は「よし」と立ち上がった。
 「諸君、手掛かりを調べ尽くすぞ。一度広間へ集合せよ」
 機器に向かって少し強めに言い放ち、通信を切った。

 補給はある程度ノルマを完遂しただろうという金の予測は見事だと思った。他のチームと共に一度拠点へ戻り、荷物を所定の場所まで導師と鉄だけは向かおうとしたが、鉛やベリリウム、他のチームは「一度集合って言われたから」とそのまま広間へ直行したので導師と鉄もそれに続くことにした。
 それが正解だったのかは定かではないが、少なくとも長年暮らしている彼らに合わせておけば間違いも早々無いだろうと導師は考えた。広間へ着くと各々の部隊に分かれて列を成した。軍隊よりは緩さはあれど、さすがの教育の賜物だろう。
 「導師はこちらへ」
 金は淡白にそう促す。言われた通り集礼の時同様に金の隣へ立った。
 「銀、セリウムは戻っているか?」
 遷移金属トランジ部隊とランタノイドを交互に見た金は少し強めに言い放った。ほぼ同時に「いますよー」「いるよー」とふわっとした返事が返ってきた。金は短く息を整えると、全体を見回した。
 「まずは、セリウム。勝手な行動をしたね」
 特に問題では無いが、と言う雰囲気の元、少し呆れ気味な声色でセリウムの方を向いて言った。
 「いやー、はは。つい……」
 「まあ、ちゃんと返したんだろうね?」
 「返したよー当たり前──」
 直後、セリウムの頭上にトカゲの様な頭と躰、サンショウウオの様な手足が生えた見慣れない生物がちょこんと現れた。正確にはそれなりに重そうな図体だが、そういうに相応しい愛くるしい瞳で周囲を見回している。これが例の海生脊椎動物だろう。確かに調べたくなるセリウムの気持ちは分かる、と内心賛同の意を込めて何度も頷いた。
 「それは?」
 少し語気を強めた金にセリウムの肩は跳ねたが、頭上の重さを感じてか、内心「やばい」と思ったのか途端に焦りだした。
 「いや! あのっ、僕はちゃんと上から返したんだ! 返したはずなんだ、元凶は僕かもしれないがでもちゃんとっ」
 あまりにも焦るセリウムの様子を見て金は深く溜息を吐いた。
 「……分かった。それの処分については」
 処分と聞いて幼体の海生脊椎動物は思い切りびっくりして跳ねた。食べられるとでも思ったのだろうか、しかしセリウムから一向に離れようとしないところを見るとセリウムはどうやら懐かれてしまったらしい。本人にとっては研究対象だからか願ってもないことだろうが。その様子を見た金は少し考える素振りをした。
 「ふむ。折角だ、この場で聞こうか。それの処分はどうしようか?」
 幼体の海生脊椎動物を戻すか、それともこのまま研究対象としてここに置いておくか、選択肢はそんなところだろう。アルカリたちや鉄、ベリリウムやマグネシウムはかなり興味津々なようで置いておこうよ、などと口々に話している。対してカルシウムや鉛などはやはり硬派だ。置いておくべきではない、一匹に対する対処は容易だが、他の大人の海生脊椎動物が襲いに来た場合を考えると戻すべきだ、そんな意見が飛び交っている。地球にいた頃が懐かしい、ひとつの研究対象に対して多くの意見が飛び交うのはどこでも同じなのだろう。十人十色とはよく言ったものだがこの場合はほとんど二手に分かれている。
 白金は苦笑しつつ、おやおやと止める気はないようだ。そしてまた白金の手のひらには水銀が一滴あった。
 金は全ての主張を聞いているようにも見えるが、半ば呆れているのか、彼らのまとまりが無くなった論争ディベートを聞きながら鼻頭を抑えていた。
 「…………分かった。大体五分五分と言ったところか、デメリットを考えるとここに置いておくのは短期間、否……短時間、数時間ほどだろうか。彼らの生態を明確にしない限り、長く置いておくことはできない。ランタノイド諸君、頼んだ」
 皆を黙らせるとそうはっきりと宣言した。セリウムだけ(頭上の海生脊椎動物も連動しているように見える)が酷く喜んでいた。
 「それと、これからは警戒を強める。故に今までの当番制を一時的に変更することにしよう。補給班とランタノイド補佐班はそれぞれ、遷移金属トランジ戦闘部隊と半金属デミ特殊工作部隊を分散させて編成する。なお、アルカリ土類金属テラ後方支援部隊は引き続きエリアDの防壁の死守を継続、ポスト遷移金属プア技術支援部隊と非金属セクンディニカはそれぞれ当番二班のフォローへまわってくれ。詳細は追って連絡する」
 「はい!」と力強い返事を聞くと、解散の音頭がとられた。
 非金属セクンディニカ、まだ面と向かって会っていない元素の一つだ。これからどうなるのだろうと期待と不安と心配を胸に下げていると、ふと、見慣れぬ元素体エレメンタムと目が合った。ナトリウムのような幼さを持つ表情をしていたかと思えば小首を傾げてにこりと微笑んできた。

── 第11章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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