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嵐過心月

20,765 字

正義を問う、慟哭のヒューマンドラマ

"そのスイッチは、正義か、復讐か、それとも愛か。"

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第九章

記号解読

警察が動いた。検察も。指紋の照合。DNA。戸籍の確認。
そして居場所確認から逮捕、起訴、裁判へ
一週間後、法廷に緊張が走った。
検察官が立った。被告人の本名は、影山浩二。十八年前、別の県で傷害致死事件を起こし、少年法により保護処分を受けた。出所後、他人の戸籍を入手し、教員免許を取得した。
 法廷が、静まり返った。
由理恵は、被告席を見た。うつむいていた。神妙な顔のまま。変わらなかった。
 この男は、ずっとこの顔だった。
光希は、その顔の裏を見ていた。小さなクセから、見抜いていた。
由理恵の手が、膝の上で震えた。怒りではなかった。悔しさだった。

 娘の方が、私より賢かった。
世論は圧倒的に死刑を望んだ。

事件から十年の年月が立った。髪に白いものが混じってきた。その十年の間に、社会が動いた。冤罪問題、少年法の歪み、死刑廃止論。新制度の議論が始まった。由理恵は人権活動家として、その議論の中心にいた。寂しさを紛らわすため働き続けた。多い時は十カ所以上回った。一日に何回人権と言ったろう。弁護士と共に日本何周したか。新しい団体設立の為にどこへでも飛んでいった。昼間は忘れていた 。いや 忘れようと努力した。 しかし夜になると、あの顔が浮かんだ。
「笑っていなかった。あの目だけは、ずっと同じだった」

── 第11章 了 ──

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