繭
その場所は湿っていて、光が届かない場所にあるためかなり暗い。足元は雑草が生い茂っており、地上のジャングルならば様々な虫が生息していたことだろうと思った。
木々に囲まれた獣道をひたすら歩いていく。時折、さっ、と何かが顔の横を通り過ぎていく。かと思えば、頬が火傷をしたときのような痛みが出て、思わず顔を顰めた。指でそっと患部を拭うと血が出ていることがわかった。ああ、何かで切れたのか。毒があると今後悪化するかもしれないと思い、迅速に処置をして再び森を歩き始めた。
もう三日目、食糧は少し残っているがカビていないことを祈るばかりだ。水は慎重に飲んでいるため比較的残ってはいるものの、微かに心配が残る。周囲に飲み水として機能するような湧き水も川もない。あるのは木から滴り落ちる水分によって形成された水たまりくらいだ。さらにその水溜りに触れることも近づくこともできない。何故ならその部分一帯の草が枯れているからだ。
歩き始めてどれだけ経ったことだろう。そろそろ休憩にしようか、などと考えていると少し先の方にひらけた空間があるのがわかった。少し早歩きにその場所へ向かってみる。
そこには大きな、それは大きな真っ白な繭があった。蚕が作るようなそれはうつくしい色だった。白いせいか発光して見えるほどだ。周辺の木を四本、五本ほど利用して広がって形成された繭を見ると、あまりの大きさに何がその中にあるのだろうと慄くも、好奇心が疼いてしまった。
かちゃり、とナイフを手に取った。簡易ナイフで切れるとは思えないが、手元にはこれしかない。
仲間は皆死んだ。自分は生き残って、英雄になるんだ。そうして金と権力と名声を手にして、女優と結婚するんだ。
地球に戻ったら……そんなことを考えていた矢先のこと、瞬く間に視界が消えた。ぐちゃり、ぐちゃり、ぼきっ、ばきっ、と音だけがその場で響いていた。
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