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嵐過心月

20,765 字

正義を問う、慟哭のヒューマンドラマ

"そのスイッチは、正義か、復讐か、それとも愛か。"

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第十一章

混沌の前に

冬の寒い日、由理恵は利勝とあった。
かつての親友冬美の元夫で現役刑務官。現在、冬美が忌み嫌う人種
冬美も以前は活動に力がはいっていたがやはりお嬢様の気まぐれかいつのまにか
こなくなった。
利勝は、静かに言った。利勝が、隠し撮りの音声を再生した。
 「友達に、『人権は僕らの味方』と言う歌を歌っている。」聴くに堪えない。
由理恵は、動かなかった。
利勝は続ける。人の心は落差があるほど衝撃が大きい。単なる仮想処刑ではなく、幸せな人生の絶頂で執行する方がきつい。担当者には話をつけています。今日ダイアルロックネジを緩めておきました。幸福度はいくらでも上げられます。残虐度はいじると分かりますが幸福度は大丈夫です。
由理恵は、窓の外を見た。黄色い蝶は、いなかった。言葉は時間がかかるの。暴力のように、一瞬で結果が出るものじゃない」
「その『時間』の間に、光希さんは首を絞められ、爪を剥がした。……あんたの言葉が、娘さんの喉を塞いだんだ」
​ 沈黙が、重い鉛のように二人の間に降り積もる。
 由理恵は、脳裏にこびりついて離れない影山の声を思い出した。
 守ってよ、人権ばあさん。その瞬間、彼女の中で何かが決定した

 それはさすがに、と言おうとした。言葉が、出なかった。
利勝が帰った後、由理恵は長い間、椅子に座っていた。
光希の部屋に入った。
かつて、私を嫌悪する週刊誌の記者が、裏で私のことをこう呼んでいると聞いたことがある。
「人権と寝た女」
​下卑た揶揄だ。だが、あながち間違いでもなかった。私は、正義という言葉の清潔な純白のシーツにくるまり、高潔な理想と情を交わすことに、ある種の官能を覚えていたのだ。
​だが、その「恋人」は、娘が殺された瞬間に、私を嘲笑う怪物へと変貌した。私が守ろうとした「権利」が、光希を殺した男の盾になり、私の喉元に突きつけられている。

── 第13章 了 ──

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