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壁の向こうの少年

abejunichi

6,785 字

内面の成長を描く寓話的ファンタジー

"その扉は、君の内側からしか開かない。"

KID Aを改稿した児童文学版

目次(11 章・いまは第 2 章)
  1. 壁の向こうの少年
  2. 第1章 壁の町
  3. 第2章 髪の長い少年
  4. 第3章 壁の声
  5. 第4章 声が出ない夜
  6. 第5章 旅立ち
  7. 第6章 壁の外
  8. 第7章 夢の村
  9. 第8章 英雄はいない
  10. 第9章 声の正体
  11. 第10章 僕の言葉
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第1章 壁の町

僕は、高い壁に囲まれた町で生まれた。

大きな石の壁が、町をぐるりとかこんでいる。石の隙間から、冷たい風がふきこむことがある。そのたびに、大人たちは窓をしめる。「外の風は、よくないものをはこんでくる」と言いながら。

誰も外には出られない。大人たちは言う。「外はあぶない。中にいれば安心だ」って。

でも夜になると、僕は窓から空を見て思う。壁のむこうには、何があるんだろう? 星は、壁の内側も外側も関係なく、同じように光っている。壁なんて知らないみたいに。

学校の先生は言う。「外のことは、考えなくていい」

僕は、その意味がわからない。考えなくていい、って、誰が決めたんだろう。先生だろうか。先生の先生だろうか。それとも、もっとずっと昔の誰かだろうか。

僕の胸の中にも、壁がある。

誰かに何かを言おうとすると、言葉がそこで止まる。出てこない。言いたいことがあるのに、口が動かない。授業中、手をあげたいのに、あげられない。友達に「いやだ」と言いたいのに、笑ってうなずいてしまう。

外の壁と、中の壁。

どっちが先にあったんだろう。

ある夜、僕は壁の上に、人かげを見つけた。月の光を後ろから浴びて、その影は少しだけ光っているように見えた。

── 第2章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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