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Momoー罪と贖罪の桃太郎譚ー

ryo.m

18,028 字

ダークファンタジー、ブラックコメディ、寓話

"暴力の因果を断ち切り、システムを超越する、魂の贖罪と家族の物語。"

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第一章

昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは毎日山へ若者をしばきに、おばあさんは川へしばかれた若者を流しに行っていました。しかしある日、当然の因果応報として複数のパトカーが二人を取り囲みました。「動くな! 暴行および死体遺棄未遂の容疑で逮捕する!」警察官の叫びも虚しく、二人はあっけなく連行されてしまいました。
ですが、監獄に入れられた直後のことです。おじいさんは退屈そうに首を鳴らしました。「おい婆さん、ここの看守、ちょっと面構えが生意気じゃねえか?」「そうねぇ爺さん。一発しばいておきましょうか」二人は看守を容赦なくしばき倒すと、頑丈な鉄格子をへし折り、瞬く間に脱獄に成功しました。
二人で夜道を逃亡している最中、揃って何かにつまずきました。「痛てぇな、なんだ……? 桃?」「あら、私の足元にもあるわ。拾っていきましょう」二人はその桃を懐に放り込むと、これまでの逃走資金をはたいて新しい家を買い、何食わぬ顔で新居へと向かいました。
家に着き、拾った桃をそれぞれ美味しくいただくと、突如、異変が起きました。おじいさんとおばあさんの腹が膨れ上がり、なんと、それぞれの体から元気な赤ん坊が産まれたのです。ここで、家庭内に深刻な亀裂が生じました。
「おい、身に覚えがねえのに何でガキが生まれてんだ! 婆さん、お前まさか不倫したんじゃねえだろうな!?」「何言ってるのよ、このクソジジイ! こっちこそ、あんたが実は女だったんじゃないかって猛烈に疑ってるわよ! 自分の体から産んどいて何が不倫よ!」「うるせえ! 遺伝子検査だ!」「上等よ、顔も見たくないわ!」
二人の仲は最悪になり、即座に別居が決定しました。夫婦は決裂しましたが、一旦若者をしばくのは休戦し、おじいさんの子供は山太郎と名付け、おばあさんの子は川太郎と名付け、それぞれで手厚く育てました。
――十年後。子供たちも10歳という節目を迎えました。そんな中、十年前のあの日、山でしばかれながらも奇跡的に生き残り、執念深く二人を探し続けていた若者が、ついに居場所を特定しました。「見つけたぞ……あの時のクソジジイとクソババア……。オレの十年間を返せ!」若者は血の復讐を実行に移しました。
まずはおじいさんが狙われました。「おい、後ろに隠れてろ」おじいさんは我が子を背に庇いながら戦いましたが、十年のブランクは大きく、なかなか決着がつきません。じわじわと体力を削られていきました。「チッ、衰えたな……。だがな、オレは逃げるのもプロなんだよ!」おじいさんはまだ余力があるうちに、夜陰に乗じて鮮やかに逃げ延びました。
次に若者はおばあさんの新居を襲撃しました。「次はお前だ、ババア!」しかし、おばあさんは自ら暴力を振るうタイプではありません。「あら、いらっしゃい。でも、ここでお相手するほど野蛮じゃないの」おばあさんはこの十年間で、新居を完全なる「忍者屋敷」へと極秘裏に改造していました。攻撃能力こそ皆無ですが、逃走経路だけは完璧です。床がどんでん返しになり、おばあさんは即座に戦線を離脱しました。
この死闘を、物陰から監視している男がいました。十年前、二人を現行犯逮捕したあの警察官です。「あの化け物どもと正面からやり合う度胸なんてあるわけねえだろ……。だったら、ガキを狙うまでだ」警察官は疲弊したおじいさんの隙を突いて子供を誘拐し、続けておばあさんの子供も連れ去りました。
我が子を奪われた元夫婦は、十年の時を経て再び相見えました。「爺さん……やっぱり、私たちは二人で一つだったのよ。共にいなければ、何も守れない」「ああ、婆さん。過去のことは水に流そう。国家権力から、オレたちの宝を奪還するぞ」二人はがっちりと握手を交わし、警察署への殴り込みを決意しました。
おじいさんとおばあさんは正面突破を敢行します。子供たちは取調室に幽閉されていました。「そこをどきな!」おじいさんは立ち塞がる警官隊のみぞおちに強烈な一発を叩き込み、すべてワンパンで沈めていきます。「ほら、次々いくわよ!」おばあさんは、おじいさんがKOした肉体を次々と背後へ投げ飛ばし、退路を確保していきました。
そして最奥の取調室に到着し、重い扉を開け放ちました。そこには、目を見開くほど驚愕の光景が広がっていました。部屋の中では警察官たちがすでに全滅しており、その血の海の真ん中に、なぜか犬、猿、雉が佇んでいたのです。
「おじいさん!」「おばあさん!」子供たちが駆け寄ってきます。実は、取調室で生き別れの兄弟が揃ったことで、子供たちの内に秘められた「二人で一つ」の本物の血脈が覚醒。三匹の凶暴な獣を召喚し、単体で警察を根絶やしにしていたのでした。
「そうか……お前たちは、あの桃の神秘の力で生まれたんだな」おじいさんはすべてを察し、子供たちを抱きしめました。「よし、仕上げだ。署長室へ行くぞ」二人は署長室に籠城する署長を完璧にしばき倒し、警察署の完全制圧に成功しました。「一度、愛の巣へ帰ろうか」おじいさんとおばあさん、そして二人の子供は、意気揚々と外へ踏み出しました。
その瞬間でした。――グサッ、グサッ、グサッ、グサッ。「がはっ……!?」入り口の死角に潜伏していたあの若者が、姿を現した四人の心臓を、すかさずナイフで正確に突き刺したのです。「ハハハ! やった、やったぞ……!」歓喜する若者でしたが、直後、怒り狂った動物三匹が若者の頭部を容赦なく圧壊し、その息の根を止めました。
しかし時すでに遅く、しばらくして四人は静かに絶命しました。主を失った犬・猿・雉は、それぞれの闇へと散っていきました。これまで余りにも多くの罪を重ねすぎたおじいさんとおばあさんは容赦なく地獄へ、純真無垢な子供たちは天国へと引き裂かれて送られたため、二度と四人が現世で集まることはありませんでした。

── 第2章 了 ──

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