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四感の檻

Makoto Yaoi

6,618 字

心理サスペンス・官能小説

"日常に潜む狂気、五感で綴る偏愛の心理サスペンス"

電車の中で、ある青年を見かけたことで男の妄想が始まります。車内という四角い空間の中で、男が自身の狂気じみた妄想に少しずつ囚われていくという物語です。

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第一章 目

男は彼を見た。

男の視線は粘つくように彼に絡みつき、彼の体に痕をつけた。

……腰……手……首……口、
それぞれで男は安息を得たように視線を止めた。

視線がゆっくりと頬を撫で、彼の瞳をとらえた時、男は自分の中で何かが疼くのを感じた。

「ああ、彼も私を見ているに違いない。」

男は火照った顔で彼を見返した。

彼しか映していない男の目とは裏腹に、彼の瞳は何も映してはいなかった。

男の視線は彼の肌を舐めるように滑る。
男はまるで自分の舌がそこにあるかのような錯覚を覚えた。
視線が首筋に触れた瞬間、男の口内に、汗の名残のような微かな塩味が広がった。

男はごくりと生唾を飲み込み、鞄を持つ手に力が入った。

視線はさらに肩、腕、そして長い指先、さらには白いワイシャツのその中へと注ぎ込まれた。
見えないはずの胸板を想像しながら、男は、肺の奥まで息を満たそうとした。

決して見ることのない、彼の肌の奥を想像しながら、男は手のひらににじむ汗に気づいた。

滑らかな彼の肌に、男の視線の痕がゆっくりと弧を描く。
男は自分の指先が彼の体に触れていると錯覚するように、親指を鞄の柄に這わせた。

居住まいを正し、深く息を吸い、ゆっくりと息を吐く。
それに合わせて親指が鞄の柄をゆっくりと撫でていく。
わき腹から腰へと視線が沈んだ。

――男の指が柄の上で凍りついた。

鞄の柄を握る手に再び力が入る。
男の喉奥から、風に紛れるような声がこぼれ、静かに目を閉じた。

呼吸が早くなる。

呼吸が乱れはじめ、下腹部にじんわりと熱がにじみ、熱を帯びた疼きが男を支配した。

彼は歯を食いしばり、さらに鞄の柄を握りしめる……。

静かに目を開けると、まだ幼さの名残を滲ませた無防備な表情の彼が、空模様をうかがうように窓の外を見ていた。

静かに牙を剥く、己への恐怖に、すうっと氷の刃のような感覚が背骨に走った。

自分の内奥に潜んでいた狂気と対峙し、男は深淵のふちに引き寄せられた……。

── 第2章 了 ──

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