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夜の小話

Makoto Yaoi

2,261 字

現代ミステリ、不穏な日常譚

"日常の隙間に潜む、夜の帳が暴く人間の深淵。"

ちょっと怖い掌編小説を3つセットにしました。

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第二章 『残響』

このまままっすぐ進みなさい。
振り返らないで。

絶対に振り返っちゃだめだよ。
さもないと-----。

警報音のように耳を劈く蝉の声が
燈子の聴覚を占領する。

真っ白な日差しに視界を奪われる。

目を開けると見慣れた木目がうっすらと見えた。

暗がりの中だんだんとはっきりする、
その天井の木目をなぞるかのように右手をあげた。

腕が頬に触れた。
じっとりとした感触に燈子は眉をひそめた。

起き上がり、背中に手をやる。 
体中が汗だくになっていた。

深く深呼吸をし、ベッドから降りた。

まだ眠気の残るおぼつかない足取りで
静かに階段を降りる。

台所に降りていくと、
窓から夜明け前の青黒く霞んだ空が見えた。

チッチッチと、掛け時計の秒針が
時を刻む音だけが聞こえる。

流し灯の紐を引く。
カチカチッという小さな音とともに
電気がついた。

ガラスコップに水を汲み
少しずつ飲む。

喉の奥のへばりついた壁同士が
少しづつ剥がれていく。

徐々に白んでいく空を見つめた。

窓に人影が映る。

燈子の瞳に影が差したとき、
燈子は小さく息を吸った。

遠くで、あの声がした。 

「振り返っちゃだめだよ。さもないと…」

意識するよりも早く、
燈子の頭は後ろを向いていた。

閉まりきっていない蛇口から、
ぽたぽたと水滴が落ちていく。

チッチッチと乾いた秒針の音が部屋に響いた。

── 第2章 了 ──

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