第二章 由実の場合『影がひとつになるとき』
二人の笑い声が止んだ。
静寂が満ちていく。
無音が響き渡る空間に、
椅子を引く音が投げ込まれた。
恵一は静かに立ち上がると、
由実の目の前で止まった。
机に落とされた二つの影が一つになったとき、
恵一は唇をそっと由実のそれと重ねた。
由実の温かな鼻息が
恵一にかかった。
重ねられた唇がそっと離れ、
互いの接点が最小限になった時、
恵一は首を前に傾け、
そのまま右手を由実の後頭部に添えた。
温かな日差しの香りが二人を包み込む。
重ねられた唇は、
お互いの稜線を平らにししていく。
再び静寂が広がる。
机に置いた指が微かに動き、
互いに触れ合った時、
由実はビクリと肩を上下させた。
恵一はうっすらと目を開き由実の動きを捉えた。
しっとりと濡れた唇は上唇からはがされ、
下唇の最後の部分まではがされたとき、
二人の湿り気のある吐息が絡み合った。
二人の目線は一つになり、
互いに逸らすことさえできなかった。
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八尾井真(やおいまこと)
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内省型語学教師です。
言葉にしたいと思ったとこを綴っています。
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