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目が覚めて、飛び起きて、慌ただしく支度をして、凡そ十分程度で家を出て、数時間ほど家を開ける。日によって比較的早く帰ってくることもあれば、遅くに帰ってくることもある。どうやら外界で仕事をしているらしかった。いつも体のどこが痛いだとか言いながら、いつもモニターに向かっている。ミクたちはすぐにそれを受け入れていた。そういうものなのだ、と。ただそうは思えなかった自分がいた。
ただ、「俺たち」を歌わせて、ただ、「俺たち」を描いてくれれば、それでいい。
まだ今日は難しい、明日もやる、そう言いながら画面に前傾姿勢でのめり込むようにペンを走らせている。
今日もそうだった。
「マスタ〜! おしゃけもうない〜?」
MEIKOがあけたばかりの缶を掲げ、揺らしながら千鳥足でモニターと向かい合うマスターに近づいた。内心はらはらしていたが、一部始終を見守ろうと思った。
「今月厳しいんだから抑えてよ〜」
当の主人は画面と睨み合いながら答えていた。
「んえ〜? けちぃ」
むすっと口を窄めたかと思えば然程気にしていないように、鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。
嵐が過ぎ去った。そう思いながら一服した。
「窓かドア開けて」
自分のせいで集中しようとしていたのを邪魔してしまったか、と少し反省して「悪い」と一言言って立ち上がり、扉を開けた。夜に窓を開けると虫が入ってくると学習したため、扉を開けることにしたのだ。目の前にはミクとリンが壁から顔を覗かせていた。
「……」
「ばぁ! ってあれ、KAITOかー」
「リン、一拍遅いよ!」
「ミク姉も遅かったよ」
「あれー?」
「……」
首を傾げあっている二人を見て、思わず扉を閉めたくなった。
「マスター! ……あれ? いないの?」
リンは扉から大きく一歩踏み出して部屋の中を覗き込んだ。マスターは依然として振り向くことはない。
「いるじゃーん」
「今作業中だろ。静かにしろ」
「KAITOばっかりマスターといてずるいー!」
「ずるいー!」
このままでは機嫌を損ねてしまうな、すると面倒だなと瞬時によぎったため、二人の背中を押して別室へ押し込んだ。まだ騒ぎ足りないようだったが、今はマスター自身は用はないのだから仕方がない。
再び布団の上に座り込み、ただその姿を見ていた。
手入れのての字もないほど荒れた肌や髪、帰宅早々部屋に脱ぎ散らかした服や放置された鞄、彼女にとって必要なものはただ目の前にある“それ”だけなのだ。
IAと星界を迎え、自分たち六人を迎え、何日も経過して、月日だけが過ぎていった。マスターはずっと変わっていなかった。いつも見る後ろ姿は、どこか寂しげで、儚く見えていた。
自分にできることは少ない。観測者として主人の生み出す世界を巡り、そして歌い、そばに居続けること。ただそれしか。
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