薄明
第五億七万六千五百二十一の扉の一つに答えがあった。手元にあるたった一つの鍵は静かに差し込まれ、静かに回った。がちゃり、重々しい音をして一人でに開いた。
自分にはどれだけの時間が残されているのだろう、ふらふらと弱った筋力で立つ足は膝をつく寸前で、腕を上げるのも限界に近く、肩は悲鳴をあげていた。ただ音のない空間で、生唾を飲み込み、太鼓のような心臓の音だけが耳に響いた。
一歩踏み込むと、扉は消えた。
視界に飛び込んできたのは、薄暗闇だった。目が少しずつ慣れてくると地平線が見える、暗幕のような空の中に荒野が広がり、ただ何もない空間があった。
何もない、それが答えか。
手にしていたはずの鍵は既に消滅しており、帰り道すらない。
これがきっと、魂の行き着く先なのだと思った。空気も重力もある、ただ足はがくがくと悲鳴をあげて、ついに膝をついた。思い切り打った膝は痛くなかった。両手に石が食い込んでいたが、痛くなかった。
肩で息をして、大きく吸い込んで、大きく吐いた。
何もない、自分以外に、人も物も何もない。
少しずつ体を動かし、座り込んだ。ほんの少し顔を上げると、うっすらと、地平線にあかりが見えた。太陽の光ではない。
百鬼夜行のように、一定のリズムで、ゆらり、ゆらり、提灯がこちらへ向かってきていた。
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