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沈花繚乱

56,592 字

幻想青春群像劇

"境内の木々は知っている。散ってもまた咲く、君たちの物語を。"

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第五章

優桜心惑 勇篇一
「どうしてこうなっちゃったんだろう」
桜の前で翔太と同級生の勇が、呟く。
「母ちゃんは泣くし」
「どうしたの」
「この前から、肩があがらなかったんだ。アレと思ったけど、特に痛い訳じゃないし、でも近所の病院いくと先生は、CTを観ながら大学病院へ行きなさい、紹介状を書くから」
そして大学病院へ行ったわけだ。
検査が終わって帰ってくると、母ちゃんが泣いている。
「どした」
「何でもない」それ以上聞けなかった。俺のことなのに。
「入院して治療をうけて」
何か脳に腫瘍みたいのができて。
「みんな優しいのが何か怖い」
俺、死んじゃうのかな
 
桜は少し揺れた。
「死ぬなんて、まだ誰も言ってない」
 「でも、みんな優しいんだ。先生も、看護師さんも、母ちゃんも」
「優しいのは、心配してるからだよ。それだけ」
「それだけ、なのかな」
桜は答えなかった。しばらくして、
「翔太は、知ってるの」
「まだ言ってない。どう言えばいいか、分かんないから」
「言わなきゃ、いつか困るよ」
「分かってる。でも」
勇は膝を抱えた。
「桜は、死ぬの怖くないの? 毎年散るのに」
「怖い」桜は言った。「でも、散るのと、死ぬのは違う」
「何が違うの」
「私はまた咲く。来年も、その先も」
「俺は?」
桜は答えなかった。それが、答えだった。
「でも必ず咲くとは、限らない」
風が吹いて、まだ残っていた花びらが数枚、勇の頭に落ちた。
「なんで、今日はこんなに優しいんだよ」
「優しくない」桜は言った。「ただ、揺れてるだけ」
 

── 第29章 了 ──

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