第二章
おじいさんとおばあさんは地獄へと堕ちました。見渡す限り、悍ましい鬼だらけの世界です。「おい婆さん、どうする?」「決まってるじゃない、爺さん。ここでも生き残るために、片っ端からしばき倒すのよ」二人は獄卒の鬼たちに肉弾戦を挑みました。地獄の鬼といえど、二人の前には所詮雑魚に過ぎません。
「オラァ!」おじいさんの放つ「みぞおちへのワンパン」の前に鬼たちは次々と悶絶。おばあさんはそれらの巨体を、轟々と燃え盛る血の池へと「はい、お次!」と容赦なく流していきました。この前代未聞の暴動は、すぐさま閻魔大王のもとへと報告されました。「何だと!? 地獄で暴れている亡者がいるだと!? 屈強な精鋭鬼軍勢を投入しろ! 秩序を守るのだ!」
おじいさんとおばあさんは当初、雑魚を蹴散らしていましたが、無限に湧き出てくる鬼の波に少しずつ圧倒され始めます。「爺さん、キリがないわ! 一度引きましょう!」「クソッ、体力が……!」二人は戦略的撤退を余儀なくされ、岩陰に身を隠して仮眠をとりました。その時、二人は揃って同じ夢を見ました。天国から自分たちに手を振る、我が子たちの姿です。『お父さん、お母さん、負けないで!』
夢から覚め、二人は涙を拭いました。「婆さん、やるか」「ええ、あの子たちのために、死ぬ気でしばき倒すわよ!」二人は再び圧倒的な闘志を漲らせて鬼しばきを再開し、地獄の戦力を壊滅寸前まで削ぎ落としました。しかし、ついに現れた三本の角と三つの目を持つ伝説の異形鬼に捕縛され、二人は厳重に縛り上げられてしまいました。
冷たい檻の床に横たわり、縄で互いの背中を縛り付けられたおじいさんとおばあさんは、ぐったりとしたまま動けずにいました。閻魔大王の前に引き出されるまでの暗闇の中、おじいさんが掠れた声で呟きました。「……婆さん。オレたちは、間違ってたのかねぇ」若者をしばき、看守をしばき、暴力だけで全てを解決できると信じていた人生。
「そうねぇ、爺さん……。あの子たちをあんな目に遭わせて、自分たちも死んじまって。私たちは自分の力を過信しすぎのバカだったのよ。あんなくだらねえ不倫疑惑だの性別疑惑だので意地を張って、別々に暮らさなけりゃ……四人で一緒に暮らせたはずなのに。オレたちのくだらねえプライドのせいで、あの子たちは冷てえ取調室の床で、凶暴な獣を呼び出すしかねえほど追い詰められていたんだ」おじいさんの目から、涙が溢れて床を濡らしました。二人は重い後悔と引き裂かれるような痛みに包まれながら、再び深い眠りに落ちていきました。
そこで二人は、また夢を見ました。ですが、今度の夢は優しくありませんでした。夢の中の子供たちは、血を流してボロボロになりながら泣いていました。『お父さん、お母さん、どうしていつも誰かをしばいてばかりいたの?』『どうして、普通に一緒に暮らしてくれなかったの?』子供たちの悲痛な叫びが、二人の魂を激しく切り刻みました。ただ暴力の英才教育だけを施して、子供たちに「普通の家族の温もり」を一つも与えられなかった。その結果、復讐の連鎖に巻き込み、死なせてしまった。
「オレが、悪かった……! すまねえ、すまねえ……!」「ごめんなさい、本当にごめんなさい……!」二人は夢の中で、今までの傲慢さと、互いへの、そして子供たちへの非礼を心の底から悔い改め、血を吐くような思いで涙を流し続けました。目を覚ました時、二人の目にはもう、かつての狂気混じりの闘志はありませんでした。ただ静かに、互いの手を握り締めました。「爺さん。もし、もう一度チャンスがあるなら」「ああ、婆さん。もう誰も、絶対にしばかねえ」
その後、閻魔大王の前に引き出された二人は、神妙な面持ちでただ静かに頭を下げていました。閻魔様は二人の履歴書と、そのあまりに静かな様子を見て、深く頭を抱えました。「ううむ……。ここで安易に刑罰を与えてしばき返せば、この二人のことだ、反骨精神で『第二の地獄』で再び大暴れするに違いない。そうなれば地獄が崩壊する……と思っていたが、なんだこの憑き物が落ち、反省しているような顔は。十分苦しみ、悔い改めたようだから監視付きで更生の機会を与えたいのだが…。」困り果てた閻魔様は、苦肉の策を思いつきました。「よし、お前たちを地獄の最奥にある、誰も手出しをしない場所へ追放する!」
二人が送られた場所は、美しい緑が瑞々しく茂り、清らかな川が流れる、まるで桃源郷のような極上の好立地でした。「あら、最高の場所じゃない」「ああ、心底安心したぜ。もう鬼をしばきに行く必要もねえな」誓い通り、二人が暴れることは二度とありませんでした。
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