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とある大正新婚夫婦の異世界転移サバイバル!日記

100,374 字

異世界転移、夫婦コメディ、家族ファンタジー

"大正ロマンと異世界サバイバルが織りなす、新婚夫婦の愛と笑いの冒険譚!"

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第三話 異世界でも、妻の役目は変わりませんわ  いや、だから、昼の話ですよね!

(俺は、夫たりえているのか?)

改めて祥吾は自問する

結婚式の夜の自分の振るまい
その後の分けのわからない衝撃

春の陽だまりのような甘い香りを最後に
祥吾の意識は途絶えた。

意識を取り戻した後の自分の醜態は思い出したくもない
夫としての威厳も尊厳も木っ端みじんに砕け散った

そう思うのだが、妻の千草の態度は少しも変わらない

自分を立てて敬ってくれている
その都度、妻の顔をじっと見てしまい、

「旦那様、どうかなさいましたか?」
小首をかしげて聞いてくる姿が愛しくて

(……いかん! 断じて左様なことではない!
 私は夫として、家の長として、千草に、真に頼られる存在とならねばならん!)

回想から覚めた祥吾は、縁側の向こうを再確認する。

屋敷、蔵、離れ、家畜小屋、さらには畑と、耕作予定の広大な敷地まで
すべてが、切り取られて放り込まれていた

しかも、その周りは、四方八方すべて、見たこともない木々に囲まれている

「千草、先日も言ったが、我々はとんでもない場所に迷い込んだようだ。
 軍の演習地でも、他国の奥地でもない……ここは、この世ではないのかもしれん」

深刻な顔で分析する祥吾に対し、千草がふと困ったように微笑む。

「左様でございますね」

「いや、どうしてそんなに落ち着いていられるんだ」

聞かれた千草は、逆に不思議そうに言う

「旦那様、どのような場所であれ、妻の役目は変わりませんもの」

「妻の役目?」

「ええ、朝、朝餉を作り、旦那様を起こし、お洗濯をして、お掃除をして、昼餉を作り
 畑仕事、家畜の世話、夕餉を作り、お風呂を用意して、そして夜——」

急に顔を赤らめる千草

(夜……いや、そうだが、この状況で、まさか、いや、しかし、千草殿は真面目な方ゆえ、まさか、いや、真面目だからこそ、いや、いかん、思考が泥沼だ!)

妻以上に赤くなってうろたえる祥吾

千草は、こほんと小さく咳払いして言う

「旦那様のために、できることが同じであれば、千草はそれだけで幸せですもの」

(そうなのか!)

思わず納得しかける祥吾は、まだ気付かない
その朝餉の膳のもう一つの爆弾に

第四話 魔物に変わろうとも、旦那様は旦那様ですわ えっ、俺の方が魔物に変わるの前提?

頭に血が上った祥吾は、ろくに見ずに卵焼きを口に入れカッと目を見開く

(な、なんという美味! 七色のキノコの比ではない)
だが、その後に体がカーッと熱くなってくるのを感じて
思わず卵焼きを見直す

卵焼きは黄色ではなかった。キノコと同じく七色になっていた

「千草……」

卵焼きを指さすが、後の言葉が出てこない

「何でしょう?旦那様?」

千草は、祥吾の様子を不思議そうに見ている

「この卵は、中身が七色だったのか」

我ながら馬鹿なことを聞いていると思いながら、体のほてりを懸命に押さえる

「いいえ、殻がすでに七色でございました」

「な、なんだと、殻が!」

「はい、数羽おります鶏の卵すべてが、七色でございました。
 それはもう鮮やかで——」

「なんということだ。千草、これはゆゆしき問題だぞ」

「はい?」

「味噌汁の七色のキノコといい、我が家の鶏の卵が殻から七色になっていることといい
 異常なことであろう」

「卵は中身だけ七色でも同じだとおもいますが」

「そういう問題ではない。要は、我が家のすべてが、
 この地の何かに蝕まれつつあるということだ」

「蝕まれる?……むしろかわいい変化では」

「今はキノコや卵ですんでいるが、
 このまま、山羊、牛、馬たちが蝕まれていったら
 我々もそうならないという保証はない」

「そうですねえ、目が七色になると見にくくなるでしょうし、
 汗が七色になると、お洗濯が大変になりますものねえ」

千草がなるほどと肯く。

「そんなかわいいものならいいが、やがて魔物になってしまうことも考えられるのだぞ」

祥吾はそう言って、外を指さす。
しつこい炎の龍は、いまだ諦めず結界らしきものと格闘している

「そうですわねえ。それは大変なことですねえ」

千草は、のんびりと答えてから、祥吾に向かって微笑む

「ですが、どんな魔物になろうとも、旦那様は旦那様ですわ。
 背中に羽が生えましても、頭にお角(つの)が生えましても、
 しっかりお世話をさせていただきますわ」

(いや、俺が魔物になる前提なのか?そうなのか?)

お茶碗をもったまま固まりかけた祥吾だったが、決死の覚悟を決める

(外の捜索を行わねば)

── 第3章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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