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落迷

連載中(書きかけ)

RYINN1110

4,045 字

異世界サスペンス、心理ホラー

"死にたかったはずなのに、なぜ私は逃げているのだろう?"

本当に何となく、ちょっとした思いつきだった。 何となく死のうと思って、美しい世界に囲まれたまま、何となくこの世を去ろう。そう思って私は地面に身を投げた。 ーーと思っていた。いや、錯覚していたのかもしれない。 目が開く。体も動く。痛むところもない。が、なぜだろうか私が飛び降りた時間帯には似つかわしくないほどの光が充満していた。目が慣れるにつれ少しずつ様子がわかる。 古くて湿ったカーペットの匂い。単調な黄色の壁と耳障りなハム音を響かせる蛍光灯が、どこまでも連続する。恐怖感と共に懐かしさをなぜか感じさせるような何も無い空っぽな部屋。 何もない。 何もないのに、どこかがおかしい。 そんな空間に、いつの間にか私は落ちていた。

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第二話

ああ、まただ。
またしてもここに来てしまった。
どうして、どうして自分の手で死なせてくれないんだ。
ここにいたらまた、あの化け物に襲われて…いや、もしかしたら夢の中ではそうだっただけで本当は違うのかもしれない。
が、少なくともここは現実なのだろう。夢の中ではない。そして恐らくあの時も…
もうこれ以上はこんなことを考えたくない。ここから出る方法を考えよう。あの化け物が現れたら全力で逃げよう。

とりあえず出口はないかと黄色い壁に囲まれながらあちこち歩きまわる。また同じような景色。古くて湿ったカーペットの…もはや言わなくてもいいだろう。古くて湿ったカーペットに、黄色い壁、耳障りな蛍光灯。気持ち悪いくらいに並んでいる。
すると。突然。いや、今回は予測できていた。もうすでに一度経験しているから。
「……コン、コン」
ノックのような音がした。これだ。これがあの針金の化け物の音だ。あの時もこの音がして気づいたらヤツがいた。逃げよう。今のうちに逃げればまだ見つからないかもしれない。見つかっても逃げ切れるかもしれない。ずっと同じような景色のせいでどっちかもわからない方向に走り出す。

「ゥ゛……ゥ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛……ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛――ッ!!」

咆哮だ。あの化け物に見つかったか…?ただ今回はもう走り出している。いける。逃げ切れる。全力で走る。背後から気色の悪い音と恐怖が這い寄る。運動をあまりしてなかったせいですぐに息が切れる。胸が苦しい。呼吸が速くなる。何度も撒こうとして曲がり角で曲がる。何度も。何度も。何度も。撒き切るまで。
何度だって。絶対に生きてやる。

どれだけ走っただろうか。もはや恐怖すら薄れるほどに疲弊し、息は上がりきり、足はクタクタだ。
「っ……痛っ……!」
激痛が走る。おそらく足を攣ってしまった。こんなところでこれまでのツケが。まずい。このままだと追いつかれる。後ろをちらっと見る。足を止める。
そこにあの化け物はいなかった。
安堵して足の力が抜ける。
……逃げ切った。逃げ切ったんだ。あの化け物から。私はまだ、生きている…!
けど、まだ出口が見つかったわけではない。それでもこれからあの化け物に追い回されてもきっと逃げ切れる。そんな自信がついた。

少し休んで、再び歩き始めた。足はまだ若干痛んでいるが、歩く分には問題ない。しばらく進むと、何かが見えた。
“誰か”の背中だ。いや、”誰か”ではない。とても見覚えがある。あの髪型、あの服装。そう。あの背中の正体は。誰でもない、私自身だ。右手を挙げれば向こうも右手を挙げる。あの背中に向かって走っても向こうも走り出して追いつけない。確信した。あの前に見えている人は私だ。ふと、後ろにも自分がいるんじゃないかと思って振り向いた。が、なかった。私の姿どころか、狂ったほど乱立する黄色い壁と耳障りな蛍光灯も。そこにあったのは階段だけだった。
出口かもしれない。このイカれた空間から出られる。足を早める。階段の前に立つ。下へ続いている。
やっと自分の手で死ねる......!
――そうは思ったものの。
私は本当に死にたいのか?現にあの針金の化け物から逃げてきた。あいつから逃げた理由は本当に自分の手で死にたいからなのか?今の私にはわからない。けど。私が見た私の背中は死にたいなんて重荷を抱えているような背中ではなかった。

少しくらい生きてみてもいいかな。

帰ろう。
私の世界へ。
こんな空間からはおさらばして。
私は階段へと足を踏み入れた。

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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