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沈花繚乱

56,592 字

幻想青春群像劇

"境内の木々は知っている。散ってもまた咲く、君たちの物語を。"

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第八章

果継無言 勇篇四
一番奥、杏の前。勇はそこに、何も言わずに座った。
杏も、何も言わなかった。
風が吹いて、実がひとつ落ちた。勇はそれを拾った。
「これ、食べていいの」
「いい」
「杏って、いつも通り過ぎられるだけの木だと思ってた」
「それでいい」
勇は実を掌に乗せたまま、しばらく黙っていた。
「俺、死んだらどうなるんだろう」
杏は答えなかった。ただ、もう一つ、実を落とした。
「二つも、いらないよ」
「一つは、あなたの分。もう一つは」
「もう一つは?」
「誰かの分」
勇は顔を上げた。
「誰の」
「まだ、決まってない」
風がやんだ。勇は二つの実を、両手に一つずつ乗せた。
 

── 第32章 了 ──

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