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沈花繚乱

56,592 字

幻想青春群像劇

"境内の木々は知っている。散ってもまた咲く、君たちの物語を。"

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第十六章

別想離心
翔太篇四
美奈子との電話は、あっさり終わった。

まだなんだ、としか言えなかった。「何も全然進んでない。
優柔不断 、いつもついてくる言葉、決められない性格。
人は、優しさと、呼んでくれる。
でも 美奈子からは告白されたし、勇も、話しかけられた。
自分からではなかった。
「ヘタレ、悲しいけどいつもそうだった」
桜が言う。「私達に言っても何も変わりは、しないよ」
「でも、吐き出せるだけでも進歩かな」
桃が言う。
「近所のおじさん、同じ様に優柔不断で、結局、人生で何一つ決められなかった。
本人は、いつも後悔してたけど、大きく傷つくことはなかった」
「それで」翔太は聞いた。「どうしたらいい、と聞きたいが
教えてくれないのは、わかっている。」
「進路も、美奈子も、勇も、全部繋がってるって、前に言ってたね」
「そんな事言ったっけ」
「ワ ー、イヤだイヤだ、この人抜け過ぎ」桜の言葉に
梅が「時はあっと言う間に去ってしまうからね」
少しの沈黙
そして
「青春しなさい」意外にも杏の言葉だった。

翔太は順番に桜、梅、桃、そして杏を見た。
「東京へ行く」
それだけ言って、帰っていった。

第 十七章
悩心決歩
望篇三

望は、また来ていた。
「まだ、迷ってる」
「何を」桜が聞いた。
「メール、打った。でも、送れてない」
「見せて」
「見せない」
桃が言った。「打っただけ、偉いじゃない」
「打っただけじゃ、意味ないでしょ」
「意味はある。あなたの中で、何かが動いた証拠」
望はスマホを握りしめたまま、黙っていた。
「何て書いたの」梅が聞いた。
「『前、ひどいことした。ごめん』。それだけ」
「それだけで、いいと思う」
「短すぎない?」
「短くていい」梅は言った。「長く書くと、言い訳が増える。短い方が、伝わる」
望は少し笑った。「相変わらず、厳しいね」
「厳しいんじゃない。近道を教えてるだけ。
でも、何かひどい事した?」
「無視したり、プリント渡さなかったり」
「あとは、?」
「そのくらい」
桜が言う。
「それって、みんながやるから、イジメになるけど
そんなにひどい事?多分、美怜がやった事としてしか、覚えてないよ」
桃が言う。「それよりも視線が合う事の方が不思議な気持ち」
「前に望がイジメられてた事、陽子は知っているでしょう」
梅が冷静に答えた。

「少し、考える」

杏の実がひとつ、落ちた。
望はそれを拾わなかった。
「拾わないの」
「これは、私の分じゃない気がする」
「誰の分でもない。ただ落ちただけ」
望はしばらく考えて、それから実を拾った。
指の中で、スマホと実、両方を握りしめた。
メールを打ち直そうとして、手を止めた。
「前、ひどい事した、ごめん」

結局、送らなかった。

翌日、望はプリントをコピーしていた。
そして、
誰も見ていない所で陽子の机の中に入れた。

── 第38章 了 ──

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