第二十章
心秤軽釣
翔太 篇五
翔太が勇の御見舞に行った。
面談スペースで待っている間、心臓の鼓動を強く感じた。
勇が歩いてやって来た。
久しぶりに見る勇からは、相変わらずの
人懐っこさを感じた。
「久しぶり!元気にしてた?」勇が先に口をきった。
「まあ、ぼちぼち、てか、これなくてごめん、」
「今、忙しい時期だからしょうがないよ、進路は、もう決めた?」
「東京の大学を受ける予定」
「一般で?」
「一般で」翔太が応えた。
「スポーツ推薦は?」
「使わない」
「美奈子とは、うまくいっているんだ」
「いや、あまり」
「ふーん、色々あるからね」勇は、そういって話題変えた。
「勉強している?」
「まだ、でも三ヶ月あれば大丈夫」
「ネットの噂信じているんだったら、浪人決定だね」
「浪人はイヤだ」
「早く決めてもらわないと、同じ学校にいけないし。
アッ、でもそんな気持ちだと、俺の方が先輩になったりして」
「俺は多浪か。」
勇の母が横を通った。
「アラ、翔太君、ありがとうございます。
久しぶりに顔を見れてうれしいわ、又、来てね」
おばさんが、行った後、翔太は言う。
「もっと早く来ようと思っていたんだけど、会って何言っていいか分からない。
「正直に言う。怖かったんだ。」
「俺が?」
「違う。……いや、ちょっとは勇も」
「なんだよ、それ」
「病気とか、死ぬとか、そういう話。
もし、医者から癌、と言われたら、
怖くて、寢られない、多分」
勇は言う「翔太は、優しいから」
「優しいんじゃない。弱いだけ」
「俺、しんどいと、すぐ
逃げるから」翔太は言った。
勇がかえす。「逃げてばかりの人生、上等じゃないか、俺だって似たようなものさ」
「きつい練習は手を抜き、勉強もせず寝てしまう。」
「翔太、どうでもいい事でもっと悩め,その内わかるから 」
「本当に?」
「じいちゃんが言ってた。
亀のこうより年の功」
「それ、使い方、合ってる?」
「わからん、でもいいんだよ!」
「何がいいんだか」翔太は、思わず言った。
「例えば進学の事とか、美奈子の事とか」
「それは、俺にとって一番大事な事」
「でも中々決めてない、
大事だから?
それともどうでもいいから?
どっちにしろ、浪人仮確定!!」
翔太は言った。
「宣言します。たった今より、即断即決の翔太に生まれかわります。」
「まあ、がんばれ」
翔太は、笑った。勇は、心の底から笑っているように見えた。
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