第四章
「じゃあ、そういうことだから!今まで、ありがとう。」
そう晴れやかに笑って、芽衣が装置に乗り込む直前。
「俺は、それでも止めるよ。」
魁星は、想い人に言い放った。
「ここからは俺の我儘だけど、聞いて、受け止めてほしい。芽衣の今までを何かの尺度に当てはめるのは違うけど、言うなれば『生きたい』が『死にたい』、いや違うな。『生きてたくない』を下回っている状態だと思うんだ。でもさ、俺の『生きたい』の大部分は、もうずっと前から芽衣なんだよ。家を継がない選択ができたのも、なんとかこれまでやって来れたのも、全部芽衣のお陰なんだよ。だからさ、これからも俺の『生きたい』でいてくれませんか?」
「ごめんね、魁星。」
そう言って芽衣が起動ボタンを押す。1つの失恋が生まれると共に、芽衣は過去へと飛び立った。周りの景色が光の粒子となって、目まぐるしく変わってゆく。泣き腫らした目を擦りながら、芽衣は独りごちる。
「もちろんさっき言った理由もあるけどね、魁星にはもっと良い人と出会ってほしかったから。大丈夫。私の記憶なんて、もうすぐ消えるからね。
…私も好きだよ、魁星。」
芽衣が降り立ったのは、ある風俗店の一室。
「確か、自分が生まれることが確定する直前の、両親が揃ってるタイミングに飛ぶんだったよね」
そこでは、母さんと男の人がなにやら楽しそうに喋っている。あれ、この男の人どこかで見覚えが…
取り敢えず店の奥に行って包丁を探す。扉や壁はすり抜けられるみたいだ。思ったより便利にできたんだね。自分の作品の出来に関心していると、厨房を見つけた。親殺しの目的で起こす行動のみで過去と相互に干渉できるから…殺す意識で包丁を握る、と掴めた。成程こういう感じか。さっきの部屋に戻ろう。
「…は?」
部屋に戻るとよく見えるようになっていた父さんの顔は、魁星の父さんの顔そのものだった。運命とはどこまでも絡み合うものだ。しかし時間がない。衝撃で回らなくなっていた頭を冷静に戻す。あれ?でもこれ、
「最高じゃん。」
魁星の方が数ヶ月誕生日が早いから、産まれなくなることはないはず。ということは、最後に魁星に貢献して終われる。これだけで私の『生きたい』になったよ。
「ありがとう。」
そう心を込めて。私は包丁を2人に突き刺して、
「さようなら。」
引き抜いた。
まだコメントはありません。最初のひとことをどうぞ。