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沈花繚乱

56,592 字

幻想青春群像劇

"境内の木々は知っている。散ってもまた咲く、君たちの物語を。"

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第六章

我念衝想 勇篇二
石段の脇、梅の前。勇は頭を丸めていた。
「桜に、何て言われたの」
「必ず咲くとは限らない、って」
「厳しいこと言うね、あの子も」
勇は帽子を深く被り直した。
「病院、みんな優しいんだ。看護師さんも、同じ病室の子も。でも、その優しさが、なんか、上から来る感じがして」
「かわいそうな子、として見られてる、ってこと」
「あーそうなの」
「うん。俺、そんなんじゃないのに」
「ふーん、そうなんだと思えばいいんじゃない」
梅は少し間を置いた。

「分かってる。でも、俺は俺のままでいたいんだ。病気の俺、じゃなくて」
「尊厳ってやつか」梅は言った。「あなたは、それを守ろうとしてる。それは、
弱ってるからできることじゃない」
勇は帽子のふちを、指でなぞった。
「髪、抜けてきた」
「見える」
「隠さなくていいの?」
「隠したいなら、隠せばいい。隠したくないなら、隠さなくていい。それを選べるのも、尊厳」
勇は黙った。
「でも、母ちゃんは、俺のためにって、色々してくれる。かつらとか、食事とか。それが、正直、重い時もある」
「あなたは、俺のままでいたい。お母さんは、できるだけのことをしたい。二つとも、間違ってない。だから、ぶつかる」
「じゃあ、どうしたらいいの」
「どうにもしなくていい。ただ、それは喧嘩じゃなくて、優しさ同士がぶつかってるだけだって、知っておくといい」
梅は少し黙って、続けた。
「そんな風にぶつかるほど大事にされてること、羨ましいと思う人もいるよ」
「そんなの、考えたこともなかった」
「今、考えたでしょう」
 

── 第6章 了 ──

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