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壁の向こうの少年

abejunichi

6,785 字

内面の成長を描く寓話的ファンタジー

"その扉は、君の内側からしか開かない。"

KID Aを改稿した児童文学版

目次(11 章・いまは第 7 章)
  1. 壁の向こうの少年
  2. 第1章 壁の町
  3. 第2章 髪の長い少年
  4. 第3章 壁の声
  5. 第4章 声が出ない夜
  6. 第5章 旅立ち
  7. 第6章 壁の外
  8. 第7章 夢の村
  9. 第8章 英雄はいない
  10. 第9章 声の正体
  11. 第10章 僕の言葉
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第6章 壁の外

壁の外には、壊れた町があった。

屋根のない家。割れた窓。道のまんなかに草が生えている。昔、人が暮らしていたあとが、風にふかれていた。風は、壁の中よりも強かった。強くて、少しだけ温かかった。

旅人たちに出会った。みんな、「すごい英雄」を探していた。でも誰も、それがどこにいるのか知らなかった。

「おれはずっと歩いてきた。でも、自分の影しか見えないんだ」

一人の旅人が言った。その旅人の靴は、底がすり減って、ほとんど裸足みたいだった。

僕は倒れそうになりながら、歩いた。のどが渇いて、足が重くて、なんども止まりそうになった。太陽がじりじりと首すじを焼いた。

そのとき、口から言葉が出た。あの歌だ。髪の長い少年とつくった、出鱈目の歌。意味なんてないのに、体が覚えていた。のどが声を覚えていた。

不思議と、足が動いた。

歩きながら、思った。外の世界には、壁がない。空はどこまでもつづいている。なのに、胸の中の壁はまだある。

外の壁をこえても、中の壁は残るんだ。

── 第7章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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