第6章 壁の外
壁の外には、壊れた町があった。
屋根のない家。割れた窓。道のまんなかに草が生えている。昔、人が暮らしていたあとが、風にふかれていた。風は、壁の中よりも強かった。強くて、少しだけ温かかった。
旅人たちに出会った。みんな、「すごい英雄」を探していた。でも誰も、それがどこにいるのか知らなかった。
「おれはずっと歩いてきた。でも、自分の影しか見えないんだ」
一人の旅人が言った。その旅人の靴は、底がすり減って、ほとんど裸足みたいだった。
僕は倒れそうになりながら、歩いた。のどが渇いて、足が重くて、なんども止まりそうになった。太陽がじりじりと首すじを焼いた。
そのとき、口から言葉が出た。あの歌だ。髪の長い少年とつくった、出鱈目の歌。意味なんてないのに、体が覚えていた。のどが声を覚えていた。
不思議と、足が動いた。
歩きながら、思った。外の世界には、壁がない。空はどこまでもつづいている。なのに、胸の中の壁はまだある。
外の壁をこえても、中の壁は残るんだ。
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