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PLANET LAND - 彗星から惑星へ -

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143,163 字

青春群像劇、成長物語

"彗星のように駆け抜けた日々を終え、彼女は仲間という重力の中で、自らの軌道を描き始める。"

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第7話 それは奇跡か伝説か?

 舞台の幕が開く、しかし照明はまだ落とされたままだ。
 やがてスクリーンに景色が浮かぶ。
 中央に人影がある。
 姿はまだ認識できず、黒い影。
 景色は、
 澄んだ青空。
 清潔な街区。
 規則正しく街並みを歩く、人の波。
 そこで、杏奈の声が、静かに降りる。

「この世界は、確かに完成しています。」
「そして人間は、計測されています。」

 スクリーンが切り替わる。
 手首の端末。
 心臓の鼓動が鳴り響く。
 心拍、体温、脳波。会話の抑揚までが波形になり、数値へ変換される。

「感情は数値化されます。」
「悲しみは、レベル3。」
「喜びは、72%。」
「共感性、41。」
「対人適正、58。」

 数字が整列する。

「人間の、適正相性の基準値」
「この数値に基づき、仕事、友情、愛情が管理され、与えられるのです」
「誤差の少ない組み合わせだけが、安全に、効率よく、幸福を生む。」
「そう定義されています。」

 映像が消えて、人影にスポットが照射。
 長いローブ。
 小さな正方形、長方形、さまざまな模様の布が、タイルのように貼り合わされている。

 ゆっくりと一歩進む。
 低い静かな声で。

「……ヒトよ」
「脆弱な精神しか持たぬ、矮小なひとつの固有種よ」

 峯岸(以下統括システム)がローブを翻す。

「我の導きを受けるがいい」
「そうすれば、幸福な人生を約束してやろう」

 ローブの袖が、わずかに揺れる。

「端末が、心拍を、体温を、脳波を読む。」
「会話の抑揚から、感情を算出する。」

 スクリーンに再び数値が並ぶ。

「相性を数値化し、適正な組み合わせを提供することにより」
「安全を、平和を……」
「幸福を、約束してやろう」 

 統括システムが、淡々と言葉を落とすたび、観客が舞台に釘付けになって行った。
 そして、客席最後尾に並んで立つ瀬良と田﨑も、手摺に肘をついて見ていた。 

 瀬良が呟く。

「……海斗さん、うちにいた頃に比べて、お芝居に厚みがありますことね」

「また、キャラ変ですか?さっきまでアメリカンハイスクールだったのに」

「……雅音さん、今日でステージは終わりましてよ」
「わたくしは、常に次を見据えておりますの」

 やれやれ、と呆れたように鼻を鳴らす田﨑。

「そうしないと……役に入れませんのよ」

 舞台端に聡志が現れた。
 手首の端末が赤く点滅する。

 適正基準値:低。
 スクリーンに文字が表示される。
 両手で顔を覆い、髪の毛を掻きむしる。

「なぜ、こうなるんだ?」
「適正な相性同士から生まれた俺が、なぜ?」
「基準値を下回るんだよ」

 その場に膝をつく聡志。
 すると、統括システムが近寄る。

「何事にも、一握りの誤差は生じる」
「それが、貴様のような存在だ」

 聡志は床に手をつく。

「幸福を掴めない」
「幸福を与えられない」
「……俺が、そうだと言うのか?」

 スクリーンに赤い表示。

 ERROR

「誤差は排除される」
「この世界の秩序は保たれるのだ」

 顔を上げる聡志。

「……排除、だと?」
「俺の存在を、消すと言うのか?」

 統括システムの仮面の目が赤く光る。

「命までは奪わん」
「だが、誤差である以上」
「社会とは、隔絶された環境に、身を置いてもらう」

 聡志の手首の端末で、点灯していた赤いランプが消える。

「……隔絶された環境だと?どこなんだよそれは」

「削除予定領域……」
「我の管理する世界以前の、無秩序で混沌とした時代の残滓の漂う場所だ」

 その言葉を残して、管理システムは舞台から立ち去る。

「……そんなはずはない」
「人間は、自分の意思で生き方を決められるはずだ」
「衝突して、離れることがあったとしても」
「また、引き寄せ合うこともできるはずだ」

 聡志の言葉を合図に、緞帳が下された。
 杏奈の声が客席に響く。

「適正な組み合わせで、保たれる完成された世界……」
「しかし、それは、数値により人類を選別する、恐ろしい世界だったのです」

 緞帳の裏では、舞台転換が行われた。
 美術サークルの佐々木が中心になり、背景や小道具が所定の位置に配置される。
 ミナと春川が、演者の衣装を整えていた。

「じゃあ、宮西さん、森山さん、ここはお願いします」

 舞台中枢で指示を出していた宮坂が、立ち上がり上着を羽織る。

「頑張ってね」

 森山が声をかけると、宮西がモニターを見て声を上げた。

「ライブ配信のカウンター、かなり回ってる」
「……おいおい、10万いきそうだよ」

 舞台袖に下がった峯岸が椅子に腰を下ろし、大きく息を吐く。 

「杏奈ちゃん、落ち着いたええ語りやで」
「声も震えてないし、腹式呼吸の効果がでとるわ」

「……峯岸さんも、凄く怖かったです」

 そこでミナが紙コップを峯岸に手渡した。

「いい芝居したじゃん」

「おう、三幕までは任せるで」

 その向こう、舞台中央で聡志が集中力を高めている姿が目に入った。

「……聡志くん」

 宮坂が手を叩く。

「よし、準備完了!二幕スタートだ」

 緞帳が上がる直前。
 聡志が杏奈に目を合わせ、力強く微笑む。

 幕が上がった。
 背景は、洞窟のような場所。
 聡志が辺りを見回しながら歩く。

「ここが……削除予定領域」
「排除された人間や、削除されたデータが集められる場所」
「人間は……俺一人なのか?」

 すると、スクリーンに白い小さな光点がひとつ。

「よし、日崎、始めようか」

「了解」

 指揮者がタクトを振ると、演奏が始まった。
 シンセサイザーとバイオリンの、幻想的な旋律が流れる。

 それを合図にぽつ、ぽつと、点灯し、やがて星空となっていった。

「……なんだ?これは」

 そこに、宮坂が現れる。

「……反応している?そうか、君が…」

 ミナとユズも現れて、三人で囲んだ。
 後退りをする聡志。

「……なんなんだよ、あんたら?」

 ミナが口を開く。

「私たちは、旧式のシステムを研究し、監視する者」

 ユズも続いた。

「旧システムが再起動しないように、でも……」

「僕たちが、このシステムを研究する過程で、現在の管理体制に疑問を持ったんだ」

 星空のスクリーンを、全員で見上げる。

「……この映像は?」

 宮坂が静かに。

「人間を、惑星と見立てて、観測するシステム」
「管理じゃなくて、あくまでも観測する」

「なぜ……惑星なんだ?」

「人間の人生を、惑星の軌道に当てはめて考えられているの」
「自分で生きる道を選び、歩んで行くように」

 落ち着いた口調のミナ。
 ユズも被せる。

「時に、衝突し、弾き合い、軌道を変える」
「だけど、重力を持って引き寄せ合う」

「だけど、なぜ、俺が現れた途端に反応するんだ?」

 聡志の問いに、宮坂が眼鏡を上げる。

「研究を進めることで分かった」
「その手首の端末で、測定される脳波の数値」
「その中に、再起動のためのデータファイルの鍵となるパターンがあることを」

「それが、俺だっていうのか?」

 ミナが頷く。

「統括システムの開発者は、システムが暴走し、人間を選別するようになる可能性を予測していたわ」

 ユズが、削除される予定のデータの入った箱に腰を下ろした。

「そのために、キーに反応する脳波のパターンをあらかじめ設定していたの、数百万単位で」

 宮坂が、他の箱を開く。
 ディスク、フィルム、USB、カード類、引き出しては、バラバラと床に撒き散らした。

「……どれも適合しない、しかし、君の脳波があれば見つけられるはずだ」

「このシステムが再起動すれば、どうなるんだ?」

 ミナが床のディスクを拾い、そこに自分の姿を映す。

「あの統括システムも、元々はこの観測システムの中の、感情を観測する存在だったの」

 ユズが立ち上がった。

「だから、観測システムが再起動すれば、そこのいち機能に戻るのよ」

「ひとつ聞いても良いか?あんたらは、今の管理された世界を、変えても良いのか?」

 ユズが視線を落とし、ミナが溜め息をつく。

「……正直言って、今の世界以外の生き方がわからないことは事実よ」

「今の私達には、自分で全てを選択する社会なんて、想像もつかない」

 宮坂が、眼鏡を拭いて戻す。

「だが、少なくとも、今の人間を選別する世の中よりも、良いはずだ」

「……まさか、あんた達も?」

 三人が、同時に頷いた。

「ここにいるということが、そういうことさ」

 舞台袖の峯岸が、腕組みをして四人を眺める。

 舞台ではミナとユズ、宮坂、それぞれが聡志と二人で、起動データを探す展開が繰り広げられ、結局四人が揃って項垂れる。

「本当に、そんなデータがあるのかしら?」

「……いや、ちょっと待て、あれ!」

 ミナが頭を抱えると、聡志が明滅する石を拾い上げる。

「……これは?」

「あなたの脳波に……反応しているのかもしれない!」

 ユズの言葉に頷くと、聡志は石をゆっくりと、押し上げる。
 すると、上半分が開き、中から透明な円盤が現れた。
 中央に明かりが灯り、ガラスの球体が、円盤の中に、規則正しく並べられていた。

「……これが、起動ディスク」

「早速、起動させよう」

 宮坂と聡志が顔を見合わせて頷くと、再び緞帳が下された。

 杏奈がマイクを上げた。

「衝突し、弾き合い、それでも自らの重力で引き寄せ合い、軌道を描く」
「惑星……それこそが、人間」
「……そのものです」

 またも舞台は、セットの転換。
 研究所の様な空間が構築される。
 衣装も小道具も、演奏も、音響も映像も。
 そこにいる者達が皆、ひとつの物を作り上げる為に力を合わせていた。

「さあ、最後の一幕、気合入れていくで〜」

 ユズが右手を差し出すと、峯岸が、ミナが、宮坂が、聡志が輪になって手を重ねた。
 ミナが杏奈を見て、頷いた。
 杏奈が聡志の掌の上に、被せると、聡志の胸が弾む。

(やべ……なんか、やべえ)

 ちらっと杏奈を見ると、少しはにかんだ笑顔。

「で、ユズ、なんて声かけるんだい?」

「考えて……なかったわ」

 宮坂の問いにユズが答えると、全員が失笑した。
 峯岸が、杏奈を見る。

「じゃあ、ここは作者に、たのんます!」

 杏奈は不思議と、気後れしなかった。
 満面の笑顔で見渡す。

「じゃあ……方言で!」

 全員が揃って頷く。

「みんな!気張りんさいね!」

 揃って声が落ちた。

 病室のベッドのフタバ。
 点滴の管を繋いだまま、スマホを眺めている。

「まっこと……どうなっちゅうがよ?」
「凄いき、こんながあ……こんな舞台」

 動画の画面から、グループチャットの画面に移す。

「田澤……杏奈」

 次は、「PLANET LAND」の台本を開いた。

「……みんなあ、ずるいき、ずるいちや」
「あーしを、置いてけぼりにして……」

 大ホールの幕が上がる、スクリーンには、コードの英数字が、大量に流れている。
 聡志以外の三人が端末に向かって、キーを打ち込んでいる。
 宮坂が顔を上げた。

「よし、ロック解除完了、早くディスクを……」

「……待って!回線に干渉が!」

 ユズが叫ぶと同時に、統括システムが舞台に現れた。

「誤差どもが…無駄な足掻きを」

 聡志が、その前に立ちはだかる。

「それ以上は行かせない、人間を本来の姿に戻すんだ」

「本来の……姿?」

「そうだ、惑星に、戻すんだ」

 ディスクを宮坂に手渡す。

「我の管理を離れることが」
「どのような意味を持つのか、わかっているのか?」
「後悔」
「苦悩」
「絶望を繰り返し」
「幸福とは対極の人生を、送ることになる事を」

 統括システムの言葉は続く。

「我の管理する世界こそが、ヒトを幸福にするのだ」

「それは、管理じゃない」
「人間を、世界を構築するための、部品にしているだけだ」
「その為に、都合の良い人間を選別しているに過ぎない」

 宮坂がディスクをセット、スクリーンにENTERの文字が浮かび、矢印のカーソルが移動する。
 しかし、統括システムが手をかざすと、その動きが止まった。

「……フリーズ?回線の干渉がここまでとは」

「我の導きを受ける価値のない誤差どもよ」
「ヒトの一生など、ただ駆け抜けるだけの彗星でよいのだ!」

 その時、聡志の手首の端末が、青色に輝き始めた。

「違う、彗星は通り過ぎる、だが惑星は……」
「自分の場所を持つんだ!」

 端末の発光と共に、画面のカーソルが動き始めた。

 ミナが

「彼の脳波が……回線の干渉を打ち消した」

 ユズも続く

「これなら、再起動できる!」

 宮坂が、冷静にキーに手を置く。

「本来の姿……僕らにとっては新しい世界の」
「始まりだ!」

 キーをタップ。
 その瞬間、激しいアラーム音が鳴り始め、画面には、SYSTEM SCAN の表示。

「愚かな、また争いの絶えぬ混沌とした時代を望むというのか?」

 聡志が答える。

「……それでも、選別して排除する者のいる世界よりも、正しいはずだ」
「誤差があろうが、補い合うことが出来る」
「人間は惑星……」
「ここは惑星の大地」
「PLANET LAND」
「自ら、選び続ける場所だ!」

 最後の言葉が落ちた瞬間、舞台が暗転し、杏奈の声が流れる。

「人間は……自分で軌道を描きます」
「時につまずき、立ち止まる」
「そんな時は、周りを見てください」
「あなたを引き寄せた重力が」
「必ず、救いになるはずです」
「ここは……惑星の大地」
「PLANET LANDです!」

 照明が灯る。
 聡志を中心に、峯岸、ミナ、ユズ、宮坂、そして杏奈も並び、客席に深々と一礼をすると、ゆっくりと緞帳が下り始めた。

 すると、客席から割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
 瀬良と田﨑も拍手を贈る。

「多辺くんも、見るたびに成長していきますわね」

「……峯岸も、役をモノにしてますよ」

「自分のままで、役を演じられる……正直、羨ましいですわ」

 田﨑はゆっくり瞬きをした。
 そして二人はホールを後にする。

 病室のフタバは、ただ呆然とスマホを見つめていた。
 やがて、画面にひとつ、またひとつ。
 涙がこぼれ落ちた。

 六星大学の弓道場では、河瀬が一人弓を引く。

 パァン!

 という乾いた音が青空に響いた。
 道場の時計に目をやる。

「……舞台、終わった頃かの?みんな見に行ってしもうた」

 ゆっくりと、弓を置き、弓懸(ゆがけ)を外す。
 それを、丁寧に自分の荷物に重ねると、矢を取りに外に出た。

「……俺も、見に行ったら良かったのう」

 東京。
 コメーテスデザインオフィス社長室。
 女性社長が、舞台の余韻に浸りながら、スマホに手を伸ばす。
 検索欄に、『いずみ亭 久羽乃町』
 地方の洋食レストランの画像。
 評価★4.6
 スワイプすると、ハンバーグ、パスタ、グラタン。
 皿の余白が料理を主張して、食欲をそそる。
 最後に、店主夫婦、幸弘と由美加の写真で女性は指を止めた。
 幸弘の写真を眺めて、呟く。

「あなたが生み出すのは、物も、人も」

「……とんでもないね」

 今度は、机の上の古いファイルを、もう一度めくりながら、幕の閉まった画面と交互に視線を移し、とある一文に目を落とす。
 そして、窓の外の大きな橋を見下ろしながら、微笑む。

「……奥さん、娘さん、お店に、あの頃は……」
「……いくつあるのよ、『人生のすべて』が」

 いずみ亭では。
 由美加と梨夏が長いため息。

「……あの子、やりきったね」

「うちも、惑星やな」

 六星大学大ホール。

 幕の裏では、客席で鳴り響く拍手を聞きながら、ユズが、大きく息を吐いた。

「やり切ったで、うちら」

 峯岸は、何も言わず、膝から崩れ落ちると、ミナがすぐに駆け寄る。

「海斗」

「……なんとか、やりきったわ〜」

 宮坂は眼鏡を拭き、かけ直す。
 しかし、もう一度外し、そのままハンカチを目頭に押し付けて、肩を震わせた。
 ミナが笑いながら、涙を溜めて、その背中をさすった。

 聡志は、肩で息をしている。
 さっきまで役の中にいた呼吸が、まだ抜けない。
 杏奈は胸を押さえて、大きく呼吸をした。
 当然込み上げて来るものがある。
 ただ、涙は出ない。
 まだ、感情に体の反応が追いついていないようだった。

「みんな!凄かったよ」

 振り向くと、宮西が、森山が。
 演奏班を見ると、佐藤と日崎が、ミナとユズの元に、佐々木と春川が駆け寄りそれぞれが抱き合う。

 宮西がニヤリと笑う。

「再生数、20万越えた」
「ありがとうね」

 そして、参加していた全ての者から、歓声と拍手が沸き起こった。
 客席の拍手とは違う。
 共に作り上げた、仲間たちからの祝福だ。

 ユズも涙が溢れ出したが、拭きもせず、杏奈に振り返った。

「……全部、杏奈ちゃんのおかげやで」

 すると、両側からユズとミナ、前後から春川と佐々木。

 ユズとミナが杏奈の背中に手を回すと、意図を理解した聡志と峯岸、宮坂も加わる。
 いつの間にか、そこにいる全員が、杏奈を取り囲んでいた。

「……あの、なんなんですか?」

 ミナが一言。

「口……閉じときなよ、舌噛まないように」

 峯岸も……

「みんな、絶対に落としたらあかんで!」

 音頭を取るのは聡志。

「せーの!」

 次の瞬間、杏奈の身体がふわりと浮いた。

「うわっ――!」

 一度。
 二度。
 三度。

 天井が近づき、遠ざかる。
 自分の体が宙に浮いた瞬間、初めて感情に乗せた涙が溢れ出した。

 下では、ユズが両手を伸ばしながら笑っている。
 宮坂は、珍しく満面の笑みを浮かべた。
 峯岸も、ミナも心の底からの笑顔。
 聡志は誇らしげに見上げていた。

 歓声が湧き上がっていった。

 誰かの「もう一回!」に、周囲が乗る。
 勢いは止まらない。

 杏奈は、胴上げの頂点で、近づく天井を見ながら笑った。
 涙を流しながら、笑っていた。

 通り過ぎるのを、やめた。
 引き寄せ合う、重力を持つ惑星たち。
 その一員になれた気がした。

 そして、これから仲間たちと、また新しいものを生み出し続ける、決意となった。

 これは、まだ何者でもない大学生たちが起こした。
 伝説なのか。
 奇跡なのか。

 ただ、この日の舞台は、確実に存在した事実として、彼らの胸に刻まれたのである。

── 第7章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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