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Momoー罪と贖罪の桃太郎譚ー

ryo.m

18,028 字

ダークファンタジー、ブラックコメディ、寓話

"暴力の因果を断ち切り、システムを超越する、魂の贖罪と家族の物語。"

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第二章

入隊から数年。天国のキャパシティが限界に達し、直近数百年で昇天した「更生度が不十分な亡者」を一斉に間引く『大粛清プロトコル』が発動される。そのリストの最上段には――おじいさん、おばあさん、山太郎、川太郎の名前があった。 桃太郎は単身、白銀の議事堂――「十人委員会」の最奥へと乗り込んだ。 「大粛清プロトコルを停止してください! こんなのは、ただの効率的な虐殺だ!」 中央に座る十人委員会の委員長は、冷徹な仮面の奥から静かに声を響かせた。そこにあったのは、圧倒的な「責任」の重みだった。 「桃太郎。天国のリソースは無限ではない。一人の命を救えば、千人が争う。誰かを冷酷に切り捨てなければ、この楽園は明日崩壊するのだ。お前に、一億の命を背負う覚悟があるのか?」 「……っ」 言葉を失う桃太郎に、委員長は三日間の猶予を与えた。
それからの三日間、桃太郎は兵舎の地下室に籠もり、文字通り、考えに考え抜いた。 孤独に書き溜めてきた膨大な設計書の束。犬・猿・雉が夜闇に紛れて盗み出した上層部の極秘データ。地獄の現場から山太郎と川太郎が送り続けるリアルタイムの心理データ。さらに、老治安官がこっそり持ってきてくれたプロの財務データ。 だが、二日目の深夜。極限状態の桃太郎の脳は限界を迎えていた。血走った目で数式を走らせる中、更生特区の人員配置と天国本拠地の防衛費という、絶対に重複させてはならないリソースの二重計上という致命的なエラーを見落としていた。 「――桃太郎、手が止まっているぞ」 背後から、犬が冷えたデータ端末を差し出す。「ここだ。初期グループの霊気消費計算がずれている。猿、雉、行くぞ!」 ボロボロになりながら、桃太郎の死角を埋めるために泥をすする三匹の姿。 「……すまない。ありがとう」 桃太郎は熱くなる目頭を押し、再びペンを握った。三日目の朝、完璧にして冷徹な「論理の線」が完成した。

── 第9章 了 ──

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