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忘却死生

連載中(書きかけ)

RYINN1110

25,028 字

異世界転生ファンタジー

"死と再生、そして忘却の果てに紡がれる、魂の旅路。"

捻れる。切れる。潰れる。裂ける。折れる。砕ける。何と形容すべきかわからない、限りなく多くの事象をこの身に受ける。何も聞こえない。何も見えない。何も判らない。唯、血の味を感じるだけ。 そうして僕は絶命した。のだが、気づいたら僕は真っ暗闇の中にいた。頭がはっきりせず、記憶は霞みがかって全く思い出せない。 そんな記憶を失った死者が生まれ変わり、新しく不思議な人生を謳歌する物語。

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第9話 終戦

「ああ、クソが!だから舐めるなって言ったんだよ馬鹿野郎共め!やっぱあのガキもとんだ化け物じゃねえか!」
ものすごい勢いで吹っ飛びながら仲間への文句を虚空へ吐く。
「あのガキ、0等撃てたのかよ!誰に教わりやがった!?」
…いや、あれは0等じゃねえ。ウィンドブレイクと唱えていた。1等魔術だ。それであの威力。もはや0等を凌ぐほどの。つまりアイツはとんでもねえ魔力量を抱えてやがる。もしかしたらアイツの母親以上…!
不運にも背後から柵が近づいてくる。もはや避けることは不可能だ。
「くっそ…がぁ!」
骨が砕ける音。血を吐く。辛うじて生きてはいるが虫の息。仲間とも完全に逸れた…どころか生きてるのかすら不明である。

目を覚ました。知らない天井。知らないベッドの上。最近はよく見る感じの木造の家。けど僕たちの家ではない。僕が粉砕しちゃったし。にしても懐かしい夢を見た気がする。あの声でもない、何か別の、だけどとても大切な何か。体を起こそうとするが、
「いててててて…!」
起き上がれない。多分骨が折れている。完全には受け身を取れ切れなかったか。けど、生きていてよかった。多分、落ちてたところを誰かに助けられたのだろう。
「お、起きたか。」
知らない男性の声。この家の人だろうか。もしかしたら僕を助けてくれた人かも?
「よかったよ、生きてて。ほんとにここに運んできた時には死にかけだったんだから。」
「すみません、助けていただいたんですよね?ありがとうございます。」
「いやいや、道に子供が倒れてたら助けないわけがないよ。歩いてたら君が倒れててびっくりしたよ。それで、なんであんなところで死にかけの状態で倒れてたの?」
「実は…戦争の渦中で誘拐されまして…なんとか自力で逃げ切れたまではよかったのですが大怪我してた上に体力も魔力も切れてしまっていたので…」
「あ!君、もしかして、この国の人じゃない…?」
「ここがどこかはわかりませんが僕はセルト王国の辺境の生まれです。」
「ああ、やっぱり…ここはドラト王国だよ。」
セルト王国は僕が生まれた国。5歳くらいになるまで知らなかったんですけどね…そしてドラト王国は今、セルト王国と戦争してるであろう隣国だ。僕たちの家はその国境の近くだった。
「今戦争ってどうなって…」
「もう、終わったよ。」
「え…?」
「君は大体2ヶ月くらい寝たきりだったんだ。その間にもう…
セルト王国は滅んだよ。」
「え…嘘でしょう?それじゃあ父さんと母さんは…」
「君の父さんと母さんのことは知らないけど…戦争がどう始まってどう終わったのかは教えてあげられるけど…」
「聞いても、いいですか?」
悔しい。僕も戦えてたら。もしかしたら…けど、父さんたちも強いんだ。そんな簡単に負けたり、死んだりするわけがない。きっと生きているはずだ!
「えっと、まずは…

この戦争は酷い始まり方をした。セルト王族の命令でセルトの首都に訪問していたドラト王女が襲撃され、誘拐された。それに対してドラト王国は当然憤慨し、即座に侵攻を開始した。宣戦布告は行われなかった。けど、誘拐を実行していた時点で戦争の予兆はもう出ていたため、ある程度準備はできていたそう。そして戦争で最初の標的になったのは、セルト王国の最高戦力。「夢想」だ。つまり父さんと母さんたちだ。そこにドラトは先手を打って大きな戦力を注いだ。その一環で僕たちの家は爆撃され、僕は誘拐された。この時にはドラト王国は戦力を削るに至っていない。つまり父さんたちは一旦逃げ切れたらしい。その後もドラトはセルト領内に侵攻。セルトには「夢想」がいるため厳しい戦いになると思われたが、たったの1ヶ月で首都陥落。セルトは滅びた。

ということで今こうなっているんだ。」
「どうして『夢想』がいたのにこんなに早く…」
「『夢想』は今回の戦争に参加しなかった。」
「え…?」
「もともと参加する気がなかったと噂されているが、彼らも流石に庇いきれなかったんだろう。セルト王族のことを。そしてセルトは見捨てられ、首都陥落の時に『夢想』は全員ドラト王国に捕まった。そして、『夢想』のメンバー5人はそれぞれバラバラの国に飛ばされた。処刑されなかっただけマシな方だね。そして…君はどこで誘拐されたんだい?私がそこまで送ってあげるよ。」
「…もう、ないです。」
「え?」
「ドラト王国軍に襲撃された時に逃げようと思って家を壊してきたんです。僕は誘拐されちゃいましたけど…」
「じゃあ君の親御さんとかは…」
「実は、僕の両親は『夢想』のメンバーなんです。」
「えっ、そうなのかい?」
「はい。なので、探しに行きたいと思います。各地を巡って。」
「そうか…君が…大変だったね。」
「そうですね、大変でしたけど、少なくとも両親が生きていそうで安心しました。」
「いつ頃に発つんだい?」
「できるだけ早く行きたいですが…あいにくこの体なので…」
「いいよ、まだここに居て。というかまだ君は旅に出るには幼すぎる。ぱっと見、5歳から7歳とかそこらだろう?」
「6歳です。」
「6歳ね。まだ幼い。もう少し、大きくなってから旅に出た方がいいんじゃないかな?じゃないと危険だ。それまでは私が世話を見るよ。」
「本当ですか!?ではもうしばらくお世話になります。」
「あいよ。そういえば名前を言ってなかったね。トア=アイバースだ。よろしくね。」
「リン=シーリォスです。よろしくお願いします。」
「わぁ、本当に『夢想』のテオさんの子供なんだ、母親は?」
「テリーと言います。」
「あぁ!魔術師の!すごい血筋の持ち主だなぁ君は。じゃあこれからよろしくね、リン君。」
「よろしくお願いします!…なんて呼べばいいですか?」
「トアでいいよ。」
「ではトアさんと呼ばせていただきます。」
「あぁ…まぁ、うん。それでいいよ。」
僕はしばらくトアさんの下でお世話になることになった。父さん、母さん、絶対に、成長して、旅をして、また会いに行くから!

「あーあー聞こえてるかな?うん、聞こえてそうだね。よかった。」
またあの懐かしい声。
「ちょっと準備が進んだらしいね!嬉しいよ。この調子でちょっとずつでいいから進めていってほしい。そして、いつか、全部思い出して、失ったもの全部取り返して勇気がついたら....

また僕に会いにきてね。おやすみ、ーー。」

── 第9章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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