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literalconnotation ─ なみだの魔法円から現れたのはあたしでした。

連載中(書きかけ)

有城 砂卯

37,653 字

異世界ファンタジー、自己発見の物語

"涙の魔法円から現れたのは、幼き日の私。浮気夫に右ストレートをかます、異世界転移ファンタジー!"

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primus=1:interior ∉ façade─内側にある建前

 窓からの明るい日差しに、隣にいるのが旦那でないことに驚いて目が覚めた。
 どうやら夢はまだ続いているらしい。
 ――現実なんだろうけど。

 若干、薄まり始めたとはいえ、分類としては“黒”になる旦那の顔色に比べると、ヴィザーゴさんの顔は死人のように白い。
 
 てか、美人だな。
 美人は目を閉じていても美人なのか。
 睫毛ながっ。
 睫毛が影作るって漫画の中だけと思ってたよ。
 
 ……にしても白いなぁ。
 血が通ってる感じがしないよ。
 もしや、面の皮が厚いってことか?

「くっ、ぷっ……朝からそれかい?僕の顔をそんな風に評価するなんて……」
 あ、プライドを傷付けてしまったかしら?
 謝らねば。
「誘惑してみようか――?」
 と、往年の少女漫画よろしく、顎をくいっとあげられた。
 生まれて初めての顎クイですよ。
 旦那には出来ない芸当だわ。
 見つめ合った刹那(笑)、はたと我に返る。
 
「さすがに絵面がキツ過ぎます。美形悪魔と純日本人幼女とかって、それなんてファンタジー、ですよ」
「Fantasy……?Fabula mirabilis?」
 日本のファンタジーは難しいようです。
 
「それはそうと、なんで裸なの?」
「休む時って、服着るの?」
 や、まあ個人の好みだけど。
 ヴィザーゴさんの適度に引き締まった体は、所謂細マッチョというやつで、女子ウケするよなーと……あれ?
 
 ちらりと見えた、股間にはあるべきものがない。
 凝視はしてない。
 今のあたしと同じだ。
「そっちはヴェーロの担当。僕は必要ないんだよ」
 
 そうですか。
 ヴィザーゴさんで誘って、ヴェーロさんが実践ですか。
 ……怖くないか?それ。
「老若男女、利き目はあるねぇ」
 そうですか。

 ルーモさんとヴェーロさんも、すっかり身支度は整えていて、獣姿ではなくなってる。
 残念。
 いつか、獣の姿のルーモさんとヴェーロさんの間でもふもふしたい。
 ふふ。――お二人の冷ややかな視線が向けられている……気がする。
 
「まったく、ルーモヴェーロは勤勉だよねぇ」
 詠唱も、指くるくるも無く、陽射しとは違う光の帯で、昨日とは違う衣服を身に纏うヴィザーゴさん。
 おお、魔女っ子変身バンクやね。
 
 袖のたっぷりとしたドレスシャツに、スッキリしたスラックスで、昨日のじゃらじゃらはしていなくて、オフの日のV系バンドマンみたいです。
 イメージだけど。
 にしても、シンプルな装いもお似合いになる。
 美人はいいなあ。
 
「アキラはどうする?poupée en biscuitとかどう?」
 ぷぺ……ビスクドールってことですか?
 日本人顔にロココなふりふりドレスはなあ。
「面白いと思うけど」
 面白い、言ってるやんっ!
 
 でも……なんだろう、悲しいな。
 スーツしか浮かばない。
 社畜ではなかったはずなんだけどな。
 日常着ている割合が、断然スーツだからか?
 
 そしたら、いつの間にか、某アイドルが着てそうな、創作派手制服な装いになっていた。
 これはこれで可愛いですけど。
「魔法で作ったの?」
「んー……imitatio. かな?アキラの“ここ”の似た感じを構成したけど、違った?」
 
 ヴィザーゴさんは、人差し指で自分の頭をつついた。
 あたしの頭にあったものってことですか?
 歌って踊る趣味はないのだけど。
 ヴィザーゴさんが、なにかを作ってくれる時は気を付けよう。

 額同士をこつんと当てて、ヴィザーゴさんは目を閉じる。
「……次はこの絵の中で、弓みたいのを持った耳の長い子の、着ている意味の無さそうな服はどう?」
 イヤです。

 さて、そんな漫才みたいなやり取りをしていると、「あさなぁさな」とチャルマさんです。
 朝食の準備が出来たと、お迎えに来てくれました。
 フィリーノさんって、チャルマさんをヴィザーゴさんから離そうとしてなかったっけ?

 いや、眠そうな目で無精髭を生やしたフォルティオさんを従えてました。
 一晩中、廊下にいらしたんでしょうか?
 尤も、彼のお目当てはルーモさんでもあるようで、ちゃっかりチャルマさんをだしに使って……袖にされているようです。
 
 それにしても、朝食ねぇ……食べたものは一体どうなって、どこにいくんだろう?
「動力かな?」
 全部ですか?
「全部だねぇ」
 よくわからん。
 昨夜の夕食もしっかり食べたけどさ。
 お腹がすいた、感じはないよな。

 と、いうかあたしより随分と小さいチャルマさんが、一人で歩いてるのに、あたしは抱っこされているこの図は一体なんだろう。
 喋ることに次いで、歩くことも忘れそうだよ。

 あれ?
「あっ!あたしっ!顔洗ってない!」
 唐突に気づいてしまった。
「気になる?」
 なります。
 乙女の慎みというやつですよ。
 ま、余すとこ無く見られてるんだろうけど。
「おかおあらうの?こっちだよ」
 チャルマさん、気が利きますね。

 そのままチャルマさんの案内で、扉の前に着く。
「ここは?」
「おふろばだよ」
 そうか、風呂場か。
 なら、下ろして貰おう。
「一人で平気?」
 って……こんな姿でも大人ですよ?あたし。
 どういう扱いになるのかはわからんけど、既婚者ですからねっ!

 ――――浴室って言ってたよね?
 湯船はなくて、板張り……簀の子の床。
 その床の中央に……噴水かな?
 陶器っぽい材質で、ヴェーロさんでも一抱えはありそうな器の中に、見たこと無い突起物。
 何だろうね。
 どんな風に使うのかしら?

 北欧のサウナみたいだなぁと、しげしげと見入っていたら、チャルマさんに、
「おふろの日は、きょうですよぉ」
 と言われた。
 お風呂の日があるのか。
「そうなんだ。楽しみ」
 と答えたら、はて?な顔された。
 
 通じてないみたいですね。
 困った顔のチャルマさんも可愛いのだけれど、ちっちゃい子を苛めてる気分にもなるので、口の両端を指できゅっと上げて、にこにこを表現してみる。
 通じるかな?
 あ、チャルマさんにこにこになった。
 しかも指付き。
 真似っこですね。
 くぅ~!ういやつめ。
 
 当初の目的をこなそう。
 顔を洗う仕草をすると、チャルマさんが「こっちだよ」と手を引っ張ってくれた。
 部屋の隅に洗面ボウルのような容器があって、やっぱり中央に突起。
 部屋の中央にあるやつの小型版、なのかな?
 どうすんだ?
 迷っていたら、チャルマさんがつまみを捻ろうとしてる……けど力が足らないようです。

 これ?と指差すと、チャルマさんがこくんと頷いた。
 つまみを捻ると、中央の突起部分から水が吹き出した。
 なんだっけ?あー公園とかにあった給水機。
 下から上に水が出るやつ。
 これが洗面台かあ。
 あたしのいたところとは随分違うのね。
  
 洗顔フォーム……は無さそうだから、水だけ洗顔。
 なのに、幼い肌はつるっつるだわ。
「たおる、どおぞ」
 チャルマさんがタオルっていうか、手拭いを差し出してくれる。
 ええこや。
 
 面と向かえば、幼児語でも頭に入るのに、お礼も伝えられないのかと思うと、もどかしい。
 ヴィザーゴさんよ。
 折角なら双方向の通訳機をつけてくれてもよかったんじゃない?
 
 でも、ま。
 通じなくてもいいや。
 気は心よね。
「ありがとう」
 というと、
「ありやと!」
 とチャルマさん。
 
 こてんと小首を傾げて。
 あ、それはあたしの真似ですね。
 
 ううっ!なんて愛らしい。
 いとをかしだわ。

 チャルマさんとお手々繋いで、廊下を歩いていたら、つい鼻唄が出てしまって。
 チャルマさんが合わせて歌い出したのですが、歌詞が分かりません。
 パンの顔した正義の味方のリズムを刻んでいたんだけど。
 はや。
 彼には人種の壁は無いも同然のようです。

 食堂に着くと、ヴィザーゴさんは座っていて……なぜ膝をぽんぽんと叩いている。
 ……それって。
 一人で食べたいって言ったよねっ!
 とはいえ、席はヴィザーゴさんの隣なのだけどね!
 
 食卓には、丸いものが浮かんでいるスープが用意されていて、一見すると御雑煮のようだった。
 醤油とか、お味噌とかに似た香りがするけれど、何か違う。
 何が違うのかは判らないのだけど、違うことだけが判る。

 食卓に並んだ、先割れスプーンと蓮華をミックスしたような、陶器っぽいカトラリー。
 お汁を掬えて、かつ具を切ることが出来るとかって、汁物には最適では?
 
 お汁の入った、天使みたいな意匠のお鉢。
 それをヴィザーゴさんに出すって、フィリーノさんたちも負けていないのね。

「いただきます」
 って、手を合わせると、チャルマさんもやってる。
 フィリーノさんやカヴァリーロさん、フォルティオさんも同じ様に手を合わせてるところを見ると、ここにも同じような食事の挨拶があるのかしらね?
 ヴィザーゴさんたちにはなさそうですね。
 
 で、食べてみると、丸いのは餅というよりは、お団子で。
 キノコや山菜たっぷりで体によさそうだ。
 と、いうかこのお団子。
 水団というよりは、お米なのかな?

 ――米?……いやいやいや。
 フィリーノさんたちにしろ、昨日の靴屋さんにしろ、ここの人たちは日本人離れした顔をしているじゃないか。
 安直に、ここは日本かも?なんて、早計過ぎじゃないか?
 
「ねえ?ヴィザーゴさん?これは何?」
「oryza……えーと、イネ?」
 イネ?稲は食えんがな。
 でも、米なのか。
 うるち米か、もち米か。
 タイ米ってのもあるか。
 潰してあるから判んないけど。
 
「口に合わない?不味い?」
 って、作ってくれただろうフィリーノさんたちの前で、なんてこと言い出すんだっ!
 ほら、睨んでるじゃない!
「美味しいよっ!」
「僕はお肉の方がいいなあ」
「黙れ」
 悪魔の戯れ言は聞かないことにしておこう。 

 食事が終わると、フィリーノさん、カヴァリーロさん、フォルティオさん、チャルマさんは、両手のひらを上にあげたあと、合掌して、
「たまはれました」
 と、唱えて目を閉じた。
 
 賜る?なのかね?
 ごちそうさまでした、ということなのだろうか?
 合掌なのだよね、指を組むのではなくて。
 

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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