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鏡

或信号機

2,256 字

現代怪談、ショートショート

"日常の鏡が映し出す、もう一つの世界の不穏な囁き。"

鏡に映るあなたをよく観察してみよう!

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いまからさ、ちょっと不思議な話をしてみたいんだけどいいかな?
時間がない?まぁ、聞くだけなら無料なんだし、聞いてほしいな。
まぁいいや、とりあえず始めようと思う。
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「ねぇ、鏡の秘密って知ってる?」

この一言が私の頭をよぎり続けている。この言葉を聞いたのはおそらく幼稚園にいたころだろう。
といっても最近まではこんなことはなかったのだ。これはおそらく私が今いる空間のせいだ。
今日は成り行きで、私の家にサークルのメンバーで泊まろう、ということになった。
そしていつの間にか、怪談話をすることになり、私は最後、所謂大取となってしまった。
セミの鳴き声はもう聞こえない。街の声も聞こえない。ただただ、熱すぎて不快なだけの夜にさらに不快な要素が加わった。
負の数に負の数を足したところで結局は負の数ということなのだろうか。だったいっそ二乗してほしかった。
「...その時、俺のがのってたエレベータに"ソレ"はいたんだよね...」
話はまだ続いている。私にバトンが渡されるのはまだ遠い未来の話だ。

「ねぇ、鏡の秘密って知ってる?」
「鏡には、自分の姿が写るでしょ?」
「写っている自分に向かって、じゃんけんをするの、それも午前2時に。」
「そうすると、鏡の中の自分が自分とは違う手を出すんだよー」
幼少期の話の続きを思い出した。
あまりにも幼稚な内容がゆえに、体を震わせて口を押さえてしまった。幸いなことに、周りは気が付いていない。
そんなこと、あり得るはずがない。光の反射がどうしてそうなろうか、どう屈折しようがそんな風に見えることなんてありえないのだから。

いつの間にか私の番が回ってきた。
せっかくなので「鏡の秘密」とやらを少し尾ひれを付けて話すことにした。
「これは、私の友人のBという人が体験した話なんだけどね...」
「...というわけで午前2時に鏡の前でじゃんけんをするのはよくなんだよ。終わり。」
割とウケた。以外にも皆怖がっていたし、何なら今度試してみようという人もいた。その人がどうなろうが私の知った話ではない。
当然、そんなことは起きてないし、試してもない。起きるわけもない。
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ありきたりすぎてつまらないって?
そんなこと言われても困るんだよね。だって私の実体験これしかないからさ。
まぁ、聞き流してもいいから続きを言わせて。
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皆が寝静まった後、私は自分の家に大量の人がいる環境にあまりなれていないせいか、かなり早い時間に目が覚めてしまった。
喉がとても乾いていたので、洗面所にいき水を飲んだ。その時、ふと今日話した内容が頭をよぎった。
目の前には鏡がある。中には"つかれた"表情をした自分がいる。そして時計を見ると短針が1と2の間にあった。
私は昼間話した話が、実際にはあり得えないことの証明として「じゃんけん」をしようと思った。
右手を鏡に向け、手を上にあげる。
「じゃんけん.......」
「ポン」
静寂の中、自分の声が響いてるように感じた。この時間にセミはまだ鳴いていないようだ。
そんな静寂の中、迷信に惑わされて向こう側の自分に向かって手を出す、あまりにも馬鹿馬鹿しくて、じゃんけんを何度も行っていた。
「じゃんけんポン」
「あいこでしょ」
「あいこでしょ」
「あいこでしょ………」

何度じゃんけんをしても、結果は同じ。私は右手でじゃんけんをして、向こうの私は右手でわたしと同じ手の形をとる。
私は"怪異"に勝ったのだ。気がつけば、長針は12よりも右側にいた。
何も起こらない。拍子抜けした私が何気なく鏡を見る。
普段と変わらない、何の変哲もない自分の顔が映っている。
「...こんな感じだっけ?」
向こう側の自分に対して少し違和感を覚えた。何かが違う気がする。
落ち着くために水を飲もうと、蛇口をひねった。
蛇口は回らず、手だけが滑っていった。
鏡写し、そうだ。
私は向こう側の人物が、少し笑っているように見えた。やっと気が付いたのか、節穴の数が減って何よりだ。奴に嘲笑されているような気がする。

私は気が付かなかったことにしてこの部屋を出ようとした。しかし、何かがおかしい。
違和感の正体に気が付いたころにはすべて手遅れだった。私は、どうやら左利きになってしまったらしい。
いや、世界が左利きになった、といったほうが正しいのだろうか。私は早く逃げださなくてはならなかった。
洗面所の扉を開けたその先には、見たことがある見覚えのない景色。
サークルの皆はいない。どこへ行ったのかも興味ないし、何をしてようが構わない。
初めて見た自室へと足を踏み入れ、ベッドへ飛び込む。奴はいない、逃げきれたのだ、いや、そもそもこれは夢だ、寝ぼけているだけなのだ。
無意味な文章が頭を巡り、そしてそれは徐々に速さを失っていった。
いつの間にか周りが明るくなっていることに気が付くと、時計は6時をさしていた。
—————————————————
話はこれで終わり。
どう?短かったでしょ?所謂ショートショートというやつ。
こっちの世界になれるまで、結構苦労したんだよね。
だって、この世界、文字が全部反対なんだからさ。

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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