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思春期への回顧

コトカラム

2,539 字

青春小説、成長物語

"孤独な魂が交錯し、中二病が世界を変える。あの日の教室で、僕は傍観者ではいられなくなった。"

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「思春期への回顧」
ふと立ち止まるショーウインドウ、映るのは商品でなく自分。
色あせたとは言わないが、かなり時間がたったものだ。あの日から。
リクルートスーツの学生が街を埋める季節に空を見上げた。

キーンコーンカーンコーン。
カーテンが揺れる。中学二年。
クラスの隅にいた。確かにいた。
うつむき世界を拒絶していることが滲み出ている。
近づくな、俺は孤独だ。面会お断り。
もしくはそこだけ別次元のように、色が抜けていた。
なぜ僕が気になったのかわからない。
そもそも人の評価がわからなかった。
暗いから、デブだから何だというのだ?
思春期を僕だけ体験しながら理解していないようで悲しい。
もちろん異質であることはわかる。でも攻撃する理由は?
背中を丸めながら眺める。

「おい、暗いんだよお前。なぁ?」

いつもの風景に嫌気がさす。
放っておけばいいのにわざわざ絡むなんて、
共感能力を疑ってしまう。
数人に遠距離攻撃を受けている。隅の孤独者。
遠距離であることが救いかもしれない。
地獄の10分。次の授業が始まるまで。
周囲は次元が違うように分かれている。
いじる、傍観、無視。というより興味がない。
僕は傍観である。
無視ほど消極的ではないが、
加担をするほど馬鹿でもない。
言葉の矢に嫌気がさしたのか、隅から立ち上がり教室を出ていく。
一拍置いて一笑い。
僕の前を通るとき一冊のメモ帳が落ちた。
A6サイズの魔導書(仮)であった。
なぜか体が動いた。きっと世界新記録。
周りに悟られることもなく手に収まる。
どうということもない。
なんとなく火種に見えた。それだけ。
授業が進む。休み時間、渡せない。
あくまで傍観者。
動けない。
放課後、隅の孤独者は足早に帰宅をしていった。
顔が暗く、こちらの心が少し痛む。
帰り道も追いかける気力が湧かず帰宅。
鞄を置くと嫌でも意識が手に向かう。
A6の魔導書(仮)
ページをめくる。
「環魂の理のなか、葬錬の輪廻が煉獄へと贄を導く。
我が真爛の極みに至る緑地。
創源の万華鏡に世界の縮地を胎生する」
9割9分理解が出来なかった。
最後の一言。

「僕は孤独だ。」

それが僕と彼、アキラを繋いだのかもしれない。

キーンコーンカーンコーン
いつもの様に矢を引き絞り狙いが定められる。
キリッキリッ緊張の中放たれるのを待っている。
心臓が締め付けられる。いや、速度を上げていた。
同時に深くため息。
アキラが腰を浮かすように机に手を掛けた。
気づいたら、僕は目の前に。
周囲が止まった。
少し手が震える。
A6メモ帳。
タイトルは偶然か手に隠れる。

「これ、落としてた」

自分でも情報の少なさに驚く。
アキラがメモ帳を凝視。止まる。
持ち主に戻り、「ありがとう」
立ち上がり廊下へ。
残された僕は定位置に戻る。

「おい、どうしたんだよ。さっきの」

「ああ、拾ったんだよ。返すだろ?ふつう」

「まぁ、そっか」

時間が戻る。いつもの学校に。
授業、給食、放課後。
いつもと違うのは友達と別れた後。
背後に違和感があることだった。
曲がり角、電柱に隠れきれてない。
はぁー決意に似た溜息。
振り返る。一瞬跳ねた。

「やぁ、どうした?」
半歩こちらへ体が動く。

「いや、えっと、あのこれ」
魔導書(仮)をかざす。

「み、見た?」
軽い罪悪感。

「あ、ああ」
足が下がると思ってた。
まさか。

「どうだった?」と聞かれるとは。
聞き直す。
「いや、どうだった?」
耳は正しかった。

沈黙、思いだす。
「呪文みたいだった。」精一杯だ。

「そ、そう?かなりいいでしょ、頑張って考えたんだ!」
「特に受胎する深淵の光子が向直りのところいいだろ!ここはねっ」
エンジンがかかったみたいだ。
ブレーキが壊れたように呪文を吐いている。
異世界なら僕は体が砕け散っている。
圧倒されながら頑張りを褒める。
感心。
よく考えたなぁ、と。
これが転機だったのかもしれない。
アキラはメンタルが強かったのだ。
包帯が追加されていた。
クラスがどっと沸く。異質が看板を背負っている。
さすがに目が点になった。

「おい、どうした根暗。腕に虫でも沸いたか?」

「ふっ、君たちには見えないのか?この絶火の灯に撃たれた腕が」
かなり振り切ったと思う。昨日の今日だ。

「な、なんだお前?」
周囲がうろたえる。女子が目を見開き、バランスが傾く。

「懐古の時は近い。忘れ去られた結実が収束の円環の中に落ちる!」
周囲にデバフを振りまく。状態異常。

ガラガラガラ扉が開く。
「おーい、席に着け。アキラその腕はどうした?」

「業焔に焼かれ、境界からの帰還の代償だ。」
担任にも状態異常がかかった。

僕はまだ傍観者でいた。
特に感慨もない、ただそれだけ。
日々、アキラの進化は早かった。
きっと乗り切った人間は強いのだろう。
何かが抜け落ちたのか、振り切ったのかわからない。
次の日に眼帯、翌週には魔導書(真)、
月半ばを過ぎると聖水入りのペンダント。
出てくるものだ。
うるさいが、こちらから近づかなければ無害。
かみ合わない言葉をいくつか交わし、軽く僕が笑うそんな日常。
一定の距離で普通に過ごす。

「我が真言の光陰を受けろ」

「あー、はいはい」

クラスの隅で異世界(魔導書)に浸っているだけだった。
いままでは。
なぜか?発作なのか?
またブレーキが壊れたようだ。かなり踏み込んだな。

キーンコーンカーンコーン
僕に向き直る中二病患者。

「誰か俺の右手を止めてくれ、封印が解ける!永遠の劫火がこの身を包む!ケント!」

ケント。一度聞き流す。再認識。僕の名だ。
地獄の10分が始まった。

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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