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さわやかな口実

コトカラム

1,041 字

不条理ホラー・心理サスペンス

"「さわやかさ」の裏に潜む、自己と他者の境界が融解する不条理な恐怖。"

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「さわやかな口実」想念奇譚
 学校に向かう足取りは重く軽やかであった、それは授業や人間関係以前の問題であった。自分の存在そのものに関わる違和感。しかし彼女に会えるという期待。
おはようと声が響く、人は見た目が大事というが清潔さも必要だとかんじる。彼女はかなり人の目を引く、すれ違いざまのシャンプーの香りが完成へ一役買っている。
 自分の姿とくらべてしまう、決して周りを不快にしているつもりはないが遠巻きに避けられている気がする。タブレットをかみ砕く。心なしか人前で話すことに前向きになる、不思議だ。
 見た目にも気を付けよう、清潔感を大切にビシッと決めれば人と関わりやすくなる。明るく笑うことも増えた、彼女とも距離が近づいた気がする。新しい時計を身に着けよう。
「おはよう」
「おはよう、今日もビシッと決まってるね!」
 うまく回りだした、想いが世界を変えた。退屈な授業も休み時間がバランスを取ってくれる。目の前に立ち替わり現れる友達と、たわいのない話をする。それもきっと自分を変えようと行動した結果だ。タブレットをかみ砕く、カリッ。
 なんでもよかったのかもしれないな、きっかけは彼女と同じ目線、そしたら楽しくなっていた。順調、順調だ。順調だった。タブレットをかみ砕く、カリッ。
「おはよう」
「うん、おはよう」
 また遠巻きに距離を取られる、見た目は以前と変わらず整えているつもりだ。人間関係で大きくヘマをした記憶もない、なんでだ、なんで。
 みんな顔をしかめる。僕といると無意識かみんな手で鼻を遮っている。自分の匂いは自分ではわからないというがまさかな。タブレットをかみ砕く、カリッ。
 お風呂でも入念に体を洗う、歯磨きも。そして気づく、何か口内にしこりがある。つまんでいるうちにつぶれる様にドロッと違和感。
「おはよう」
「おはよう、今日はいつもと違うね。」
 次の日にはみんな驚いていた、いつもの不快な顔が嘘のようだ。日常が戻ってきた、きっと昨日のしこりが原因だったんだ。タブレットをかみ砕く、カリッ。
 その夜も口の中にしこりが出来ていた。つまみつぶす、ドロッ。朝起きるしこりが、つまみつぶす、ドロッ。つまんだ先からしこりが、ドロッ。 
いや、いいはずだ。これで昨日はよくなった。タブレットを口に入れる、学校へ。
「おばぎょう」
「……」
ドロッ。ダラダラ。
僕は泣いて笑顔だった。
口実は続いてく、誰か噛んだ。カリッ。

── 了 ──

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