[Early Response Assistant]
初代社長の還暦と共に14個下のオープニングメンバーがAURIX社の全権を譲渡した。第一期の介護機体の技術をそのまま第二期に開発されたERAの初期個体に移植した試験モデル。【AURIX ERA1-PX】[Prototype Experiment]汎用性の人形アセットに介護機体のアームを取り付けた形態。
PXを洗練された独自素体に転用し、カスタマーセンターに寄せられたクレームの回答結果を搭載した【AURIX-ERA2-CA】[Customer Adaptive]独自の感情アセット・柔軟な形式音声・謝罪と感謝・┃ここまでをまとめてERA期
[Adaptive Social Technical Relational Android ]
二代目社長が14年間に2機種を手掛けて還暦に至る。定例通り10年以上のラグを置く人物に全権限を譲渡する筈が、値する人物がおらず更に年下の38歳の女性管理職に全権限が譲渡された。しかしこの3代目社長でAURIXは大きく変化した。
ERA期に利用者から多大な信頼を置かれたAURIXはついに政府からの受注を勝ち取った。対人関係と論理性に特選化させた非核的低耐久のモデル。【AURIX ASTRA-SP】[Strategic Program]国家資金を投入した事で人間に近い機体に大きく変化。形式から声優の肉声に変更。ここでAndroidと言う言葉が扱われる。
政府の受注により社会インフラの整備のために、ASTRAの量産機モデルとしてアセット単位で生産された【AURIX STELLA-SP2】[Strategic Program second] ASTRAとしては対照的の高耐久の電子音モデル。会話の殆どを事前に意思と紐付けされたクラシック音源により会話。これにより全ての人間に平等に疎通可能。
STELLA/ASTRA施行中に発見された危険区域への対応に、前2機種の繊細さと密閉性に加えて可変式を追加した【AURIX FORGE-LC】[Functional Operations Reconstruction & Grid Engineering]ここでASTRAシリーズは人の形を諦めた。初期に登用していた汎用モデルを起用し、1m大の精巧なブロック体に変形し、様々な区域を封鎖。AURIX社は法人専売にこのモデルを販売。┃ここまでが3代目社長
3代目社長が3期種の発表後還暦を迎え、通年通りに13個下の男性管理職に全権限が譲渡された。政府からの受注生産により盤石な形態を手に入れたAURIX社はこの四代目の期間に安定期に入る。娯楽-レジャー向けの開発だ。
ASTRA由来の高度音声対応、STELLA由来の高耐久性、FORGE由来の可変構造を統合。【AURIX NOVA-CR】利用者ごとの思想・年齢・用途に応じた柔軟なカスタマイズを実現し、教育・趣味・相談・レジャーなど幅広い分野へ進出。
ここでは新機種は無く、カスタムアセットの開発に注力。
【AURIX NOVA-EDU】ASTRA時代から要望の多かった教育モデルのデータ販売。資格支援から技術継承まで、感覚的な教育をデータから言語化した事で多くの技術の継承に寄与。
【AURIX NOVA-HOST】既存のアセットから流暢な言語体系を獲得した廉価版モデル。高級旅亭から要人の案内などの正式な言語運用が必要な対応に著しい意識変革を与えた。
【AURIX NOVA-RIDE】四代目社長の50歳記念に、潤沢な資金の元に設計されたバースデーモデル。AURIX社への熱い想いを持つ顧客や、AURIXという安心のブランドに惹かれた者等の多くの新規層を刈り取った代表格。
ここまで長々と書いてきた。しかし読んでいて気づいた賢人もいらっしゃるだろう。AURIXの脆弱性に。まず一つに『唯一の統合ソフトウェア基盤』AURIX社は初代社長の頃に構築されたAURIXソフトを毎度毎度更新し続けている。当時としては革命的だった。個体差を減らし、全製品に共通する倫理制御を敷き、どの時代、機種であろうと“最低限AURIXである” 事を保証する。ERAも、ASTRAも、STELLAも、FORGEも、NOVAも。
姿形も用途も変われど、根幹には必ず“同じAURIXソフト”が流れていた。それ自体は長所だった。開発速度。互換性。理念統一。安全制御。ブランド信頼。AURIX社が百年単位で“壊れにくい”を成立させた理由の一つ。だが問題は、更新という名の継ぎ足しだった。AURIXソフトは新時代ごとに刷新されたわけではない。更新拡張上書き継承それらを幾世代にも渡って繰り返したのだ。
ここで、もう一つの脆弱性に触れなければならない。AURIX社はソフトを統一していた。だがそれ以上に、初代社長が発表する会社代譜がAURIXのここまでの発展を予想していなかった事だ。人と共にあり続けるための企業だったAURIXは、人を支えることには長けていたが、人が支えを超えて何を欲望するかには鈍かった。人と共にあり続けたはずのAURIXは、いつしか加速する人の欲望に追い抜かれてしまった。
AURIX社最後の決定は、生き残ることではなかった。“人と共にあれ”その創業理念に反する進化を拒み、AURIXは企業としての延命より、AURIXであり続けることを選んだ。統合基盤の段階的停止。新規大型開発の終了。既存機体保守権限の地方委譲。工場施設の封鎖。AURIX社は、時代に敗れたのではない。“自らをAURIXでなくしてまで続くこと” を拒絶した。
AURIX史伝
SF企業史、哲学的な物語
"技術の進化と人間の欲望、そして企業の尊厳。あるAI企業の静かなる終焉。"
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