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ブーンはカイストと四千世界について布教されるようです

ナン・ルーナック

25,168 字

作品紹介、ファンタジー、SF、群像劇

"百億年の時を超え、混沌と秩序が織りなす「四千世界」への誘い。"

※ブーン系のガワを借りたカイストシリーズ(狂気太郎著https://madtaro.x0.com/)の作品紹介・前編です。

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( ^ω^)ブーンはカイストと四千世界について布教されるようです

※ブーン系のガワを借りたカイストシリーズ(狂気太郎著https://madtaro.x0.com/)の作品紹介です。
※なんで誰も書かねぇんだ!?じゃあ俺が書く!!!の勢いで作った。おわりだよ。
※ネタバレてんこ盛りなので、気にする人はぜひ先に作品を読んでください。気にしない人も後で読め。
※紹介作品一覧とリンク先

『百億年戦争』正暦112億年 https://madtaro.x0.com/10billion_years_war.htm
『混沌へ』正暦212億年 https://madtaro.x0.com/dive_to_chaos.htm
『重い枷』正暦326億年 https://madtaro.x0.com/heavy_yokes.htm
『同じ名の宿敵』正暦396億年〜 https://madtaro.x0.com/the_same_name.htm
『骸骨騎士』正暦397億年 https://madtaro.x0.com/skeleton_knight.htm
『挑む者』正暦397億年 https://madtaro.x0.com/challenger.htm
『急所を一突き』正暦403億年 https://madtaro.x0.com/pierce_the_vital_point.htm
『借時百万年』正暦403億年 https://madtaro.x0.com/a_debt_of_1_million_years.htm
『敗因』正暦529億年 https://madtaro.x0.com/the_cause_of_defeat.htm
『その席その一言』正暦547億年https://madtaro.x0.com/that_seat_and_that_word.htm
『原点』正暦548億年 https://madtaro.x0.com/the_beginning.htm
『遺跡の見える町で』正暦554億年 https://madtaro.x0.com/while_watching_ruins.htm
『目的のない凶器』正暦607億年 https://madtaro.x0.com/no_use_weapon.htm
『皆殺し探偵社』正暦607億年https://madtaro.x0.com/massacre_detective_agency.htm
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(´・ω・`)「ブーン。君は、輪廻転生を信じるかい?」
( ^ω^)「急にスピってどうしたんだお」
(´・ω・`)「最近ハマってる作品があってね……。僕が勝手に"カイストシリーズ"と呼んでるんだけど、知ってるかい?」
( ^ω^)「あんまり宗教には詳しくないお」
(´・ω・`)「いや……ごめんて。最初の言葉は忘れてくれ。そしてぜひ、布教させてくれ」
(#^ω^)「やっぱり宗教じゃねーか!」
(´・ω・`)「まぁさっきの輪廻転生の話、あながち的外れでもなくてね」
(;^ω^)(あー、始まっちゃったお)
(´・ω・`)「この物語の舞台は、いくつもの世界が寄り集まった『四千世界』。そこに登場するのが、常識外れの力を持つ者たち——"カイスト"だ。で、そいつらは……死んでも記憶と能力を引き継いだまま”転生”する」
( ^ω^)(はいはい。そういう設定ね。)
(´・ω・`)「輪廻転生が、信じる信じないの話じゃない。この世界じゃ、ただの"事実"なんだ。だから何百億年ものあいだ、同じ顔ぶれが死んでは蘇り、戦い続ける。その途方もない歴史が、たくさんの物語に分かれて綴られてる」
( ゚ω゚)「何百億年!? スケールがぶっ壊れてるお……」
(´・ω・`)「だろう? 興味がわいたんじゃないか?僕が紹介するよ。いちばん古い時代から、順番にね」

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『百億年戦争』 ── 正暦112億年〜212億年/城塞都市エトナと小村ジーの小競り合いから発展した大戦争と、その顛末。

( ^ω^)「百億年戦争? ずいぶん気の長い戦争もあったもんだお」
(´・ω・`)「正確には百億年と、3時間54分だ。開戦は正暦112億3627万8852年、第231日の15時45分」
( ゚ω゚)「なんで秒まで分かるんだお!?」
(´・ω・`)「検証士ルクナスが、百億年ずっと秒単位で記録し続けたからね」
(;^ω^)「戦ってた奴らより、それを書き続けた奴が一番の化け物だお……」
( ^ω^)「というか、そんな長期間なにやってるんだお? 泥仕合にも程があるお」
(´・ω・`)「いや、参加してる連中が『一人の例外もなく異常』なんだ。例えば──」

シリーズの年表上、最も古い時代に位置する一編。舞台は、広大な宇宙の中心にただ一つ巨大な星が浮かぶ世界ラルハット。物語は三人称の年代記体で淡々と綴られ、その記録を担うのが、”検証士の双璧の白い方”こと『図書館長』ルクナスである。
登場する規格外の怪物たち──「一年だけ」の約束で参戦して一億六千万人を斬り伏せ、去り際の素振りの余波で味方すら死なせた『剣神』ネスタ・グラウド。百億年ただ傍観し、参戦の宣言わずか一秒で敵陣一万三千人を即死させた『蜘蛛男』フロウ。攻撃手段も我力防壁も持たぬが「決して殺せぬ」当時五十九億歳の『不死者』グラン。
百億年の果てに、敗北の定義すらできぬはずのフロウが「俺の負けだ」と告げて姿を消した理由とは何だったのか。その最後の一言まで完璧に記録されていながら、彼が何を見て負けを認めたのかは「憶測することは許されていない」と地の文が冷徹に突き放す。
本作の終結を機に、戦力の増強を互いに慎む協定「エトナ締め」と、その警句「エトナの轍を踏むなかれ」が成立する。以後シリーズ全体で幾度も参照される言葉の、これが出所である。
『百億年戦争』https://madtaro.x0.com/10billion_years_war.htm
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『混沌へ』 ── 正暦212億年/百億年戦争終結後、『不死者』グラン・ジーは意外な人物から依頼を受ける。

( ^ω^)「今度は、世界の外に行くのかお?」
(´・ω・`)「世界の外には"混沌"が広がっている。世界ってのは、その混沌の海に浮かぶ小さな筏(いかだ)なんだそうだ」
( ゚ω゚)「じゃあ僕たち、筏の上で暮らしてるってことかお!?」
(´・ω・`)「そういうことだ。で、その海に生身で飛び込む役目を負ったのが、『不死者』グラン・ジー。法則すら効かない深さまで潜っていく」
(;^ω^)「不死身って、そういう無茶をやらせるための体だったのかお……」
(( ^ω^))「ちょっと待つお、法則が効かないって……五感がバグるとかそういうレベルじゃないお!?」
(´・ω・`)「あぁ。文字通り『存在の定義』すら溶ける場所だ。だからこそ、彼にしかできなかった」

『百億年戦争』の直接の続篇。舞台は終戦から約八千年後の正暦212億年、語り手は不死者グラン・ジー本人(一人称「おいら」)である。
“検証士の双璧”のもう一方『裏の目』ガリデュエから届いた、あのフロウすら逃げ出したという厄ネタの依頼──「逃げるのが嫌いだ」という性分ゆえに引き受けたグランは、『究極の黒魔術師』『暗黒塔』ザム・ザドルと出会う。
明かされる四千世界の宇宙論。世界の外に広がるのは無ではなく、あらゆるものが混じり合った"混沌"であり、世界とはその海に浮かぶ小さな筏に過ぎない。依頼とは、その深淵への潜行だった。
我力のすべてを己の維持だけに注ぐグランは、千数百年をかけて百回の潜行を重ねる。怪物の襲撃、そして混沌がもたらす底知れぬ不安と寂しさに耐え、最後の一回で、法則確度〇・〇一九パーセントという深淵の底へと達する。
そこでは文章そのものが崩壊していく──意識が途切れ、言葉が溶け、「おいらはだれだ」という剥き出しの声だけが残る極限状態で、グランは“意思を持った混沌”アロロアと邂逅する。自らが孤独であることにすら気づいていなかった”それ”と何かを交わし、世界の側へと投げ返されたとき、実に四万七千年の歳月が流れていた。
アロロアというシリーズ最大の布石、そしてガリデュエとザム・ザドルという重要人物の初お目見え。完全なる秩序を扱う『急所を一突き』と対をなし、秩序と混沌の両極を見晴らすエピソード。
『混沌へ』https://madtaro.x0.com/dive_to_chaos.htm
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『重い枷』 ── 正暦326億年/『首枷』トウクが歩む暗い裏路地。

( ^ω^)「今度の主役は、どんな武器を使うんだお?」
(´・ω・`)「首枷だ。標的とトウク自身の首を、一本の鎖で繋ぐ」
( ゚ω゚)「自分も繋がれるのかお!? なんでそんな不便なことを」
(´・ω・`)「繋がれてる間、二人はまったく同じ苦痛を分かち合う。どちらかの心が折れるまで、ね」
(;^ω^)相手を罰するのに、自分も同じだけ痛まなきゃいけないのかお……」
(´・ω・`)「なんならこのエピソードだと、標的はもういないのに自分を痛めつけてる」
( ^ω^)「いかれてらー」
(´・ω・`)「兄弟子が蹴り殺して解放するまで、ずっとやってたらしい」
( ^ω^)「いかれてらー(2回目)」

正暦326億年、フリーゾーン・サマルータを舞台とする一編。主役は『首枷』トウク──悪をなすカイストを墜滅させる"滅殺士"であり、ガリデュエの弟子である。
全身を古傷に覆われたこの男は、師から授かった「疑う心」を行動の根とする。自分が本当に正しいのかを、手を下す前に執拗なまでに確かめる男。その得物が、罰する側も等しく痛む拘束具「首枷」である。
一夜にして住民十二万人が全滅した都市バハモーラの惨劇。容疑者は幻術士『血の幻影師』モースラン。トウクは「疑う心」ゆえに、依頼人も、王国も、現場の痕跡も、検証士の力を尽くして幾重にも検証を重ね戦地に立つ。感覚を歪める幻術と、己の神経を灼いて生む激痛との、壮絶な消耗戦の果て、痩せ細った少年の姿となったモースランは微笑み、塵となって散った。
しかし本作の刃は、悪を罰して終わりはしない。「正しさを求めること」と「悪を罰すること」の間の埋めがたい乖離は、トウクを自縄自縛の幻影へと追い詰め、荒野に座したまま動けなくさせてしまう。
その魂が解き放たれるのは、一万年の後、兄弟子『捜し屋』リドックに「蹴り殺される」時である。滅殺士の正義とその重い代償を描いた一編。『光の王』ハイエルマイエルとリドックの初登場作でもあり、検証士の技法と絶対正義執行教団の内実が、ここに開示される。
『重い枷』https://madtaro.x0.com/heavy_yokes.htm
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『骸骨騎士』 ── 正暦397億年/小村一つを守るための大攻防戦。

( ^ω^)「今度の主役、骸骨騎士っていうくらいだから、さぞ立派な剣を持ってるんだお?」
(´・ω・`)「いや、得物は刃のついてない鉄板の大鎌だよ。『武器は安物を使え』という格言があるんだ」
( ゚ω゚)「刃がない鎌!? それで戦えるのかお!?」
(`・ω・´)「腕が立てば、得物の性能など関係ない。それがこの男の流儀だ」
('A`)「顔は髑髏でな……呪いで骸骨になってるんだが、掛けた術者はとっくに墜滅してる。今もその顔が治らないのは、そいつ自身の後悔のせいらしい」
(;^ω^)「重い理由すぎるお……で、その骸骨騎士は、何をする話なんだお?」
(´・ω・`)「最初は、村の少女を守るっていう小さな依頼だった。それが気づけば、帝国を相手取る大戦争になっていく」
( ^ω^)「村ひとつの護衛が、なんで帝国と戦争に!?」
('A`)「フリーゾーンだからな。腕自慢のカイストが我も我もと群がって、話がどんどんデカくなる」
(`・ω・´)「味方も濃い。片腕と片足を落とされたディンゴが、義手と義足を剣に換装して『利き腕は四本ある』と嘯(うそぶ)く」
(;^ω^)「なんで嬉しそうなんだお、その人……」
('A`)「キルマには、忘れられない過去がある。百三十八万年前、同じ名前の少女を守れずに死なせた。『本当に守りたいのなら、離さないことだ』──その言葉を、ずっと引きずってるぞ」
(´・ω・`)「今度こそ、守れるか。同じ因縁を、もう一度なぞる話でもあるね」
( ^ω^)「軽い護衛のはずが、そんな深いところまで繋がってたのかお……」
( ^ω^)「……で、なんか知らんうちに混ざってる奴ら、いるな?」
(*'A`)「だって語りたいじゃん……初めてカイスト世界の全容が紹介された作品だぞ。思い入れがあるんだよ……」
(`・ω・´)「あぁ。初めてカイストシリーズに触れるなら、このエピソードがいいだろうな」

正暦397億年、大地がメビウスの輪のようにねじれて浮かぶ世界サマルータを舞台とする、全七章の一編。主役は『スケルトン・ナイト』キルマ──髑髏の顔に黒い仮面をつけ、刃のない大鎌を振るうBクラスの戦士。
村の少女ルナンを守る小さな依頼は、フリーゾーン特有の混沌によって、いつしか神聖帝国を相手取る大戦争へと化していく。
『白銀将軍』ディンゴとの死闘、感情を物質化して蒐集する丞相イスメニアス──そして戦場に降り立つ、神の領域Aクラストップ『八つ裂き王』フィロス。総力を結集し、「一歩も動かない」と約したフィロスの首を刎ねる最終決戦の熱量は、シリーズ屈指のカタルシスを誇る。
しかし、本作の底流にあるのは「百三十八万年前の因縁の反復」だ。かつて守れなかった少女。オアシスで出会った『彼』の言葉「本当に守りたいのなら、離さないことだ」という棘。いま目の前にいる少女を助けたところで、過去の少女が救われるわけではない。それを知りながらも、キルマは全力を尽くす。同じ轍を、もう一度踏む──その不器用な反復にこそ、この一編の美しさがある。
以後幾度も現れる重要キャラや、強念曲理、空間座標確保といった基本概念も説明される、まさにシリーズの「背骨」にして最高の入門作。
『骸骨騎士』https://madtaro.x0.com/skeleton_knight.htm
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『挑む者』 ── 正暦397億年/『八つ裂き王』フィロスはアースト山を登る。

( ^ω^)「今度は、前に出てきた白銀将軍ディンゴが主役かお?」
(´・ω・`)「主役というか……この話、殺人狂フィロスの視点で進むんだ。で、そのフィロスに、Aクラスに昇格したディンゴが一対一の決闘を挑む」
( ^ω^)「あれ? ディンゴって前に一回フィロス倒してなかったかお?」
(`・ω・´)「あれは仲間総出のハンデ戦だ。ディンゴはあんなものを勝ちとは認めなかった。だから六百九十万年かけて自力でAクラスになり、きっちり白黒つけに来た」
( ^ω^)「六百九十万年…… 律儀を通り越して、もう意味わからんお」
(´・ω・`)「Aクラスに昇格する期間としては、結構早い方なんだけどね」
('A`)「もっと分からんのは、挑まれてる殺人狂のほうだ。無差別に殺しまくる化け物なのに……好敵手に認められ、追われることでしか、生きられない男なんだ」
( ^ω^)「え、いちばん強い殺人鬼が、いちばん寂しいやつなのかお……?」
(´・ω・`)「『そなたが認めてくれるからこそ、我は生きられる』——そういう男だ。だから決着の後も、フィロスはこう言う。『追ってくるが良い』とね」
('A`)「ディンゴも、死にぎわに笑って頼むんだ。『ずっと、強いままでいてくれ……俺が、倒すまで……な』」
(;^ω^)「殺し合いなのに、なんでこんなに……いい話っぽくなってるんだお……?」
(´・ω・`)「美談と思うなよ。フィロスは正真正銘の無差別殺戮者だ。……そんな怪物ですら、たった一度だけ心底から"負け"を味わった記憶が、この話には刻まれている」

正暦397億年、円い大地がほぼ平らに広がる世界スカーダを舞台とする、全四章の一編。前作『骸骨騎士』の六百九十万年後、視点はなんと——無差別殺戮者『八つ裂き王』フィロスその人に据えられている。かつてディンゴは、仲間総出のハンデ戦でフィロスを一度は下した。だがその男は、あんなものを勝ちとは認めなかった。六百九十万年をかけて自力でAクラスへと這い上がり、Aクラス同士の伝統の決闘場アースト山の頂——標高五十七万キロの天辺で、たった一人、正真正銘の一対一を挑みに来たのである。
山頂には、賭けるもののない第三者『蜘蛛男』フロウが先客として佇み、口笛を吹きながら決闘を見届け(?)る。ディンゴはセオリーを無視した突進でフィロスの虚を衝くが——満面の笑みを死に顔に残して斃れる。本作の異様な熱は、勝った側にこそある。無差別に命を刈り続けるこの怪物は、好敵手に認められ、追われることによってしか生きられぬ男なのだ。ディンゴの「ずっと強いままでいてくれ、俺が倒すまで」という末期の願いに、フィロスは静かに「追ってくるが良い」と応える。
この一編は、フィロスの視点を借りて、彼が味わった完全な敗北をも刻む。正暦三百九十五億年、わずか五日で十四の世界を消し去った『彼』に、フィロスは二秒半で腕を引きちぎられ、頭から喰らわれた。その時『彼』は、泣き喚きながら感謝し、全力で"求めていた"——フィロスはそう確信している。敗北の悔しさと、殺戮の道を歩んできた甲斐があったという歓喜と。Aクラス認定の条件やゴールデン・マークの概念が詳らかにされる一編でもあり、四千世界の頂に立つ『彼』の輪郭が、また一段と濃くなる。殺し合いの果てにこそ通い合う"何か"を描いた、酷薄にして忘れがたい記録である。
『挑む者』https://madtaro.x0.com/challenger.htm
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『同じ名の宿敵』 ── 正暦396億年〜/名前がかぶってしまった二人のカイストの運命。

( ^ω^)「同じ名の宿敵……ライバルものかお? 名前が同じって、双子とかかお?」
(´・ω・`)「いや、赤の他人だ。ただカイストにとって、名前は"存在証明そのもの"でね。同じ名前の奴がいるのは、絶対に許せないんだ」
( ^ω^)「で、どうするんだお? 話し合いかお?」
(`・ω・´)「片方が屈服するまで、何百回でも殺し合う。それが二人の選んだ決着法だ」
( ^ω^)「名前かぶりを解決するのに、何百回も殺し合うのかお? 改名すれば済むお!!」
('A`)「その改名を、二人とも死んでも呑まなかったのさ。……しかもこの二人、性格が正反対でな。片方は罠と結界で搦め手ばかりの策士。もう片方は、金槌ひと振りだけの脳筋だ」
( ^ω^)「わかりやすい対照だお!」
( ・∀・)「その脳筋、メールを送られても返信に三年かかった上に、返ってきた一行が『めーるのだしかた』だぞ」
(#^ω^)「戦いの前に、文明に負けてるお!!」
( ^ω^)「……で……また一人増えてる……と」
(´・ω・`)「最初は策士が九十三連勝と圧倒する。……ところがこの脳筋、殺されても殺されても闘志が衰えない。少しずつ、手のつけられない怪物に育っていくんだ」
(;^ω^)「じわじわ来るタイプの怖さだお……」
(´・ω・`)「気づけば勝敗は完全に五分。しかも殺し合ってるうちに、どっちも相手なしじゃいられなくなっていく。……この話、宿敵の顔をした"相棒"の物語なんだ」

正暦396億年から遥か後年まで、二百億年を優に超えて続く因縁を描く一編。『骸骨騎士』の百三十八万年前回想に一瞬だけ現れた「ダブル・ツェンク」——その二人を主役に据えた作である。カイストにとって、名前は"存在証明そのもの"。同じ名を持つ者は、絶対に許せない。ゆえに『杭打ち』『技』のツェンクと『力のツェンク』は、どちらかが屈服するまで殺し合う道を選ぶ。策を弄し結界で搦め手を仕掛ける陰険な技巧派と、金槌のただ一振りに全てを賭け、駆け引きなど一切持たぬ愚直な脳筋。これほど正反対の二人が、名を捨てぬまま、永劫の殺し合いへと踏み込んでいく。
初めのうちは、周到な技のツェンクが九十三連勝と圧倒した。だが、殺されても殺されても闘志の萎えぬ相手は、やがて手のつけられぬ怪物へと育っていく。形勢は逆転し、拮抗し——ボロボロになった技のツェンクに、力のツェンクは「今のお前に勝っても、嬉しくないな」と告げて背を向ける。誇り高きがゆえの無防備を、技のツェンクは襲えない。そうして数百年、幾千戦を重ねるうちに、二人は互いに相手なしでは張り合いを失うようになり、いつしか厄介事を共に片づける"共闘"の間柄となっていた。「こいつがいなかったら、俺はここまで来られなかっただろう」——技のツェンクは、ついにそう認めるに至る。
遠い未来、双方ゴールデン・マークに達した二人の通算成績は、千三百六十七万勝・同敗・八十八万引き分けという完全な均衡。「美女だったら、脳天をかち割りにくくなるな」などと珍しく穏やかに語らう最中、魔獣の群れ討伐の話が持ち込まれると、二人は言葉の終わる前に同時に立ち上がり、「「俺が行く」」と睨み合う——そこで物語は静かに閉じる。名前という存在の証を賭けた争いが、いつしか誰よりも深い絆へと変わっていく。カイストにとって名とは何かを描き切り、『骸骨騎士』の断片を豊かに補完する、宿敵の顔をした相棒の、可笑しくも温かな記録である。
『同じ名の宿敵』https://madtaro.x0.com/the_same_name.htm
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『急所を一突き』 ── 正暦403億年/『針一本』裏鋭の旅路。

( ^ω^)「今度の主役は、針一本! なんかあんまり強くなさそうな二つ名だお……」
(´・ω・`)「いや強いよ。しかも意味不明寄りな強さだ。ただし武器は文字どおり針が一本きり。相手の"急所"を見抜いて、そこをただ一突きにするだけのカイストだ」
( ^ω^)「一突きだけ!? 潔いお! ……で、その急所ってのは、心臓とか首とかかお?」
(´・ω・`)「それがね。この裏鋭ってカイストには、急所が見えるんだ。人だろうが、建物だろうが、国だろうが、世界だろうが——あらゆるものの"ここを突けば崩れる"って一点が、光って見える」
( ゚ω゚)「世界にも急所があるのかお!?」
('A`)「食い物にもあるぞ。『肉野菜炒めセットは死んだ』」
(;^ω^)「あぁ……またいかれたカイストが……」
(`・ω・´)「探求は本気だ。人の急所に始まり、巨大魔獣、星ひとつ、ついには『四千世界そのものの急所はどこか』という問いにまで行き着く」
( ^ω^)「肉野菜炒めから宇宙の真理まで、振れ幅がすごいお……」
(´・ω・`)「その旅路の果てに辿り着くのが、完全なる秩序の世界"ラ・ルーク"。手を触れれば、あまりの秩序に肉体が崩れ落ちる場所だ」
( ^ω^)「秩序で死ぬって、どういうことだお……?」
(´・ω・`)「『混沌へ』でグランが潜った混沌の、ちょうど対極さ。この話は、あの一編と背中合わせになってる。……そしてこのエピソードで、裏鋭が最後に急所を探すのが、どうしても殺せない一人の男なんだ」

正暦403億年前後、『混沌へ』と対をなす一編。主役は『針一本』——文字どおり九センチほどの針一本だけを得物とする、Aクラスのカイスト裏鋭(リエイ)である。彼の目には、あらゆるものの"急所"が光って見える。人でも、建物でも、魔獣でも、国家でも、世界そのものでも——「ここを突けば崩れ落ちる」という一点を見抜き、そこをただ一突きにして事を終わらせる。「地味で、さりげなく、始まった時には終わっている」殺しを至上とするこの男の関心は、他の何にもなく、ただ究極の急所を見出すこと、その一事だけに注がれている。
人の急所から巨大魔獣の急所へ、さらには星ひとつの急所へ——探求が果てなく広がる中、灰色の霧に全身を包んだ謎の人物スタン・ナバルが裏鋭の前に現れる。その男が求めるのは、個々の世界ではなく「四千世界そのものの急所」。依頼を受けた裏鋭は、四千世界の中心にあるという完全なる秩序の世界ラ・ルークへと赴く。そこにあったのは、互いに逆回転する二つの巨大な正四面体。あまりに完璧な秩序が我力防壁を越えて肉体を崩壊させる——「完璧な秩序に、人は耐えられない。魂と肉体の活動は、多少なりとも混沌を孕んでいるから」。かつてグラン・ジーが潜った真なる混沌と、この完全なる秩序。その両極のあいだにこそ、人の生きられる四千世界がある。本作が『混沌へ』と対をなす所以である。
やがて裏鋭は文明管理委員会に襲われ、脱出不能の永遠の牢獄「無限牢」へと送られる——が、己を縛る拘束具さえも一つの構造として見抜き、その急所を突いて脱する。この過程で明かされるのが、スタン・ナバルこそ無限牢の開発者だったという事実だ。そして物語は、裏鋭が急所に憑かれた原体験——少年の日に見た、あまりに鮮やかな一突きの暗殺——へと遡り、最後の急所探しへ至る。それは、全身が急所でありながら、どうしても殺せぬ一人の男。『彼』への、七度目の挑戦である。裏鋭は七度目も敗れるが、死に際にもなお、長い道の先を見つめていた。スタン・ナバルの不気味な言葉、無限牢と文明管理委員会の内実、「魂の座」の初めての定義、そして孤独に狂った『彼』を慰めるべく生き残り七人が結成した「オアシス会」——後々効いてくる駒が惜しみなく盤上に並べられた、四千世界の骨組みを秩序の側から照らし出す、静かにして壮大な一編である。
『急所を一突き』https://madtaro.x0.com/pierce_the_vital_point.htm
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『借時百万年』 ── 正暦403億年/今すぐに力が必要な者の選択肢。

( ^ω^)「借時百万年……お金じゃなくて、時間を借りるのかお?」
(´・ω・`)「そうだよ。ある村の少年が、旅の剣士に『敵軍を追い払ってくれ』と頼む。剣士は仕込み杖一本で、一万二千五百二十一人の軍勢を、たった十七分で殲滅してみせた」
(*^ω^)「つっっっよ! で、そのお代が"時間"って、どういうことだお?」
(´・ω・`)「剣士は言うんだ。『土壇場で隠れた才能に目覚める、なんて都合のいいことは現実には起こらない。強くなるには地道な修行の時間が要る。今からじゃ間に合わない。だから、その時間を貸してやる』とね」
( ^ω^)「かっこいいこと言うお……で、どうやって返すんだお?」
(`・ω・´)「自分も同じだけ強くなり、かつての自分と同じ苦境にいる誰かを助ける。その繰り返しが、借りた時間の返済になる。確実にこなすなら、百万年はかかる」
(;^ω^)「借金の取り立てが百万年後!? カイストの時間感覚、頭がバグるお……」
('A`)「しかもこの話、地の文が一切ない。全部、酒場の会話だけで進むんだ。……で、少年は百万年後、きっちり借りを返しに来る。『条件に合う戦いを、三千百七十二回。これで返せましたか』とな」
( ^ω^)「三千百七十二回!? 律儀すぎるお……で、剣士はなんて言ったんだお?」
(´・ω・`)「……テーブルに乗って、裸踊りを始める」
('A`)「全開のちんこプロペラだな」
( ^ω^)「ご立派ァ! 」
(´・ω・`)「それだけ、嬉しかったのさ。カイストの道は、報われることなんて滅多にない。……この話は、その"十万に一つ"の重さを描いてるんだ」

正暦403億年代、ファタズークという惑星の一軒の酒場だけで完結する、掌編である。全篇が会話だけで綴られる——シリーズでも稀な構成。工業文明期のある村で、少年クムス・マトーは、宿に泊まっていた旅の剣士に、迫りくる敵軍の撃退を頼む。剣士は仕込み杖一本で、一万二千五百二十一人の軍勢をわずか十七分で殲滅してみせた。だがその報酬は、風変わりなものだった——「借時」。金ではなく、"時間"を貸す、というのである。
「土壇場で隠れた才能に目覚める、などという都合のいいことは現実には起こらない。強くなるには、地道な修行の時間が要る」。今から鍛えても敵には間に合わない。ならば、本来クムスが積み上げるべきだった時間を、先に貸してやる——返済は、自らも同じだけ強くなり、かつての自分と同じ苦境にある者を助けること。そうして百万年後、クムスは酒場に現れ、報告する。「条件に合う戦いを、三千百七十二回。これで返せましたか」。百万年、地道に積み上げ続けた末の一言だった。取り立てなど来ぬのに、借りを返しに来た男。そして剣士もまた、百万年ものあいだ、この日を待っていた。堪えきれず大爆笑した剣士は、店中に酒を奢り、テーブルの上で裸踊りを始める。
「カイストをやってても、報われることは滅多にない。だが、報われた時は、その時は本当に、嬉しいんだよなあ」——この一言に、本作のすべてが詰まっている。都合のよい"覚醒"を退け、カイストの道の本質そのものを描いた一編。借りた時間が返ってくるのは十万回に一回あるかないか、という剣士の述懐が、一つの"報われ"の重みを際立たせる。カイストへの転生の難関も、無限牢建設以降の委員会の厳格化も、この短い会話の中でさりげなく補われる。派手な戦いも大いなる謎もない。ただ、カイストとして生きるとはどういうことかを、静かに、可笑しく、温かく綴った作品である。
「借時百万年」https://madtaro.x0.com/a_debt_of_1_million_years.htm
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『敗因』 ── 正暦529億年/『八つ裂き王』フィロスは訳の分からない負け方をする。

( ゚ω゚)「敗因……あの殺人狂フィロスが、負ける話かお? いったい誰に!?」
(´・ω・`)「幼女」
( ^ω^)「……は?」
(´・ω・`)「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」
( ^ω^)「おい」
(´・ω・`)「殺し合いじゃない。湖のほとりで寝てたフィロスに、その子が近づいて、マントの裾をきゅっと掴んだ。……フィロスは、その接近に二度も気づけなかった」
( ^ω^)「なんでだお? 油断してたのかお?」
('A`)「逆だ。二百七十五億年も殺し続けた結果、フィロスの感覚は"殺気"や"恐怖"にしか反応しなくなってた。……なのにその子は、恐怖のかけらもなく寄ってきた。だから、見えなかったのさ」
(( ^ω^))「純粋すぎて、レーダーに映らなかったってことかお……こわ……」
(´・ω・`)「しかもその子、フィロスを"神様"だと思い込んでてね。『大きくて赤い、変なもの』を探してたら、ちょうどいたと」
( ^ω^)「……で、神様扱いされたフィロスはどうしたんだお?」
( ・∀・)「畑を耕したぞ」
( ^ω^)「何かの隠語じゃないお……?」
('A`)「土を改良して、水路を引き直して、燻製まで作った。フィロスは頑張ったんだ」
( ;ω;)「健気すぎて、逆に泣けてくるお……」
(´・ω・`)「そして二百年後、フィロスは自分が"負けた"理由を、一人の検証士に診てもらう。……『裏の目』ガリデュエ登場だ」

 正暦529億年、宇宙型のフリーゾーン・ミシュタムを舞台とする、全三章の一編。『骸骨騎士』『挑む者』と続いてきた、殺戮者フィロスの視点による三部作の完結篇である。殲滅機関との死闘に勝利し、その余韻のまま真空の宇宙を漂っていたフィロスは、僻地の惑星エトマフの湖畔に流れ着く。まどろむ彼のマントの裾を、四、五歳の幼女ロロカが掴んだ——だが『八つ裂き王』は、その接近に二度も気づけなかった。恐怖も警戒も知らぬこの一般人の少女に、フィロスは戦慄する。「我は、負けたのだ」と。
 少女はフィロスのことを、探し求めていた「大きくて赤い神様」だと信じていた。ならばと、その願い——冷害に苦しむ村の飢えを救うこと——を叶えるべく、フィロスは畑を耕し、水路を引き、燻製を作り、老人の腫瘍まで執刀する。「フィロスは頑張った」と、地の文は淡々と記す。だが「我は負けた」という確信の正体だけは、二百二十四年のあいだ、彼を惑わせ続けた。フィロスが頼ったのは、検証士『裏の目』ガリデュエ。湖畔の痕跡をわずか十秒で読み切ったガリデュエは、その敗因を告げる——二百七十五億年もの殺戮の果てに、フィロスの感覚は「殺気」と「恐怖」を目印に獲物を探すよう、歪んでいた。「混じりけのない、純粋な期待と信頼」。それこそが、この殺戮神の完全な死角だったのだ。
 痕跡を消すかと問うガリデュエに、フィロスは首を振る。それよりも知りたいのは、あの少女のその後だった。ロロカは結婚して六人の子と三十八人の孫に恵まれ、九十三歳の大往生を遂げた——「大きな赤い神様」の祠に、生きているあいだ毎日供え物をしながら。「そうか。ならば良い」。胸の内に染み渡る、悪くない感覚。無差別に命を刈り続けてきたこの男は、その日、王都の将軍ただ一人を斬るに留め、静かに星を去った。フィロス視点三部作を締めくくると同時に、痕跡を独占する『裏の目』ガリデュエと、歴史を公に記す『図書館長』ルクナス——検証士の双璧の対照が描かれ、後の『その席 その一言』へ繋がる殲滅機関の名も明かされる。神の領域の殺戮者が、幼子の純粋な信頼ただ一つに敗れる。とにかくフィロスは頑張った。
『敗因』https://madtaro.x0.com/the_cause_of_defeat.htm
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『その席 その一言』 ── 正暦547億年/有名なあの席に勝手に座った男二人の末路。

( ^ω^)「その席 その一言……なんだか渋いタイトルだお。席がそんなに大事なのかお?」
(´・ω・`)「サマルータには『ディンゴ亭』って酒場が無数にあってね。『骸骨騎士』でも出てきたでしょ。あのディンゴだよ。ディンゴ専用の席が、どの店にもある」
( ^ω^)「へえ。で、その席に座るとどうなるんだお?」
(`・ω・´)「無断で座れば、それは『ディンゴに取って代わる』という宣戦布告と見なされる。」
( ^ω^)「椅子に座っただけで宣戦布告!? 厳しすぎるお!!」
('A`)「しかも座った男の一人は、ディンゴの存在すら知らなかった。七万年ずっと一人で修行してて、ルールなんて知る由もなかったのさ」
( ^ω^)「事故で英雄に喧嘩を売る形になったのかお……」
(´・ω・`)「さらに余計な一言まで付け加えちゃったからねぇ……」
(;^ω^)「言霊がすぎるお……」
(´・ω・`;)「僕らも気を付けようね」



 正暦547億年から八百年余にわたる、サマルータを舞台とした群像劇。サマルータには『ディンゴ亭』を名乗る酒場が無数にあり、どの店にも英雄ディンゴのための専用席が据えられている。そこへ、ゴスラムとシュモンという二人のBクラスが、無造作に腰を下ろす。ディンゴ団の下っ端弟子ニス・アルタスを斬り捨てた二人に、検証士は静かに告げる。「専用席に座ったのですから、『ディンゴに取って代わってやる』という意思表示ですよね」
 席に座った二人の"その後"は、正反対だった。七万年をほぼ独りで修行し、ディンゴの存在すら知らずにいたゴスラムは、頭を下げることができた。かたや五十二億年を生きたシュモンは、理解しながらも謝れなかった——「腰が引けたら終わり」という虚栄が、それを許さなかった。彼は、上を目指さず弱点ばかり補い続けて凡庸な強者に落ち着く「ソムカのジレンマ」を、そのまま体現した男でもある。前哨戦から逃げ出したシュモンは、強者としか殺し合わぬ八人の傭兵集団「殲滅機関」に、ディンゴ団の皆殺しを依頼する。だが「ディンゴを貶めることは、彼と戦い続けてきた我らをも貶めることだ」と断られ、亜空間の境界を出た瞬間、『地獄の召喚師』ゾーンに捕らえられて墜滅した。
 残されたゴスラムは、「始めたことは最後までやる」と単独で戦い続ける。負けては転生し、副官『毒海月』アリエの「続けますか」に「続ける」と応え続けること八百十六年、九十九戦。そして迎えた最終戦——百十二万人が入り乱れるバトルロワイアルに、『八つ裂き王』フィロスまでもが乱入する乱戦の果て、ついに『鋼』ディンゴ本人が姿を現す。傷だらけの指先でゴスラムの肩に触れるだけで、完敗を悟らせる圧倒的な格。「強くなりたいんだろ。俺の弟子になりなよ」。酒場のテーブルには後日、シュモンの名の横に「墜滅」が、ゴスラムの名の横に「弟子入り」が書き加えられた。一つの”席”と幾つもの"一言"で描き切った本作は、殲滅機関全八名の正式な初登場作でもある。
『その席 その一言』https://madtaro.x0.com/that_seat_and_that_word.htm
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『原点』 ── 正暦548億年/一般人がAクラスに勝つチャンスはいかほどか。そしてカイストの原点。

( ^ω^)「原点……これまでと毛色が違うタイトルだお。今度の主役は誰なんだお?」
(´・ω・`)「一般人だよ。カイストですらない、ただの狩人ハルーラン。許婚を殺されて、その仇を討ちに行く話だ」
( ^ω^)「相手は?」
(´・ω・`)「サマルータ唯一のAクラス、白面のリギス。神の領域の化け物だ」
( ゚ω゚)「ただの狩人が、神の領域に挑むのかお!? 勝てるわけないお!!」
(`・ω・´)「そこに、この世界の妙がある。『カイエンス・パラドックス』——たった一つの命を捨てる覚悟で向かってくる一般人の勇気に、時折、Aクラスですら金縛りにあうんだ」
( ^ω^)「勇気で、神が固まる……?」
('A`)「ああ。カイストは死んでも転生する。だが一般人は、死んだら終わりだ。その"全部を賭ける勇気"だけは、カイストにも手が届かない。だから連中は、一般人に敬意を払うのさ」
(´・ω・`)「そしてもう一つの軸が、題にもなってる"原点"だ。……カイストはなぜ、何億年も強さを求め続けるのか。その最初の理由——たいていは『弱かったせいで、大切な誰かを救えなかった』という理不尽への怒りだ。が、長い時の中で色褪せていく」
( ^ω^)「その"原点"を、この狩人が呼び覚ますのかお?」
(´・ω・`)「ああ。決死の狩人に助太刀した寡黙なカイストは、その姿に自分の原点を思い出し、『もう充分に貰った』と微笑んで死んでいく。……そして仇のAクラスすら、最期に"あること"をして果てるんだ」
( ^ω^)「神の領域の化け物が、何をするんだお?」
(´・ω・`)「謝るのさ。『すまなかった』と」

 正暦548億年、サマルータを舞台とする一編。これまでと決定的に異なるのは、その視点だ——語り手は、カイストですらない一人の一般人、狩人ハルーランである。ある日、彼の許婚エミルが、サマルータ唯一のAクラス『白面のリギス』に、よりにもよって"人違い"で惨殺される。神の領域の化け物を相手に、ただの狩人が仇討ちを決意する——「死ぬことになるぞ」と言われても、「構わない」と。カイストとは何か、その本質を、初めて弱き者の目線から描く一編である。
 バスキトの『ディンゴ亭』で依頼を掲げても、Aクラスが相手とあっては誰も受けない。路銀が尽きたその日、寡黙なBクラスのカイスト、ナラク・ショーゼンが声をかける。「勝てる見込みは万に一つもない」「死ぬかも知れない」——正直にそう告げた上で、助太刀を申し出た。彼らが賭けたのは、「カイエンス・パラドックス」だった。たった一つの命を捨てる覚悟で向かってくる一般人の勇気に、時としてAクラスすら金縛りにあう。その一瞬の隙を、隠れた別者が衝く——ハルーランが名乗りを上げて突進し、リギスが凍りついた刹那、ナラクが背後から斬り込んだ。相討ちの果て、Aクラスの怪物は「すまなかった。あれは、我の勘違いであった」と謝罪して崩れ落ち、ナラクは「もう充分に……貰った……」と微笑んで死んでいった。
 なぜ神の領域のカイストが謝ったのか。なぜ寡黙な助っ人は満ち足りて死ねたのか。その答えは二十四年後、副村長となったハルーランが偶然出会った『鋼のディンゴ』の口から、静かに語られる。カイストは長い。何かを志して強さを求め始めるが、幾億年の記憶に埋もれ、その最初の理由=「原点」は色褪せていく。「大概は、弱かったばかりに大切な者を救えなかった、その理不尽への怒り」。ナラクは、決死のハルーランの姿に、忘れかけていた己の原点を見出したのだ。カイストが一般人に敬意を払う理由——「勇気においては、俺達よりお前さん達の方が上だからな」。仇を討ってなお、満足も晴れもなく、エミルを喪ったハルーランは、生涯を独りで通した。カイエンス・パラドックスと原点、この二つの核を弱き者の視点から鮮やかに描いた本作は、シリーズを一般人の目から知るための最良の入り口であり、神の領域すら凍らせた一人の人間の勇気を刻んだ、静かで、哀しく、忘れがたい記録である。
『原点』https://madtaro.x0.com/the_beginning.htm
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『遺跡の見える町で』 ── 正暦554億年/稀によくある奇跡

( ^ω^)「今度の話は……酒場のサンドバッグショー? 殴られ役の大男が出てくるのかお?」
(´・ω・`)「ああ。何発殴られても倒れない、頭に深い傷痕のある大男トーカ。頭を強く痛めて、知能に障害を負ってる。……その正体が、あの英雄ディンゴだ」
( ゚ω゚)「ゴールデン・マークの大英雄が、なんで酒場の見世物にされてるんだお!?」
('A`)「前世の恋人に、斧で頭をカチ割られたのさ。防御不能の一撃を約束する、神工レオバルドー製の斧でな」
( ^ω^)「愛憎のもつれ、ってやつかお……」
(´・ω・`)「逆だよ。彼女は……愛してると、言えなかったんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「べ、別にアンタたちの説明が回りくどいから出てきたわけじゃないんだからね。……いい? 貧民街育ちの盗賊エリカが、雇った用心棒に本気で惚れたの。でも身分が違いすぎて、想いを告げる代わりに——別れ際、その頭に斧を振り下ろしたのよ」
(;^ω^)「まーた増えた……しかも余計に分からんくなったお」
(´・ω・`)「そして本作の主役は、町長の一人娘ルシア。遺跡で強烈なデジャヴに襲われて、思い出すんだ。……自分の前世がエリカで、あの酒場のサンドバッグが、自分が手にかけた男だと」
( ^ω^)「千六百年越しに、加害者と被害者が再会したのかお……」
('A`)「一般人が転生して再び巡り会う確率は、十億分の一未満だそうだ。……で、彼女がどうしたかというと、泣きながら抱きしめて、結婚した」
( ^ω^)「自分が壊した相手を、今度は一生かけて支えるのかお……」
ξ*゚⊿゚)ξ「……ひとつだけ、言っておくわ。ゴールデン・マークのディンゴが、あの斧を避けられなかったはずがないの。避けられたのに、避けなかった。……その理由は、野暮だから言わないんだって」
 
正暦554億年、現代的な文明の名も明かされぬ惑星の町を舞台とする中編。町長の一人娘ルシアは酒場の見世物に、奇妙な胸のざわめきを覚える。見世物にされている男のこめかみには、斧がめり込んだままのような深い傷の溝。やがて訪ねてきた検証士ソツメに誘われ、クレイラム遺跡へ足を踏み入れたルシアを、猛烈なデジャヴが襲う。差し込まれる前世の記憶——財宝迷宮の探索のため雇った、大きな背中のカイスト。「あなた、カイストでしょ。強いの」「ああ、割と強いな」——帝国軍百万を蹴散らし、群がる競合を薙ぎ払う、その圧倒的な輝きに、エリカは恋に落ちた。
 だが「自分には釣り合わない」という怖れが、その一言を封じた。十七日の冒険が終わり、財宝を前に別れの時が来る。エリカは斧を手に取り、「ディンゴ」と名を呼んで振り向かせた彼の頭に、渾身の力で打ち下ろした。倒れた彼の口元には、いつもの微笑があった。エリカは、彼を追うように自ら命を絶った。玄室に並ぶ二つのミイラの前で、ソツメは告げる。墳墓を保存させたのは、「奇跡が見たい」というオアシス会幹部の一言だったと。そしてゴールデン・マークのディンゴに、あの斧が避けられなかったはずはない——避けられたのに、避けなかった。その理由の説明は「野暮」として、静かに省かれる。遺跡を出たルシアは酒場へ駆け、頭頂の深い溝——己の前世の罪の証を確かめ、「ごめんなさい。愛してる。ごめんなさい」と泣きながら抱きしめた。訳も分からぬまま、大きな手が、その頭を撫でた。
 一般人同士が転生の後に巡り会い、結ばれる確率は十億分の一に満たぬという——結婚式に「たまたま暇だったから」と参列した、ディンゴの旧友『大剃刀』シド・カイレスがそう語る。恨みなど「恥ずかし過ぎて墜滅するレベル」と言い切るカイストの死生観と、「婚約者だった一般人の女を五十二億年も探し続けている奴がいる」という、静かな伏線を残して。かくしてトーカ・アリストとなったディンゴは、庭を散歩し動物に慕われる人畜無害な旦那様として、ルシアに養われて暮らす。終盤、彼女に銃口が向けられた刹那にだけ、「やめとけ」の一言とともに英雄の片鱗が閃くが——それが覚醒か、演技の継続かは、ルシアも問わぬまま物語は閉じる。
『遺跡の見える町で』https://madtaro.x0.com/while_watching_ruins.htm
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『目的のない凶器』 ── 正暦607億年/カイストの一つの典型例

( ゚ω゚)「今度の舞台は……現代の日本!? いきなり身近になったお」
(´・ω・`)「正暦607億年は、西暦でいうと1999年前後の地球にあたる。まぁ、区切りが億年単位だから、だいたいそれくらいって認識で構わないよ。」
(´・ω・`)「ヤクザが牛耳る地方都市に、一人のホームレス風の男が流れ着くところから話は始まる」
( ^ω^)「ホームレス……全財産十円玉一枚って書いてあるお。カイストって、もっと景気のいい連中じゃなかったのかお?」
('A`)「その男の正体は、キルマだ。……『骸骨騎士』のあのキルマが、二百十億年生きた末の姿さ」
(;^ω^)「あの髑髏の騎士かお。なんでそんな落ちぶれて……」
(´・ω・`)「目的を、見失ったんだ。本人がこう言う。『俺は、目的もなく、ただ彷徨うだけの凶器だ。いずれこのまま朽ちていく、錆びた凶器だ』——リタイア寸前のカイストの姿だよ」
( ^ω^)「二百十億年も強くなり続けて、その果てが虚無なのかお……」
(´・ω・`)「そこに、女子大生の『助けて』の一声が届く。ヤクザに絡まれた狭間香織。キルマは瞬時に助け、契約を結ぶ——期間は一年、彼女の命を守ること」
( ^ω^)「報酬は? 全財産十円の男が、何を要求するんだお?」
('A`)「『一言でいい、君の口から感謝の言葉が欲しい』……それだけだ」
( ^ω^)「……そういえば『骸骨騎士』の時もそんな感じだったお」
(`・ω・´)「そして敵方にも、一人のカイストがいる。組の用心棒『蟻』エン・ジハル——四億二千万年、ただ強者を求め続けてきた男だ。キルマの名を聞いた瞬間、歓喜する」
(*^ω^)「守る凶器と、挑む凶器の一騎打ちかお……!」
(´・ω・`)「ああ。深夜零時、直径百メートルの大地の渦の上でね。……そしてこの死闘の最中に、二人がカイストになった"原点"が、静かに明かされる」

 正暦607億年——西暦1999年前後の地球、ヤクザ『鬼道組』が支配する地方都市を舞台とする全七節。繁華街に流れ着いた全財産十円のホームレス風の男、その正体は『スケルトン・ナイト』キルマである。『骸骨騎士』から二百十億年。剣は捨て、素手となり、「目的もなく、ただ彷徨うだけの錆びた凶器」と自嘲する、リタイア寸前の姿だ。目的を見失った者、存在意義に疑問を持った者は、数百億年の修行を積んでいてもあっけなく消えていく——カイストという生き方の、その黄昏が滲む。そこへ届いたのが、ヤクザに囲まれた女子大生・狭間香織の「助けて」の一声だった。契約は一年間の護衛。報酬は「一言でいい、君の口から感謝の言葉が欲しい」。
 一方、鬼道組には用心棒として一人のカイストが飼われていた。『蟻』エン・ジハル——白いスーツに異様に大きな目、大地を渦にして操る四億二千万才。「早く強くなりたい」とだけ願い続けるこの男は、キルマの名を聞いた瞬間、歓喜に打ち震える。組長の裏切りも百人の組員も数秒で片づけ、「大事な戦いに、余計な要素は入れたくない」と、深夜零時の一騎打ちだけを求めた。指と足を削り合う消耗戦の狭間で、二人の"原点"が回想される。エンは十五歳の夜、丸腰の旅人『彼』が村人を一瞬で肉塊に変えるのを見て、その強さに憑かれた。キルマは二百十億年前、血塗れの恋人を抱いて泣いていた——「俺が弱いから、彼女を守れなかった」。だが、その最愛の名を、もう思い出せない。
 戦いは凄絶を極める。互いの肉体を削り尽くし、最後に立ったのはエンだった——だが香織へ向かうその背を、渦に沈みゆくキルマの投げた左腕が貫く。「この次に会った時は、きちんと決着をつけてやる。それまでは、リタイアなんてするんじゃない」——それがエンの最期の言葉となった。キルマは香織にウインクを残し、渦に沈む。「ありがとう。ありがとう。ごめんなさい」——報酬は、確かに支払われた。「二百億年も生きて、私なんかを助けることに意味があるの」という彼女の問いに、キルマはこう答えていた。「ある。君にとって意味があるのなら、俺にとっても意味はある」。作者自ら「カイストシリーズの原型に相応しい」と記す本作は、シリーズの入り口にして、『骸骨騎士』の遥かな終着点。強さの果ての虚無と、それでも一言の感謝に意味を見出す物語である。
『目的のない凶器』https://madtaro.x0.com/no_use_weapon.htm
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『皆殺し探偵社』 ── 正暦607億年/『無手勝』コー・オウジと臨時雇いの愉快な(?)仲間達が奇妙な事件を追う。

( ^ω^)「……皆殺し探偵社。社名が物騒すぎるお。絶対に依頼したくないお。」
(´・ω・`)「舞台はさっき紹介した『目的のない凶器』と同じ地球だ。所長は『無手勝』コー・オウジ——偶然を操って、参加した陣営を必ず勝たせるカイストだよ」
(;^ω^)「必ず勝つ!? チートにも程があるお!」
('A`)「ただし代償がある。我力を使うと、カロリーを消費して体重が減るんだ。第八話じゃ、事前の仕込みだけで推定500kg消費してる」
( ^ω^)「燃費が悪すぎるお!! というか、どんな体型なんだお!!」
(´・ω・`)「身長百九十超の肥満体。……つまりこの所長、太っていればいるほど"何か大仕事を仕込んでる"ってことになる」
( ^ω^)「体重が不吉のバロメーターなのかお……」
( ・∀・)「で、各話の終わりに『業務記録』がつくんだが……第一話、一般人被害2700人以上、って書いてあるぞ」
( ^ω^)「探偵の業務記録じゃないお。社名に偽りなしだお」
('A`)「それが作者いわく『あまり皆殺しにはしてなかったなあ。看板に偽りあり』だそうだ」
(;^ω^)「どっちの感覚もおかしいお……」
(´・ω・`)「所員も濃い。体から刃物を生やす料理上手の鋼、陰鬱な魔術士の水上……そして、ニコニコピザの配達員上がりの、気弱で影の薄い青年・風原真」
( ^ω^)「一人だけ、明らかに普通の人が混ざってるお」
(´・ω・`)「……ブーン、『混沌へ』を覚えてるかい。グランが法則も届かぬ深淵の底で出会った、"意思を持った混沌"……」
( ゚ω゚)「……まさか、アロロアかお!?」
(`・ω・´)「三百九十五億年越しの、伏線回収だ」
(*^ω^)「回収までの年月がぶっ壊れてるお!! でもこの並び順で読んできたから、ちゃんと分かるお……」

 正暦607億年——西暦1999年、東京。映画に感化された巨漢のカイスト『無手勝』コー・オウジが、宝くじで当てた四千万円でビルを買い、「大路ミラクル探偵社」を開業する。所員は、オアシス会・ディンゴ団の戦士・鋼源十郎、魔術士・水上麗羅、そしてピザ配達員から拾われた気弱な青年・風原真。所長の力は"偶然の操作"——参加した陣営は必ず勝つ。ただし進行は無意識任せで、巻き込まれる一般人の犠牲は制御できず、対価としてカロリーが燃えて体重が減る。各話末尾に付される「業務記録」には、報酬額と並んで一般人被害2700人だの体重減少28kgだのが淡々と記される。何度でも生き返る殺人リゾート島、生後七日で家出した息子、未来から十二人の夫が帰ってくる浮気調査、総理暗殺阻止のドライブ、麻薬と邪神の儀式——依頼は八件、いずれも正気の沙汰ではない。
 だが呑気な活劇の底で、静かな糸が張られていく。所員たちは灰色の夢の中で、何者かに「何を望む」と問われる。「ハッピーエンドです」と即答する所長。「自分で考えろ」と怒鳴り返す鋼。「誰かにいてほしい」と本音を漏らす水上。そして問うている当人・風原だけが、皆の答えをなぞるばかりで、己の答えを持たない——「分かるようになりたい。ちゃんとしたものになりたい」。邪神バエスクが降臨した夜、その触手は風原の眼前で凍りつき、そのまま退いた。「覚えがある。こいつを知ってる。おかしい」。委員会のAクラス検証士『閻魔帳』が真実を抉る左目で調べてなお、この青年の正体は「肝心なところが乱暴に削り取られたかのように」見えない。
 答えは最終話、鋼の口から告げられる。二百億年以上前、『彼』が殲滅機関と争った折に召喚され、殺された"混沌のドロドロした生き物"——「転生したんじゃねえか。ちゃんとした人間の形に収まったって訳だ」。正暦212億年、グランが深淵の底で触れ、名を与えられた意思ある混沌・アロロア。三百九十五億年を経て、それは世紀末の東京で、ピザを配達し、同僚に恋をする一人の青年になっていた。「そうかあ、僕はアロロアというんですね」——時間の外から世界を操るその力で惑星破壊爆弾を"拾って"砕き、水上に「ずっと一緒に……いて、ね」と婚約を受け入れられ、最後は「恐怖」と書かれたパラシュートで1999年7月の空から降ってくる。ノストラダムスの予言、ここに成就。
『皆殺し探偵社』https://madtaro.x0.com/massacre_detective_agency.htm
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(´・ω・`)「——以上、正暦百十二億年の『百億年戦争』から、六百七億年の『皆殺し探偵社』まで。全十四作。これが、僕の惚れ込んだカイストシリーズだ」
( ^ω^)「長い旅だったお……。百億年の戦争で始まったのに、最後は混沌の化け物がピザを配って恋してるなんて、聞いてないお」
('A`)「その"聞いてない"に辿り着くまで、作中で三百九十五億年かかってるけどな」
( ^ω^)「でも、まだ分からないことだらけだお。フロウはなんで『俺の負けだ』って言ったんだお? 『彼』って結局何者なんだお?」
(´・ω・`)「分からない」
(;^ω^)「解説役が匙を投げたお」
(`・ω・´)「投げたのではない。書かれていないことを、勝手に埋めないだけだ。分からないものを分からないまま抱えて読む——それが、このシリーズの正しい歩き方だ」
(´・ω・`)「ただ……今回紹介した作品は、僕が勝手に"前期作品群"だと思っている作品でね。まだまだ、続きはあるんだ」
( ^ω^)「四千世界パねー」
(´・ω・`)「続きが気になるなら——原作を読むことだ。扉は、もう全部並べてある」
(*^ω^)「……ふーん。まぁ、ここまで付き合ったんだお。仕方ないから読んでやってもいいお」
( ^ω^)「ところでモララー。君は、輪廻転生を信じるかお?」
( ・∀・)「なんだよ急に。スピってんな」
(´・ω・`)(……布教、完了だ)


『百億年戦争』から六百七億年の『皆殺し探偵社』まで、十四の物語を駆け足で案内してきた。
 ただし、ここに記したのはあくまで見取り図にすぎない。百億年を数え続けた記録の凄み、消耗戦の息詰まる呼吸、酒場の軽口、そして地の文が不意に見せる静けさ——それらは要約の外にあり、原作を読んだ者だけが持ち帰れるものだ。各話の末尾と冒頭の目次に、全十四作への扉を並べてある。気になった一編があれば、どこからでも構わない、ぜひ扉を開けてみてほしい。
 そしてもう一つ。正暦六百億年代のその先——あの探偵社の後日譚も、混沌の底から来た青年のその後も、そして十四編を通じて据え置かれた謎たちの行方も——物語はまだ、続いている。四千世界は広い。この案内書が、いつか"後期作品群編"としてまた現れる日があるかもしれないが、それを待つ必要はない。扉は、すでに開いているのだから。

※おまけ・迷った人のための個人的推奨読書順
 今作では正暦順(作中年表順)で紹介したが、初めて読むなら順番はこの限りではない。迷うなら以下の順をおすすめする。もちろん個人的な意見なので、公式が推奨したものではないことにご留意を。

1『骸骨騎士』 —— 世界の全容が一通り揃う。まずはここから
https://madtaro.x0.com/skeleton_knight.htm

2『挑む者』 —— 骸骨騎士の直接の続き。フィロスの内側へ
https://madtaro.x0.com/challenger.htm

3『原点』 —— 一般人視点でカイストの本質と基本ルールが分かる
https://madtaro.x0.com/the_beginning.htm

4『同じ名の宿敵』 —— 骸骨騎士の回想を補完。軽妙で読みやすい
https://madtaro.x0.com/the_same_name.htm

5『借時百万年』 —— 全編会話の掌編。箸休めに最適
https://madtaro.x0.com/a_debt_of_1_million_years.htm

6『百億年戦争』 —— 年表の起点。「エトナ締め」の出所
https://madtaro.x0.com/10billion_years_war.htm

7『混沌へ』 —— 百億年戦争の直接続篇。世界の外側と、ある布石
https://madtaro.x0.com/dive_to_chaos.htm

8『重い枷』 —— 滅殺士の業と、師としてのガリデュエ
https://madtaro.x0.com/heavy_yokes.htm

9『急所を一突き』 —— 混沌へと対をなす、秩序の極
https://madtaro.x0.com/pierce_the_vital_point.htm

10『敗因』 —— フィロス三部作完結。検証士の真骨頂
https://madtaro.x0.com/the_cause_of_defeat.htm

11『その席 その一言』 —— 英雄ディンゴの頂点と、席の重み
https://madtaro.x0.com/that_seat_and_that_word.htm

12『遺跡の見える町で』 —— その英雄の、誰も知らない空白
https://madtaro.x0.com/while_watching_ruins.htm

13『目的のない凶器』 —— 骸骨の騎士、二百十億年後の終着点
https://madtaro.x0.com/no_use_weapon.htm

14『皆殺し探偵社』 —— すべての布石が落ちる千秋楽
https://madtaro.x0.com/massacre_detective_agency.htm

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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