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イショク症候群

戸川治

3,419 字

医療奇譚、ダークファンタジー

"「代金の代わりに未来予告の診断書」を渡す病院で、医者は自らの「イショク」を診る。"

見るに耐えない駄作(主観)

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イショク症候群

この病院は、代金の代わりに未来予告の診断書をお渡しします。

第一症

移植症

「はぁ〜疲れた。」
そう言って、ソファに腰掛けた。
私は医者として、この病院で働いている。

「センセ、急患でございます。」
そういう看護師の言葉に、抜けた力が戻ってしまった。
悔しいかな、この職は給料は良い分、なんせ忙しい。
私が急患で呼ばれると、厄介な患者が来るのだ。

私は診察室に通された患者を
見て少しギョッとしてしまった。
通された患者は、
どれが患者本来の肌なのかもわからないほど、
ツギハギな境目があったのだ。

「今日はどうされましたか?」
「えぇ先生…少し体が痛くて、
 移植をお願いしたいのですが…」
「ほう移植ですか、何処にやるのですか?」
「目…と脳をお願いします。」
「脳までやるのですか。」
「お願いします…」
「しょうがないですね、
 しかし脳は貴女自身ではなくなりますが、
 よろしいですか?」
「もちろんお願いします…あと先生…」
「なんですか、有栖川さん」
「先生のその綺麗な、金緑石の目をください。」
「ええもちろん。」
そう言って私は、彼女の願いを叶えた。
「あぁ…有栖川さん…いえ今は、 
 川井さんですね…
 いや、どっちもいますね。」
「先生ありがとうございます。
 私の願いを叶えてもらって。」
「そういえば、
 お二人にこの診断書を渡さないと
 いけませんね。
 と言っても、お代の代わりなんですがね。」
「ではこちらを、”10月17日” 
 移植した目が破裂して死亡。」
そう書かれたいつもの、”診断書”を手渡した。
最後の日まで、好きなように生きてくださいと言った。

彼女は予定通り、移植した金緑石の目が破裂して死んだ、
その脳もまた、彼女のものではなかった。

第二症

異食症

今日も今日とて大変忙しく、嘆きたかった。
私は一見普通の医者ではあるが、
いろいろと厄介な患者を対処するという事もやっている。
「センセ、重症患者です。」
その言葉を聞いてしまえば、また始まる、そう思った
自分の体は、逃げるように蒲団に包まった。
しかし看護師に引っ剥がされてしまった。
泣く泣く、私は診療室へと足を進めた。
診療室に着く前に少し争っている声が中から聞こえた。
看護師の悲鳴と金属を噛み切る音、
聞きたくないものだ。

診療室に入ると、そこにいたのは、
まだ若い十代だろうか、
しかし彼女はちょこんと、回転椅子に座り、
回しながら
口元を動かしている。
「……何食べてるんですか」
「枕…」
「見ればわかりますよ、ペッしなさい。」
「はーい」
外見は少女だった。
「年齢は?」
「12…」
「学校は?」
「行ってない…」
「なんで枕食べてたんですか?」
「食べたいに理由なんていりますか?」
「そうですか、あとさっきなんか金属音聞こえたんだが?」
「回転椅子の足…」
そう言われて見れば4つが3つになってしまっていた。
「高いんですよそれ。」
「保険内だよ、保険内」
「そういえば貴女、食べたいものや、
 食べた事無いものありますか?」
「そうだね〜食べてないのは人間だけかな?」
「他はすべて食べたんですね。」
「一番美味しかったのは、花だね!」
「一番まずかったのは?」
「ゴム〜あれは少し噛み切れない。」
「今一番食べたいものは?」
「ケッコン?ってやつ」
「じゃあ食べてみます?新しいもの」
「食べさせてくれるの?!」
「ええもちろん。
 こちらの薬指が見えますか?」
「うん!!」
「キラキラなものもわかりますか?
 これは結婚指輪なんですよ。」
 私は左手の薬指を夕ちゃんに差し出した。
「さぁ、一口でどうぞ。」
「うん!!」
 その瞬間痛みが襲い、温かい液体が溢れた。
 夕ちゃんは口元を拭って、
 私にこう言ったのです。
「先生、大丈夫?」
 あどけない笑顔が私の狂気に
 触れそうになった。
「うん、大丈夫だよ。どうだった?
 一気に二つも味わえて。」
「じゃお代に、こちらの診断書をどうぞ。」
”異食症 中学入学前に完治”
 そう書かれた診断書を手渡した。  
 飴とともに。
 夕ちゃんは笑って、「ありがとう!」
 そう言ってくれた。

「センセ、怪我などないですか…
 センセその薬指…
 なんで私との指輪を食べさせたのですか?」
「いやそれは誤解だよ。許して…ね?」
 結局、明日生えるのに、
 結衣の好きなものを一杯、買う羽目になった。

第三症

異色症

これは私がこの病院で働いて、初めての患者の病名でした。
私は25歳くらいでした。
初めての患者は、いかにも春を売って生計を立ててる人でした。
名前は木場結衣ということでした。

「あ、そこお掛けください。」
彼女は無言で腰をおろした。
「本日はどうか…」
そう言いかけた時、彼女は私を押し倒した。
「センセ私の事みて。」
妖艶な声は私の理性の歯車が狂った。
「あぁ綺麗です。しかし今は、欲には手を出さないようにしているんですよ。」
彼女はその言葉を聞き、獲物を品定めするように見た。
「ふーんセンセ、ひどいね。」
「仕方がないですよ、医者ですから。
 ですが相当な美人ですよ。」
そう言って見せると、
彼女は顔を少し赤らめた。
すると少し彼女の目がピンクから赤へと変わった。
「もしかして貴女、感情や状況によって瞳の色が変わる異色症ですか?」
「えぇそうなの。」
「それと色欲の合併も入ってますね。」 
彼女の目が黒へと変色した。
あぁまずい地雷を踏んでしまった、そう思った。
「えぇその合併症、これで私の人生は大きく狂ったわ。
 幼い頃は目だけの異色症だった、でもねセンセ、
 周りの人間は、自分たちと違うものを持っている人をね
 研究や晒し上げるのよ。」
「それはわかります。」
短絡的ーー私はそうなのだろう、彼女の心情の重さに気付けない。
「貴方には何がわかるの!!」
彼女の叫びが、一室に響く。
「私は16歳の時から、合併症のせいで母親に夜の街に売られたの!
 そのおかげでこんな立ち振る舞いしかできない、
 貴方のような賢い人達は私をいつも見下す。いつの時もそうよ!」
「落ち着いて下さい。」
「五月蝿い!もう何も言わないで…」
そう言った彼女は瞳を青くして泣いた。
私は説得するため、腹を括った。
「結衣さん、見ていてくださいね。」
そう言って、メスを手に取った。
結衣さんの瞳孔が大きく広がった。
白い部屋は一気に赤へと染められた。
私の体が、力なく床へと落ちた。
彼女の叫びがまた部屋にこだまする。
私の体がまた立ち上がるまで。
「私も一種の症状でして、これで親は私を研究機関に売ったんですよ。
 だから貴方の気持ちもわかりますよ。」
彼女の目が黄色となって、
「センセ、ありがとう少し元気付いたよ」
そう微笑んだ。

「最後に何か望みはありますか?」
「少しはマシな人生だよ、センセ。」

震える手で私は診断書を書いた。
”異色合併症 色欲は完治”

彼女は最後に
「センセ、彼女募集してる?」
「まぁ一応…」
「じゃあさ私が看護師になったらなってよ!」
「20だろすぐに行けるだろう。」
「いやウチまだ18の高校生だよ。」
私は男としても彼女に負けている気がする…

第四症

医職症

被検体16番
そのカルテを見るたびに苦しくなる。
幼い私に両親は軽蔑・嫌悪していた。
母は私をいつもプラナリアと呼んだ。
私は名前をもらった事は嬉しかった。
しかし研究施設では苦痛だった、
朝が来るたび、10本の指がどっかに飛ぶ。
すごく血が出たんだ。
でもある日ある、初老の男性とあった。
初老の男性は白衣を着て、私を守ってくれた。
私は「優しいお医者さんがいるんだ!」と初めて知った。
7歳ぐらいの時、おじいちゃんが私を引き取ってくれた。
10歳の時におじいちゃんは死んじゃった、
僕に「お前は医者になって、お前みたいな人を助けるんだ。」
そう言い遺した。
再び私はカルテを見た。
”医職症”
内容は体の欠損部位が再生するというものだ。
名付けてくれたおじいさんはやっぱり優しかったんだ。
私の体質は医者になるための病だったかも知れない。

11月3日
自己レポート 神井彰人

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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