あぁ...神よ、私たちを裁いて下さい...
第一の瓶
私達兄妹は、お父さまやお母さまと一緒に
船で旅をしていました。
しかしある夜中に起きたら、
妹がいなくなっていたのです。
私はそれはそれは血眼になり
船内を探しました。
妹...ヨウコは甲板の上で遊んでいました。
私は安心のあまり
視線を宙に放してしまった。
するとドポンと鈍く
そして寒い音が聞こえたのです。
あわてて視線を戻すと
そこにはもうヨウコは居なかったのです。
なぜいないのか、
私にはすぐにはわかりませんでした。
私は救命胴衣などを一切
身につけずに飛び込んだ。
暗く寒い海に私の身がドポンと
音を立てて無くなりました。
お父さま、お母さまがこの瓶を見て助けてくれる事を祈っています。
津島治
津島ヨウコ より
第二の瓶
拝啓、お父さま、お母さま
私とヨウコはある島に着いて
元気に生きてます。
ヨウコはこのラムネのビンから取り出した、
淡い青色のビードロをずうっと見つづけてます。
幸いなことにこの島には
こわれた小屋がありました。
私はそんな小屋を直すため、
ヨウコを中でねかせました。
壊れた小屋の中には小さなたからばこがおいて
ありました。
その中にはキリスト教の聖書やモリ、エンピツにノートがあり
魚が取れて助かりました。
私はヨウコに先生のように文字を教えました。
ヨウコは生徒役をめいっぱいがんばってました。
文字を覚えたヨウコは絵本の代わりに聖書を読んでいます。
最後にお父さま、お母さま
私とヨウコはせいいっぱいに生きています。
どうか早く見つけて下さい、
津島治
津島ヨウコ より
第三の瓶
拝啓、お父さま、お母さま
あれから5年程経ちました、ヨウコは大きくなり
いつしか13才になりました。
もう何も教える事はありません。
私は16才となりました。
いつしか心も一人前の男となりました。
私達は健やかに生きています。
津島治
津島ヨウコ より
第四の瓶
あぁ...この瓶を見つけたら破壊して下さい...
私は大きな罪を侵してしまいました...
ある日
いつもの様にヨウコを寝かしつけてました、
そして私も寝ようとして、焚き火を消そうと
しました…
あぁ...あぁ...
私は...私は歳を重ねると、
ヨウコを一人の女性として扱ってしまい
ました。
三か月経つたびにヨウコの女性らしさが
膨らんでいくのです。
ここは楽園だ...そう思いました。
しかしエデンには終わりがあるのです。
水平線からエデンの終わりのように
灰色の煙を出した船が
私達を探しに来たのでしょう。
私は戸惑い、
この罪が社会に出て広がってしまう、
そう思うと私は非常に焦り
目印になる焚き火を消しました
私は助けに来たお父さま、
お母さまを拒絶してしまったのです。
お父さま、お母さま
すみません、
すみません、
すみません、
どうか、こんな私を罰して下さい。
津島治
第五の瓶
お母さま、お父さま、
お久しぶりでございます。
かつての惨事から五年もお経ちました。
兄様はいつも守ってくれました。
文字や生きる事についても、
ヨウコに教えてくれました。
兄様は、ヨウコが笑うと、しばらく何もおっしゃらなくなります。
ヨウコは、兄様が疲れているのだと思っていました。
だから、なるべく近くに座って、兄様の手を握ってあげました。
兄様は、そのたびにヨウコの名前を呼びます。
まるで、初めて名前を知った人のように。
ヨウコは、兄様がなぜそんな顔をするのか判りません。
ただ、兄様が喜ぶのなら、笑っていようと思いました。
あの船が来た日も、ヨウコは見ていました。
火を消したのは、ヨウコがそうしてほしいと言ったからではありません。
兄様は、ヨウコがいればここで暮らせるとおっしゃいました。
ヨウコは、それでよいのだと思いました。
だって、ここには兄様がいて、
兄様にはヨウコが必要なのですから。
ヨウコは、兄様を困らせてはいません。
何も悪いことはしていません。
それなのに、どうして兄様は、あんなに泣いていたのでしょう。
お父さま、お母さま。
ヨウコは、兄様のそばにいます。
どうか、心配しないでください。
津島ヨウコ より
第六の瓶
私たちが知らない
お祖父様、お祖母様へ、
はじめまして。
私たちは、父様と母様の子どもです。
父様は、島のことを何でも知っています。
魚の取り方や、雨が降る前の空の色も知っています。
母様は、字を教えてくれます。
聖書を読むときは、いつも楽しそうに笑います。
私たちは兄妹で生まれました。
父様は、二人で書くと仲良くできると言いました。
母様は、青いビードロを大切にしています。
母様はそれを見ると、遠くの海を思い出すそうです。
でも、海の向こうには誰もいません。
父様が、そう教えてくれました。
私たちは、父様と母様と、
ずっとこの島で暮らします。
ここは神様がくださった楽園です。
どうか、私たち家族を探さないでください。
津島トシオ
津島ユリ子より
追伸
来月ほどに私達、兄妹の子供が産まれます。
しかし時折り不思議な事があります。
海の外には、人間はいないのになぜ、
父様と母様はどこから来たのでしょう。
津島トシオ
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