第五億七万六千五百二十一の扉の中に答えがある。
手元にはたった一つの鍵があった。
扉以外何もない空間、浮遊しているのに地面に立っているような安定感がある。あしはただ震えていた。生唾をごくりと飲み込む。
五感がほとんど機能しないこの空間、圧迫感がある扉たちを前に、目は忙しなく扉を選んでいたが、右側頭部が痛い。鍵がめり込む拳はもう痛みの感覚すらない。
第五億七万六千五百二十一の扉の中に答えがある。
扉は全て同じ扉だった。見た目に差異はない。鍵穴はきっと違うのだろう。
ひとつ、ひとつ、試していこう。
下を見ることはない。どうせ何もないのだから。
私は目の前の扉の鍵穴に、そっと差し込んだ。
鍵穴
幻想文学、不条理小説、形而上学的掌編
"五億分の一の絶望。それでも、私は鍵を差し込む。"
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