一ぴきのタコがおりました。なまえをテトラヒドロといいました。
かれのまわりには、そこらじゅう、じんこうぶつと、はいざい、ほね、さまざまなしょくぶつがありました。
なかまのタコはいいました。
「このばしょには“そと”があるんだぞ。」
そととはなんだろう、テトラヒドロはうえをみあげました。しかし、うえをみあげても、なかまたちがふわふわとういているばかりで、なにもみえませんでした。
「ほんとうにあるの?」とテトラヒドロはききました。
「ああ、あるよ。ヒトデにすんでいるタコがむかし、ふねをつくってでたことがあるというんだ。」
「なんだって。」
そのはなしをきいたテトラヒドロは、ヒトデのタコにさっそく、あいにいきました。
ヒトデのいえはおおきく、テトラヒドロはすこしおどろきました。わぁ、とみていると、いけない! とあたまをふってとびらをたたきました。
「ヒトデさん、ヒトデさん。」
そうすると、すぐにタコはでてきました。
「なんだいボウズ。くすりがほしいのかい。」
ヒトデのタコはくすしでした。めんどうくさそうにあたまをかきながら、テトラヒドロをみおろします。
「そとにいったことがあるって、ほんとう?」
「ああ、あるよ。ふねもうらにあるよ。いってみたいのかい?」
「いってみたい。どんなところ?」
「そうだな、なにもないよ。」
「なにもないの?」
「ああ、なにもない。」
「それでもいってみたいよ。」
「なら、たしかめてみるといい。」
ヒトデのタコはいえのうらへあんないしてくれました。
そこには、なにもありませんでした。
「なにもないよ?」
テトラヒドロはあっちをみたり、こっちをみたり、八ぽんのあしをきようにつかいながらさがしました。
「ああ。なにもないさ。だって、うそだからね。」
「いったことがあるっていっていたのに?」
「ここは、おまえがおもっているほどひろくないし、せまくもない。むげんだが、ゆうげんだ。すいそうだからな。」
水槽
哲学的寓話、不条理童話
"ここは無限で、有限。だって、水槽だからね。"
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