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四感の檻

Makoto Yaoi

6,618 字

心理サスペンス・官能小説

"日常に潜む狂気、五感で綴る偏愛の心理サスペンス"

電車の中で、ある青年を見かけたことで男の妄想が始まります。車内という四角い空間の中で、男が自身の狂気じみた妄想に少しずつ囚われていくという物語です。

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プロローグ

いつもの時間、いつもの駅で、いつもの車両に乗り、いつもの場所に座る。

この何の変哲もない朝が、私の呼吸を穏やかにする。

柔らかな日差しの中、過ぎていく車窓をぼんやりと眺めていると――二つ先の駅で、それはやってきた。

グレーのズボンに、白のカッターシャツを着たその彼は、私の前に立ち、大きな黒いリュックを足元に下ろした。

ドスンっと、そのリュックが重みのある音を出した時、彼はピタリと動きを止め、こちらを伺うようにして、軽く会釈した。

今どきの若者特有の小さな顔が少し長めの前髪からのぞく。

切れ長の目に、鼻筋の通った高い鼻。薄い唇。

額に残るにきびの跡だけが、端境期にいることを静かに告げていた。

切れ長の目がこちらを見る。

まるで品定めされているようで、私は身動きできなかった。

見下ろす彼の視線に、何かを測られているような居心地の悪さを覚えた。
私は体から汗が滲むような感覚がし、思わずハンカチで額を拭った。

しかし、何事もなかったように彼はそのまま目線を窓の外に向けた。

……もう少し、もう少しこちらを見てほしい。

その瞬間、自分でも気づかぬまま抱えていた祈りが、ふいに姿を現す。
私の存在価値を認めてほしい。

そんな自分の祈りにも似た懇願が、恥ずかしくも、恐ろしい。
ほんの少し目線を下げ、私は自分の中で何かが確実に変わっていくのを静かに受け入れた。

── 第1章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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