プロローグ
いつもの時間、いつもの駅で、いつもの車両に乗り、いつもの場所に座る。
この何の変哲もない朝が、私の呼吸を穏やかにする。
柔らかな日差しの中、過ぎていく車窓をぼんやりと眺めていると――二つ先の駅で、それはやってきた。
グレーのズボンに、白のカッターシャツを着たその彼は、私の前に立ち、大きな黒いリュックを足元に下ろした。
ドスンっと、そのリュックが重みのある音を出した時、彼はピタリと動きを止め、こちらを伺うようにして、軽く会釈した。
今どきの若者特有の小さな顔が少し長めの前髪からのぞく。
切れ長の目に、鼻筋の通った高い鼻。薄い唇。
額に残るにきびの跡だけが、端境期にいることを静かに告げていた。
切れ長の目がこちらを見る。
まるで品定めされているようで、私は身動きできなかった。
見下ろす彼の視線に、何かを測られているような居心地の悪さを覚えた。
私は体から汗が滲むような感覚がし、思わずハンカチで額を拭った。
しかし、何事もなかったように彼はそのまま目線を窓の外に向けた。
……もう少し、もう少しこちらを見てほしい。
その瞬間、自分でも気づかぬまま抱えていた祈りが、ふいに姿を現す。
私の存在価値を認めてほしい。
そんな自分の祈りにも似た懇願が、恥ずかしくも、恐ろしい。
ほんの少し目線を下げ、私は自分の中で何かが確実に変わっていくのを静かに受け入れた。
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