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俺の中の懲りない面々 ―三部作

Makoto Yaoi

5,245 字

そこそこ真面目、でもちょっと不器用な男の哀しくもおかしい日常物語

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第一章 『一目惚れ』

一目あったその日から恋の花咲く時もある』

息が止まったかと思った。

彼女を見た瞬間、ドクンと強く心臓が鳴った。

『心が奪われる』と言うのは、こういうことなんだと初めてわかった気がした。

僕の目は彼女を捕らえて離さない。
僕は金縛りにでもあったように、
一步も踏み出せなかった。

向こうから歩いてくる
彼女の足音だけが聞こえる。
さっきまで聴こえていた隣のおばさんたちの話し声も、音響信号機の音もすべてが遠くなった。

カツンカツンと、ヒールの音とともに、彼女の息遣いまで聞こえるようだ。

ここまで届くはずがないのに、まるで彼女の芳香を感じているかのように、僕は深呼吸した。

徐々に輪郭が浮かび上がる。
髪が風に揺れ、胸元がわずかに動く。

僕はいつの間にか両手を強く握り締めていた。
爪が手のひらに食い込む。

白い肌となめらかなカーブを描く鼻梁がはっきりと見て取れるくらい近づいたとき、彼女の視線が僕をとらえた。

その時、僕は彼女の口角が上がったのを
見逃さなかった!!

ああ!神様!!この年まで、
それなりに真面目に生きてきたからでしょうか?

ここに来て、こんな恵みをお与えになるなんて!
知っていたらもっと、お賽銭を弾んだのに。
さっきのおば様たちにも、心の中で悪態をつかなかったのに!

彼女が徐々に近づいて来る。
もうこれは勘違いなどではない。
彼女は僕のところへ向かって来ているのだ。

受け入れよう。
すべてを受け入れよう。

神が僕に与えた女神の全てを!

彼女は僕の目の前まで来て、顔を僕の耳元に近づけた。

心臓がうるさい!
体中が強張る。

期待が大きすぎて
僕の身体には収まりきらないようだ。

彼女のピンクの唇がそっと開いた。
むわっと香る甘い香りが僕の鼻腔を侵略する。
完落ちした僕は興奮のゴングが
けたたましく脳内で鳴り響いていた。

来た!来た!来た〜!!!

「あの………チャック全開ですよ。」

彼女は、少し困ったような顔をして
会釈して去っていった。

── 第1章 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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