第1話:帰ってきた”あゆみ”と、巻き込まれる”秀樹”
⸻⸻シーン1 コンビニでの再会(午後3時)⸻⸻・コンビニ外観
小林聡美さん風N「窓から10月の西日が射してきた、午後3時のコンビニエンスストア。 アルバイト歴40年の還暦男、秀樹が口笛を吹きながら、 ブラインドの角度を調整中」店長らしき年配の男性、口笛を咎めるように秀樹を横目で見ながら、わざとらしい咳払い2回。店長うぉっほん!うぉっほん!ブラインドの角度を、西日が入らないように下向きに調整した秀樹。何かに気づき、慌ててブラインドの角度を元通り水平にしてみると・・・。窓の外から覗き込んでいる不審人物とモロに目が合った。驚いて目をしばたたかせた秀樹、思わず呟く。
秀樹(呟き声)歩……ちゃん?
慌ててコンビニの外に飛び出す秀樹。窓際に立っている歩に駆け寄って。両肩を掴んで揺さぶる秀樹、頭がグラングランする歩。
秀樹歩ちゃん!なんだよ歩ちゃんかよ!どうしてだよ歩ちゃん!
歩まあまあ落ち着きなさい。まず放したまえよ、その手を。18歳女子の二の腕は還暦男が簡単に掴んだり揺さぶったり出来るものではないのだよ秀樹くん(迷惑そうな表情で、ホッとして嬉しい気持ちを包み隠す)
秀樹あっ、あっごめん…
慌てて手を離す秀樹。
秀樹どこに行ってたんだよ、半年もの間
歩半年?もうそんなに経つっけ?(惚けた表情を作る)
秀樹高校卒業してからだから……(指を折りながら)4月、5、6、7、8、9、10、7ヶ月だよ、黙って出ていって7ヶ月!
歩わりーわりー、それについて話があるし……(コンビニと反対側を親指で指して)ちょっといい?
秀樹、店内からこちらを睨み気味に見ている店長を気にしながら。
秀樹いやいや、いやっ、見ての通り勤務中だから今はちょっと…店…離れるとかはちょっと…無理
歩じゃ、帰っちゃおかなー、次に会えるのは…またまた7ヶ月後かなぁ…(後ろ手にクルリと一回転して)ひょっとして1年後だったりして
秀樹脅すの?7ヶ月ぶりに会って強迫?まさか『私とコンビニどっちを取るの?』みたいなこと言っちゃう?
店長入口自動ドアから上半身を出して、こちらを見ながらさっきより大きな咳払い4回。
店長うぉっほん!うぉっほん! うぉっほん!うぉっほん!
秀樹、入口の店長の所まで、歩の手を引いて小走りに走っていって。
秀樹店長ちょっと、このお嬢さん親友の娘さんであっ、ほら昔ちょっとだけ深夜バイトしてた誠 実(まこと みのる)君のお嬢さんなの、この子
店長誠くん?山口くんの友達の…?
店長、心当たりがある様な、ない様な…考え中。
秀樹誠くんが去年亡くなっちゃって、天涯孤独の19歳でね、そうなの
歩まだ18!
秀樹そうそう!まだ18、ねっ、かわいそうなのほっといたら、ねっだから、控え室…ちょっとだけ…スイマセン
店長それはまぁ、気の毒だな…じゃあちょっとだけ控え室使っていいから、5分ね
・控え室
控え室に入る歩と秀樹。
歩『気の毒だな…じゃあ5分ね』って…いい人なんだかケチなんだか、ようわからん店長だな
秀樹まぁまぁそう言わない!パパだって昔お世話になった店長なんだからさあっ、当時は店長のお父さんかそれに、パパとママの出会いだって、このコンビニなわけだしさ
歩っていうか秀樹おじさんって、苗字山口なんだ(笑)山口秀樹…超笑える(笑)
秀樹昭和40年男だからな、意味はないけど偶然な
歩まぁ、婿養子じゃなければ西城百恵だよねつーか、なんでこの二人?
秀樹それはともかくこの7ヶ月間、何してたんだよというか、とりあえず歩ちゃんがタイムリーパーであることは誰にもバレてないよね?
歩あったり前じゃん、私だってバカじゃないんだからさバレたら最後、おばあちゃんを始め一族からの干渉はもちろん周りからどんな目で見られるか、想像はつくもん第一言う機会がない「私ってタイムリーパーなんですぅ」って
秀樹だよな、な、わかってるならいいんだ
歩ま、それはともかく……とりあえずこれ受け取ってくれ秀樹おじさん!
リュックの中をゴソゴソした歩、秀樹の目の前に100万円束でドン!
秀樹なんだよ、何なんだよこの100万円は?
歩まぁ、卒業まで3ヶ月間お世話になった分とこれからお世話になる分だ少なくてごめんだが、受け取ってくれ
秀樹それよりどうしたんだよこの金…まさかとは思うが…あれか?あれしかないよな?
歩そうだよ、あれだよ、あれちょちょいと未来を見に行って、馬券を何枚か買えばあっという間のあのビフ・タネン方式だよでも、もうこれでおしまいだ”最後のビフタネン”だ
秀樹ビフ・タネン方式はもう使わないって言ってたよね?
歩だから”最後のビフ・タネン”だ!”さらばビフ・タネン”と言ってもいいいま口にして思ったんだけどさあの映画シリーズのスピンオフで”さらばビフ・タネン”ってあったらさみんな見に行くと思う?
秀樹そりゃ行くかもしれないし、行かないかもしれないよそれより、これからお世話になる分、ってなんだよお世話するとは、俺まだ言ってないぞ
歩それはそうと…無理を言う気はないんだが……秀樹、今すぐこの店やめてくれ
秀樹え、えっ!無理無理それは無理メチャクチャ無理言ってんじゃん!シフトの問題とか色々で…今すぐはとても無理そもそも、店長が許してくれるわけがないバイトリーダー歴40年の大ベテランだよ?俺
歩俺がいないと現場回らないって、あれか?大丈夫だよ、絶対に回るからさ余人をもって代えがたい人材なんて実際にはいないんだからさまぁいいよ、秀樹おじさんが言えないなら私がこの100万の札束で店長の横っつらをパチーン!って叩いてやるよ、パチーン!と
秀樹それはちょっと君の美意識にもとるだろ、もちろん俺の美意識にも言うても大学2年で中退してからさ還暦になる今年まで40年間勤務してきたわけだしそう簡単に辞めるとかは……言えんよ
歩秀樹おじさん、時給はいくらだ?
秀樹結構もらってる方だぞ、なんてったって40年勤務だから
歩だからいくら?
秀樹最低賃金プラス100円もらってる…
歩はあああああ!やっす、安い安すぎる!40年勤務して?人身売買か?キミ騙されてるよ
秀樹いや店長はそんな人を騙すような人じゃない!…と信じてきたが…やっぱり安いか?
歩安いなんてもんじゃないよ!(スマホを叩いて)いま東京都の最低賃金がこれだから…100足して1日8時間…週5日として12ヶ月で……えーーーー!
秀樹やめろ!人の年収計算するの!
歩(スマホ見ながら)マジか…、とはいえお世話になってる時寿司とか連れてってくれたじゃんか、まぁ廻ってはいたが
秀樹まぁ、蓄えを切り崩して……な歩ちゃんにあまり貧しい思いはさせられないし
歩くーっ!申し訳なさすぎる!じゃぁこの100万、喉から手が出るほど欲しいんじゃない?
秀樹まぁ…、だからこれで店長の横っつら叩くって聞いてあっ俺のは?って思ったのは本当だ
歩安心してくれ、それは別途工面するからでね、そういうこともひっくるめてもう、タイムリーパーだということを隠すのはやめようと思うのよ
秀樹おいおい、突然何言い出すんだよダメだよ絶対ダメ!危険すぎる何より亡くなった君のパパが心配するぞ!俺は許さないぞ、あいつとの友情に賭けても!
歩大袈裟だよ、きっと世間は信用しないよタイムリープなんてそして、それを知ったおばあちゃんも安心してもう干渉してこないよ、きっとしかも私は隠しごとなしに、大手を振って世間を歩いていけるいいことずくめじゃん
秀樹いやいや、そんなうまく行くかな…いやいやいや絶対に認められない何より歩ちゃんのパパとの友情にかけて!
歩二度言ったなそれ大袈裟だなぁ、じゃあ試してみる?あの、人が良いんだかケチだかわからん店長さんに言ってみようよ絶対に信じないからさそんなもんだよ世の中……いや常識人なんてさ
秀樹いや、それは……ちょっと待って……
扉を開けて、中を覗き込む店長。さっきより大きな咳払い6回。
店長うぉっほん!うぉっほん! うぉっほん!うぉっほん!うぉっほん!うぉっほん!
歩あっ5分経ちましたよね、すみませんすみません唐突で申し訳ないんですがね、実はですね私タイムリーパーなんです……信じてもらえます?
店長ん?タイム……?何?
歩タイムリーパーですタイムリーパー時間を行ったり来たりできる…
店長時間?行ったり来たりって?
歩(秀樹に)ほらね、こんなもんよ (店長に)そ・れ・で…ちょっとご相談が……あー山口くん?君ちょっと外してくれたまえ
秀樹えっ!俺?俺が外すの?
歩、手のひらで「しっしっしっ」のジェスチャー。
秀樹、不承不承控え室の外へ。
・控え室のドア前
1分後、控え室から出てくる歩。
秀樹早っ!1分経ってないぞ
歩秀樹おじさんおめでとう!キミは晴れて自由の身だ!さあ行こう!
秀樹えっ本当に?店長に挨拶くらいした方が…
歩それはまぁ後日ということで店長はいま100万円に挨拶するので忙しいいこういこう
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シーン2 探偵業で自立を目指す!
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・喫茶店で向き合う2人。
歩(ストローでアイスティーを一息飲んだ後)おじさん家出てから、7ヶ月間考えに考えたんだどうやって自立して生きていくか?
秀樹(歩の方に身を乗り出して)で、どうやって自立する?
歩パパが夢に出てきてグッドアイデアが浮かんだついてはこれを用意した
歩、いつものリュックをゴソゴソ、机の上に履歴書・住民票の写し・誓約書・マイナカードを置く。
歩18歳だから、私だけで探偵業を開業は出来るでも、一人ではやっぱりちょっとね……言うても、まだまだ子どもだし……ってことで、秀樹おじさんには共同経営者になって欲しい
秀樹探偵業?の共同経営者?
歩そう私は探偵として自立して生きていく!
秀樹いいけど…、なんでまた探偵なんだ?
歩パパがね”人類が産んだ最もカッコ良い小説だ”って中学の時にレイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」を勧めてくれたのねパパ良くぞ勧めてくれました!ってわけで私の中ではパパの次に娘になりたい男って言ったらねフィリップ・マーロウなのさ、だから探偵
秀樹なるほどね!それは納得だわ!何を隠そうパパに高校時代「ロング・グッドバイ」を勧めたのが俺なの格好いいよなマーロウ
歩マジか!これって奇遇ってやつか?あっ、でも一緒にしないでね秀樹おじさんのは「清水俊二」大先生の訳でしょ?私のは「村上の春樹」大先生訳だからさ
秀樹だからなんだ?という気もするが……まぁ共同経営者なるよ俺もやってみたかったんだ探偵とは言え、資金は大丈夫なのか?
歩大丈夫”最後のビフ・タネン”でさ念の為に1000万円用意しといた
秀樹なんだよ、最後が多いな大丈夫か?これから先も困るたびに”最後のビフ・タネン”ってことはないだろうね?
歩そこは大丈夫、私の矜持に賭けて約束する矜持と言ったらこれはもう絶対だよ私は何より矜持を大事にする女だからさパパとマーロウにかけて誓うよ
秀樹了解、ではそれを信じるとしてだ…どこに開くんだ事務所?
歩それはパパが生まれ育った横浜に決まってるでしょイメージ的にも私立探偵するならやっぱ横浜だな濱マイクの事務所も横浜だったし
秀樹事務所の名前はどうする?山口・誠探偵事務所とか?
歩なんで山口が先に来る?資金出してるの私だよ?意外と厚かましいね秀樹おじさんも大体、山口誠って別の人みたいじゃんか
秀樹資金のこと言っちゃえばビフ・タネン探偵事務所になっちゃうぞ
歩じゃあ山口・誠探偵事務所とビフ・タネン探偵事務所それ以外の候補を考えてくれたまえよ
秀樹うーん………難しいな拙速にうっかりしたの付けちゃって、後悔するといけないからとりあえずペンディングと言うことで
歩そうだね、じゃあまず明日から事務所の物件を探そう!横浜で!
・レジで会計を済ます秀樹
・喫茶店から出てくる二人
秀樹じゃまた明日桜木町の改札でいい?で、えーっと…10時頃かな?
歩(俯いて答える)んー、まぁそうだね…そんなとこが妥当かね…
秀樹じゃ、明日
歩き出す秀樹
後ろ手に俯いたまま、そのあとをついて行く歩
秀樹あれ?おんなじ方向?
歩(小走りに駆け寄って、秀樹の二の腕を両手で掴む。 見上げて目を合わせる)察してくれたまえよ、秀樹おじさん
秀樹なんだ、そう言うことかよ(迷惑そう2:嬉しそう8)
歩晩飯は奢るよ、なんでも好きなもん買ってくれコンビニではあるが
・コンビニからの帰り道
コンビニの袋を持って並んで歩く二人の後ろ姿
小林聡美さん風N「なんだか親子みたいな二人であった、 もちろん親子じゃないのだが…」
(黒フェード)
続く
まだコメントはありません。最初のひとことをどうぞ。