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『僕が僕であること、決めるのは僕』 ~僕のファミリーヒストリー~

永遠のコメディ

29,096 字

青春成長物語、歴史コメディ

"過去の「大嘘」が、未来の「僕」を強くする。"

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シーン1 海辺の漁師小屋(午前7時)⸻⸻外からは明るい光が差しているが、小屋の中はうす暗い2人の侍が何やら揉み合っている様子広一朗(ささやき声)やれ!やれというに!!あーもう貸せ!んっ!うっうーむっ・・・。六兵衛(ささやき声)死なない程度に、死なない程度に・・・。かたじけない小屋を飛び出し砂浜を駆け上る六兵衛手には血のついた短刀道ゆく人々に両手をふり叫ぶ

六兵衛(少しどもりながら)たっ、、大変だ!さっ、さっ、坂本龍馬だ。

(声少々ひっくり返る)!あっ、あの坂本龍馬が倒れているぞ、しっ、しかも瀕死、瀕死だ坂本龍馬が・・・。

(声大いにひっくり返る) はっ、早く助けなければ、 坂本龍馬の命を助けなければ!

(周囲の人々のザワザワ)

ことの重大さに緊張し、オドオドしながらあたりを見渡す六兵衛

朝日にキラキラと輝く海面

秀亮(モノローグ)これがボクのご先祖さま「片岡 六兵衛」さん。本当に瀕死の坂本龍馬を発見し、命を救った人なのか?はたまた大ボラ吹きの詐欺師なのか?歴史の評価は、、、。残念ながら、もうあらかた定まっている。

⸻⸻シーン2 中学受験塾⸻⸻自動車の車窓からの受験塾外観自動車の液晶時計が午後10時10分を指す塾のカバンを背負い建物から出てくる秀亮秀亮(塾友と挨拶)じゃあねお疲れ。また明日。

父母の迎えの車に乗り込む塾友たち。中学受験は家族ぐるみの総力戦だ!

秀亮(モノローグ)この頃のボクは、ご先祖さま「片岡 六兵衛」さんのことなんか、ナーンにも知らない小学6年生で、中学受験まっしぐら!猪突猛進!!とはいかず、少し微妙な気持ちを抱えていた。父親の車に駆け寄る秀亮秀亮(車に乗り込んで)お待たせしました、ただいま。

父おかえり、ご苦労様。今夜はカレーらしいぞ、急いで帰ろう。

秀亮(シートベルトを締めながら、嬉しそうに)いいですねぇ。俺、、、僕、ママのカレー好きだなぁ。

発車するSUV車運転する父親・助手席の秀亮

父今日はどうだった?

秀亮どっちが?塾が?学校が?

父(本当に気になるのは塾なのだが、一瞬の躊躇あって)やっぱり学校からだろうな。

秀亮そうだね、特にこれと言ってだけど・・・。そうだ!夏休みの宿題のテーマが出たよ。⸻⸻回想シーン①(教室)⸻⸻教壇に立つ担任さて、来週からいよいよ夏休みなわけですが・・・。皆さんは最高学年の6年生ですから、下級生の手本となるよう、有意義に過ごして下さい。体調には特に注意して、生活習慣を崩さないようにしっかりと自覚をもって過ごすようお願いします。そして、夏休みの宿題のテーマを発表します。今年のテーマはテレビでもやっている「その時ファミリーヒストリーは動いた」です。平たくいうと、ファミリーのヒストリーということです。皆さんのご家族や、親戚、お祖父さんお祖母さんなど、家族や一族の歴史を調べてきて下さい。調べ方のヒントなど、詳しいことは明日お配りするプリントに書いてありますので、しっかりと読んでおくように。ではまた明日。

日直起立!礼!!ありがとうございました。⸻⸻運転する父親・助手席の秀亮⸻⸻父へぇ、ファミリーヒストリーか。面白そうじゃないか。

秀亮まあね。でね、今度は塾の方なんだけど

父(ギクッ、きたな)ん?何かあったか?

秀亮家着いたら見せるけど、模試の結果出た。

父その感じだと今ひとつか・・・。

秀亮第一志望の合格判定BからCに落ちちゃった。

父夏でC判定か、、、でも何も気にすることないぞ。自慢じゃないけど、お父さんも高3の夏で東大の合格判定Cだったからな。頑張れば全然余裕で逆転できるから、気を落とさなくて大丈夫だ。

秀亮それを聞くと俺、、、いや僕もちょっと安心。

父なぁ秀亮、お父さんの前だからって、無理して「僕」って言う必要はないんだぞ。あと中受だって、無理して受ける必要はないと言ってるよな。自分で決めればいいんだぞ。

秀亮分かってるよ・・・。

秀亮(モノローグ)そうは言っても「親の期待に応えなきゃ」って、プレッシャーもあるんだよなぁ。お父さんが東大なんて出てなきゃねぇ。

しばしの沈黙の後、場を繋ぐように父宿題のファミリーヒストリーの件だけどな。あれ友香ちゃんと手分けしたらいいんじゃないか?秀亮うん、それはそのつもり。⸻⸻回想シーン② (教室)⸻⸻放課後、掃除の準備のため机・椅子の移動を始める掃除当番の級友達

秀亮、机の引き出しの中のノートを鞄に移し帰宅の準備

小走りに駆け寄ってくる友香

友香ね、ね、夏休みの宿題テーマ出たねヒデのクラスのテーマもファミリーヒストリー?

秀亮何言ってんだよ、毎年全クラス共通じゃん。

友香念の為念の為、確認確認。ってか、わたしたち超ラッキーじゃん。ね、ね、一緒にやろ、負担半分ってことでさ。なんてったってご先祖一緒なんだからさ。あー!ヒデと同じ学校で初めていいことあったぁ!

秀亮初めてってなんだよ。まぁいいんだけどさ。

秀亮(モノローグ)彼女は片岡 友香ちゃん。クラスは違うが、同じ小学校に通っている僕の従姉妹だ。どちらかというとクラスでも目立たない系の僕と、いっときも黙っていることができない、クラスの中心人物の彼女だが、物心つく前から一緒にいるせいか相性は悪くない。まぁ僕も受験勉強で忙しいし、手分けするのは悪くはないか。

友香ご先祖様も「そこの2人仲良くやるように」(なぜかお釈迦様のポーズ)って言ってるよ絶対。まぁヒデは受験もあるし半々とは言わないよ、よし!8:2で行こう!私2割のヒデ8割なんちって!

秀亮ってか相変わらずよく喋りますねぇ、ホントに。

お調子者の級友が割って入るいきなり蛇のおもちゃを、秀亮の首元に巻き付けてくる

秀亮うわっー!なんだよ。(慌てて蛇のおもちゃを首から振り払って)やめろよ、、ヘビとか嫌いなんだからさ。

級友しつこく秀亮の顔首に蛇のおもちゃを巻こうとする

秀亮もう!やめてって言ってんだろ、やなんだよヘビとかさ。しつこいって、やめろってもう!

級友おーおー!相変わらず仲の良いことでご馳走さん!いっつもいっつも尻に引かれてんじゃねーぞ秀亮!!

友香うっせぇ!クソ俊輔あっちいけ!構ってくんなバカ!

級友あっ!これはどうも、失礼いたしました(ドリフっぽく)。

友香いつの時代の人だ!って話だよ(笑)

級友ヘビだけじゃねーじゃん、お前犬も苦手じゃん。ダッセーの。(友香に)お前の従兄弟、気が弱すぎじゃね。卑怯者だ卑怯者(笑)

友香言ってんだクソ俊輔、ヘビや犬が苦手ってことは、ただ単に、ヘビや犬が苦手ってことでしかないの。なんでそこに卑怯が出てくんだよバカ。気にすることないからなヒデ、こんなバカの言うことなんて。秀亮(モノローグ)(学校生活の様子インサート)スポーツ真ん中、見た目真ん中で、勉強真ん中ちょい上の僕と、スポーツ、勉強上位で、かつ見た目も悪くなく、と言うよりかなり可愛い方だと思う。おまけに父親が人気テレビ番組のディレクターをしていて、クラスメイトが希望するテレビタレントのサインをしばしばもらってきてくれる友香ちゃん。スクールカースト最上位の彼女は、カースト中位の僕を何かと守ってくれる。

級友(しつこく絡んでくる)そういえばお前も中受するんだっけ?俺、早くもマーチ付属校A判定だしー!お前は?こいつならともかく、お前の成績で受かる中学あんのかよ(笑)

友香しつけーぞ俊輔、ヒデに構うなって言ってんの!!その名前つけてもらってサッカー下手くそって、親の期待大きく裏切ってるお前が言うな(笑)気にすんなよヒデ。秀亮(モノローグ)(友香に背中をバーンと叩かれながら)男として立つ背がないが、今は何も言えない僕。受験頑張って、立派な大人になったら今度は僕が守ってあげるから、もう少し待っててくれ友香ちゃん。⸻⸻運転する父親・助手席の秀亮⸻⸻秀亮・・・うーん、やっぱ将来もあるし、中受頑張ってみよう・・・かな。うん、やるよ俺!⸻⸻インタビュー⸻⸻友香ヒデの印象?ウチは親同士仲良いから、物心つく前から一緒だからね、従兄弟だしまぁ悪い印象はないよ、いい奴だし。他の女子からの印象?うーん・・・。学校ではあまり目立たない方だし、中心人物って訳でもないしね。これは私だけのイメージかもしれないけど、ちょっと弱いデリケートな感じ?小さい頃から喧嘩や口論もしたことないし・・・。そう!それで犬が苦手で、少しでも大きな犬がいると道を避けて通るよね。近づいてくると足がすくんじゃうんだって。でも最近イメージチェンジのつもりか、人前では「僕」じゃなくて「俺」って言うようになったな。その辺りがまた、ちょっとデリケートちゃんな感じだよね。⸻⸻シーン3 自宅⸻⸻風呂上がりの秀亮リビングに入ってくる

秀亮いいお湯いただきました。よいしょっと。

食卓に座りミネラルウォーターをコップに注ぐゴクゴクっと飲んで

秀亮ねぇお父さん、宿題のファミリーヒストリーの件だけど、どう進めたらいいかな?

父そうだな、友香ちゃんと協力してやるんだろ。だとすると、調べ物のプロといったらテレビディレクターの拓人おじさんだよな。

秀亮お願いしちゃう?ノーギャラで(笑)

父そこはまぁ、おじさんにとっても娘の夏休みの宿題なんだから、協力くらいは、なっ。とはいえ、おんぶに抱っこ、というわけにも行くまいよ。そうだな・・・君は我々のルーツが岡山県ってことは知ってるよな。秀亮うん、知ってるよ。と言うか、それが知ってることの全部です。

父(メモを書きながら)岡山県岡山市瀬戸内町・・・と。これが我々の先祖の本籍地がある土地だから。下調べはしておきなさい。秀亮(メモを受け取って)わかったありがとう、ネットでサクッと見ておくね。おやすみなさい。⸻⸻秀亮自室⸻⸻PCを開く秀亮秀亮岡山市瀬戸内町・・・っと。まずは町のホームページからだよなっと

(メモを見ながらPCを打つ)秀亮おっとっと、いきなり町がない(笑)「瀬戸内町は、かつて岡山県に存在した町。2007年1月22日に岡山市に編入され廃止された。現在は同市の瀬戸内地域となっている。」か、もう存在しない町ね、これは中々手強いぞ・・・。

引き続きPCを操作秀亮(モノローグ)「サクッと見ておく」どころではなかった、何せ史料が少ない。「片岡家は源平合戦の頃にこの地に移り住んできた一族」とされていることが、数少ない史料からようやくわかった。

秀亮源平合戦というと、・・・。

(PCを操作)1180年から1185年!?ってことは、850年近く前から片岡一族はこの土地に住んでいたのか。へぇ・・・。

PC操作を続ける秀亮自宅外観(夜は更けていく)⸻⸻シーン4 学校⸻⸻学校の廊下 秀亮に呼び出された友香

友香何?呼び出すなんて珍しいじゃん、どうしたの?

秀亮発見、発見、大発見!

友香(怪訝な顔で)何が何が?ちょっとよくわかんない。何が?

秀亮片岡家の秘密大発見!っていうより、もしこれ本当だったら日本を揺るがす大発見!テレビ・新聞・雑誌・マスコミに引っ張りだこの大発見!!やばい!受験勉強してる暇なくなっちゃう。

友香片岡家の秘密って、ファミリーヒストリーのこと?(秀亮激しくウンウン)で、何が大発見?

秀亮いやいや、これもう俺らだけでは対処不能!今日お父さん帰ってくる?

友香失礼なこと言わないでよ!(笑)いくらテレビマンでも一応は毎日帰ってくるよ。放浪者じゃないんだからさ。今日は休みで家にいるはず。で、何を発見したの?秀亮じゃあ学校が終わったら、7時にウチに集合で。今日は塾ないし、7時にはお父さん帰ってくるから、そこから作戦会議、ね。

友香珍しくヒデが仕切るねぇ。いいこといいこと。で発見って何なの・・・。

秀亮(廊下を走り去りながら)じゃあ今晩7時、待ってるねあっ!あと、うちのママにまだ伝えてないから晩御飯は食べてからきてね。じゃ後でね。

友香張り切ってるなぁ、子どもかよ(笑)嬉しくなるねぇ、ヒデが張り切ってるとねぇ。何の発見かねぇ。⸻⸻シーン5 自宅⸻⸻父(秀一)・叔父(拓人)・秀亮・友香の4人がリビングに集合ソファーや食卓でそれぞれに寛ぐ4人

秀一さて、発表してもらおうか、その大発見とやらを・・・。

秀亮僕の5代前のご先祖様に「片岡 六兵衛」さんと言う人がいました。この人が大発見事件の当事者です。

「あっそれは・・・」と言いたげな秀一、拓人が目で制する

秀亮そして、世紀の大発見なんですが・・・。(コピー1枚を差し出す)

こちらの記事です。瀬戸内町の明治時代の史料の中に、こんな記事を発見しました。これです

(記録の1行)「元当藩藩士 片岡六兵衛氏 瀕死の元薩摩藩士坂本龍馬氏を救命!?奉行所記録の謎」友香ん!?えっ、龍馬ってあの坂本龍馬?いきなり超ビッグネーム登場じゃん。で、この「片岡六兵衛氏」と言うのが私たちの先祖ってこと?

秀亮そう、“六兵衛氏が坂本龍馬氏を救命”ってはっきり書いてある。これは「元当藩の片岡六兵衛なる藩士が瀕死の坂本龍馬を救命」という奉行所の記録に、その後の記載が何もないのはどうしたことか?という記事で・・・。

(ヤベェ!と顔を見合わせる秀一・拓人)秀亮この記事が注目しているのが、慶応3年12月18日という奉行所の記録の日付なんです。かの有名な近江屋事件が発生したのが慶応3年11月15日とされているので、これは龍馬が暗殺されたはずの1ヶ月以上後に起きた事件ということになるんです。これが意味するのは?ハイお父さん。

秀一(自分を指差し、えっ!私?のポーズだが、何かぎこちない)えーっと、かの近江屋事件は捏造、あるいは未遂で、龍馬は実は生きていた!と推測している記事・・・ってことだな?

秀亮さすがはお父さん。で、もし仮に坂本龍馬が生きていたとすれば、明治の新政府でも、それなりの立場を与える必要がありますよね。でも、それを嫌った有力者がいたとすれば、、、ハイ拓人おじさん。

拓人(もういいや的なリアクション)その有力者の命で、龍馬は改めて暗殺されたので、龍馬は近江屋事件で暗殺されたこととすべしと、しかるべき筋から圧力がかかり続報が報じられなかったのでは?と推測した記事・・・かな?(秀一、拓人にお前こそ何やってんだよと少々慌てた様子)

秀一おい拓人!犯人は西郷隆盛とか言い出さないだろうな。

秀亮(もはやお構いなしに続ける)さらに僕が注目しているのが、この記事自体もどんなに探しても続報が見つからないことです。この事件の背後には、相当大きな力が働いていたに違いなくて、驚くべくは、その発端となったのが我らの先祖であるという事実です。

秀一まぁ、そういう見方もなくはないが、坂本龍馬の同姓同名かもしれないし、一回落ち着いてよく考えた方が・・・なっ拓人。

拓人お、おう、、そうそう。

秀亮(意に介さず、ますます勢いに乗る秀亮)どうですか!これはもう小学生の夏休みの宿題とかではなく、国家レベルで調査に値しませんか?拓人おじさん、ゴールデンタイムの特番でどうですか?

拓人いやいや、それはちょっと・・・。

友香(パチパチパチパチと拍手!)すごいよヒデ!自分の先祖の事なのに全然何にも知らなかった!というか興味さえなかった。パパたちもこの大発見は知らなかったんじゃない?

秀一・拓人、顔を見合わせて 「う、うーん」「ま、まあな」「いや短期間でよく調べたよな」 「いやホント大したもんだよ」など、なんだか歯切れの悪い反応。

秀亮絶対に真相を明らかにすべきだと思うんだよ!ご先祖様の名誉のためにも!

友香賛成!やるべきやるべき!名誉大事イエーッ!!

拓人よしヒデくん!それじゃあだな・・・そうだなぁ・・・。えーっと、えーっと・・・。(何か思いついたぞ!)

そうだそうだ、分かった、それで行こう!ヒデくん、基本的に片岡家の岡山でのことは、まずは岡山在住の片岡家の人に聞くべきだと思うんだよね、これは賛成?

秀亮それはその方がいいと僕も思います、できるのなら。

拓人しかしながら、我々の知る親戚で岡山に詳しい人は誰もいません。ハイ!なぜでしょうか?秀亮ひいおじいちゃんの代で東京に出てきたんで、岡山にはもう、知り合いが誰もいないから?かな?

拓人そうそう、ひいおじいちゃんは東京の大学に進学してそのまま就職。その後、ひいおじいちゃん以降の片岡一族は、みんな東京や横浜に根を張ったから、少なくても我々と交流がある人は、もう岡山には誰も居ないわけ。

秀亮ここで手掛かりが途切れた訳だね。ぷっつーんと。拓人ただうつ手がない訳ではないんだ。僕らのおじさん、君たちにとっては大叔父さんの昇さん、知ってるよね。

友香果歩ちゃんの結婚式に来てた人だ!ニコニコしたおじいちゃん。

拓人その昇さんがいま、岡山で暮らしているんだよ。

秀亮えっ!なんで?原子力関係の技術者じゃなかったっけ?

拓人その辺は兄貴から。

秀一昇さんは京都大学を出て、原子炉の技術者として長年勤めてらした。定年を機に岡山に戻って、ご先祖様のお墓を守りながら、片岡一族の歴史を調べたりしているんだ。彼なら今回の大発見のこと知ってるかもしれない。どうだい?適任者じゃないか?秀亮適任者どころじゃないですよ、彼を置いて他に聞くべき人なんている?って話ですよね。

秀一じゃあこうしよう。お父さんがあらかじめ昇さんに連絡しておくから、その後、秀亮と友香ちゃんが電話をするって段取りでもいいかな?

拓人そろそろ80歳のはずだけど、長年、日本の最先端技術をリードしてきた技術者なんだから、リモートも対応してくれるんじゃないか?

秀一確かにそうだな、ではそこも含めて聞いてみよう。2人ともそれで大丈夫かな?

秀亮あのー・・・、これ可能ならなんだけどね。無理ならいいんだけど、 岡山まで、直接昇さんに話を聞きに行くのはやっぱりダメかな?

秀一 いや、それは秀亮・・・。

拓人(2人の会話に割って入って)無理じゃないよ、全然ダメじゃない。いいじゃん、行けばいいよ、つーか行った方がいいと思う。兄貴、12歳で岡山なんて、なんていうか、もう、チョチョイのちょいだよ。秀一そう興奮するなよ。

拓人ヒデくんはさ、なんで行きたいと思ったの?

秀亮見てみたいって思ったんです。今回調べてみて、ちょっとビックリしたと言うか。僕たちの先祖が源平合戦の頃、850年近く前にやって来て住み着いた土地があって、そこが僕やお父さんや、片岡家みんなのルーツなんだって初めて知ったら、なんか感動?しちゃって。その場所に行って、先祖たちが吸っていた空気を吸って、見ていた景色を自分の目で見てみたいです。

拓人その答え100点満点中100点!兄貴、行かしてやんなよ。何なら金は俺が出すからさ。秀一条件があるけどいいか?

拓人何だよ怖いな。

秀一お前が言った通り秀亮の答えは100点だった。直接訪れて感じることは大切なことだ。だから友香ちゃんも一緒に行かしてやってくれ。その分は私が出す。

拓人何だよ、結局「行って来い」で「バーター」かよ。

やった!と喜んでいる秀亮と友香。

秀一(拓人の肩に手を置いて)子供ってちゃんと成長してるんだな。お前じゃあるまいし、私らしくもないが。ちょっと感動したよ。

拓人なかなか、ああ言った主張をする子じゃないと思ってたからさ、俺もびっくりしたよ。でも、これであの件2人にバレちゃうぜ、いいのか?

秀一いずれわかることだし、我々からより昇さんからはっきり言ってもらったほうが、2人も納得できるだろ。それに、あの年齢で先祖伝来の土地へ行って、その空気を吸ってくるのも悪いことじゃないしな。

拓人ついでに受験の息抜きにもなるってか(笑)

秀一まぁな、そういった期待もないわけじゃない(笑)⸻⸻シーン6 新横浜駅改札前⸻⸻新横浜駅外観改札前腕時計を見ながら立っている秀一・秀亮親子そこに拓人・友香親子がやってくる

拓人お待たせ!待ったか?

秀一まだ時間前だ、我々も今来たところだよ。

秀亮(モノローグ)昇さんとも連絡が取れ準備万端。僕たちは一週間後に新横浜駅に集合した。岡山では2泊3日。初日は市内観光してホテル泊、2日目は昇さんのご自宅に泊めてもらう事になった。

拓人友香、弁当の仕込み大丈夫か?

友香(弁当が2個入った袋かざして)うん大丈夫、任しといて。

秀一なんだ、弁当がどうかしたか?拓人いやいや、最初の駅弁はうちの奢りということで。そろそろ時間だな。じゃあ、行ってらっしゃい。

秀一気をつけて行って来なさい。友香ちゃんよろしく頼んだよ。秀亮・友香 「行って来まーす」「お土産お楽しみに」など。 改札を通り出発する2人。拓人行ったな。

秀一うん、行ったな。なんだかんだで、初めての保護者なしの旅だ。大丈夫かな。拓人大丈夫大丈夫(笑)きっとひとまわり成長して帰って来てくれるよ。ところで兄貴、久しぶりにお茶でもどうだ?ちょっと話もしたいしさ。

秀一何だよ珍しいな(笑)金の話ならなしだぞ(笑)

拓人まさか。子育ての話だよ子育ての、あと教育に関する今後の話。⸻⸻シーン7 新幹線車内⸻⸻出発する新幹線新幹線車内 2人席窓側:秀亮 通路側:友香

友香いやー、新幹線ですね、新幹線。

(手すりをバンバン)上がるよねぇ、何だかさ。(シートに座り直して、また手すりをバンバン)こう、乗り心地が、ねっ、何とも新幹線・・・。おいヒデ!何か言ってよ!

秀亮(急に車窓に目をやってつぶやく)早いな、さすが新幹線だ。

友香(ガクッ)なんかさー!緊張するよね。保護者なしの新幹線で1(ひと)緊張。保護者なしの2人旅で2(ふた)緊張、みたいな?

秀亮いなくなって分かる保護者の偉大さ(笑)友香やめてよ、死んじゃったみたいな言い方。そうだ!こんな時は弁当だよ弁当、ねっお弁当食べよう。うちのパパいつも言ってるよ「技術さんには弁当食わせとけば大丈夫」って。(袋からシウマイ弁当とペットボトルのお茶を出して)

秀亮 おっ!シウマイ弁当、いいね。ハマっ子の心の拠り所、 シ・ウ・マ・イ弁当。友香でも東京の人とか、横浜の人間は年がら年中、シウマイ弁当食べてるとか思ってるよね。秀亮それある!横浜あるあるだ!横浜の人間も特別な日にしか食べませーん。それじゃぁいただきます。友香ちょっと待った!その前に・・・。お弁当の蓋をよーく見て頂戴、何か違いはないかな?秀亮えっ?違い?あっほんとだ!紐が違うね。友香でしょ、掛け紐ありに、掛け紐なし。

秀亮掛け紐ありしか見たことなかったよ。

友香横浜工場で作った駅弁は掛け紐ありで、東京工場で作った駅弁は掛け紐なしなの。

秀亮へぇ知らなかった。

友香だから東京駅から乗って来た人のシウマイ弁当は掛け紐なし。新横浜から乗って来た人は掛け紐ありってわけ。まあとりあえず食べよ食べよ。シウマイ弁当を食べる2人

秀亮ってことはさ、この弁当東京で買ったの?

友香そうですよ、そのために1時間早くウチを出て、品川駅まで行って買って来たわよ。パパの命令で(笑)

秀亮拓人おじさんが?

友香パパは雑学命の人だからさ。「こーんなくだらない話でも、ヒデに披露しながら食べたら、弁当何倍も美味くなるぞ」って。秀亮確かに美味しくなった気がする。友香パパはさ「兄貴と違って」ヒデのパパね。「兄貴と違って俺は学歴がないからなぁ、東大卒の兄と専門卒の弟だから」。「きちんと学問ってやつをしたことないから、人間に重みがないんだよなぁ」って酔っ払うとよく言うよ。秀亮あの拓人おじさんがねぇ、意外だな。そんなこと気にしない人だと思った。友香「だから軽~い雑学で調子良くやってるんだ」って。「でも幸せなことに仕事が楽しくて仕方がないんだ、自分で選んだことだから」「友香も自分が自分でいられる人生を、自分で選べばいいよ」って、もう聞き飽きちゃったけど(笑)「これは娘には言っておきたいヤツ!」感がすごいんで、我慢して聞いてあげてる(笑)

秀亮ウチはお父さんが外でどんな仕事してるのか、その仕事を楽しんでるのかなんて、全然知らない。学歴の話なんてしたことないなぁ。

友香私なんかは、あのパパの娘だから、学歴なんてあっても無くてもどっちでもいいと思うけどさ。とはいえ、あって困るもんじゃないんだから!ヒデはとりあえず中受頑張るといいよ(笑顔)ねっ!秀亮うーん、そうだなぁ・・・。秀亮(モノローグ)(シウマイを食べる友香の横顔を見ながら)軽い風に見せつつ、逆になんか人間的に重みがあるんだよな、この親子は。⸻⸻シーン8 喫茶店⸻⸻駅構内のチェーンのコーヒーショップ着座している秀一お盆にコーヒーを2つ乗せて運んでくる拓人

拓人お待たせ、カフェラテで良かったんだよな。

秀一おぉ、サンキュー。(カフェラテの蓋を開けようとして)あれ?これこうだっけ?

拓人(自分の蓋を開けるところを見せて)こうだよこう。

秀一あっこうか、こう、なるほど。

拓人東大じゃ蓋の開け方習わないのかよ・・・。

(カフェラテ一口飲んで、一瞬ビックリしたように)って、こう言う発言が学歴コンプの根深さだよな。自分では気にしてないつもりなのにさ(笑)

秀一お前に学歴コンプは無いだろうよ。仕事めちゃくちゃうまく行ってるって聞いてるぞ。売れっ子だって。年収じゃ全然かなわないって同期が言ってたぞ。

拓人東大情報網か?まぁうちの業界も東大だらけだからな(笑)とはいえフリーなので、明日のことは分かりませーんってな。まぁ俺の場合は、言っちゃえば逆学歴コンプだな。勉強ができるのに、家の事情で大学行けなかった様な奴に対する申し訳なさとかな。

秀一確かに・・・アメリカの美大行って、しかも中退だからな。

拓人あんときは流石の親父も怒ったもんな。で、挙句に専門通いながら制作会社でADのバイトだろ(笑)金いくら無駄にしてんだって話だよ。兄貴と違って、やるべき時に、やるべきことが出来なかった半端者、って負い目はあるよ。かといって、後悔してるわけじゃ無いけどな。

秀一俺なんて「誰よりも優秀な人間になるように」で秀一だろ。プレッシャーはあったな、やらざるを得ない雰囲気だった。

拓人兄貴が優秀な「秀一さん」やってくれたおかげで、ノーマークに育った俺は自分の人生を「拓人」さん。で、こんなんになっちまった(笑)

秀一まぁ兄弟のバランス的には良かったんじゃないのか?こういう話題になったから、お前の意見が聞きたいんだけどな。秀亮の中受なんだが、どう思う?

拓人まぁ俺が兄貴ここに誘った理由も実はそれだよ(笑)俺の見立てなんで、違ってたら申し訳ないんだが、ヒデのやつ迷ってるな中受。本当に自分がしたいのか?親に言われてるからやってるのか?

秀一私としては「してみてはどうだ?」とは言ったけど、強制しているつもりはないんだがな。

拓人とはいえ子どもにとって、親の意見は大きいからな。俺が嫌なのはよく親たちが言うあれ。「今やりたいことが決まっていないなら、とりあえず受けたら?学歴はあって困るもんじゃないんだから」ってやつ?普段子どもに「問題を先送りにするな」と教えといて、こと学歴となると「先送りにしたら?」なんだよ。なんかな、学歴ってそんなに大事か?って俺は思っちゃうんだけど・・・。でも「この国は学歴社会である」という厳然たる現実があるのも確かなんだよなぁ・・・。だから答えは「俺にはわからない」でも「俺の娘には好きにさせる」だな。

秀一しばらくは様子を見てみるか。

拓人結局先送りか。まあ受験するにせよ、しないにせよ、ヒデや友香が将来、自分らしい人生を歩めれば言う事なしなんだがな。⸻⸻シーン9 新幹線→岡山到着⸻⸻眠っている友香車窓を見ている秀亮田畑、工場地帯を抜けて、だんだん瀬戸内海のきらめきが遠くに見え始める。眠っている友香を、ちょっと眩しそうな表情で見つめる秀亮秀亮(モノローグ)ちょっとだけ、胸がドキドキしている。ひいおじいちゃんたちの、そして僕のルーツがある土地に、今、本当に向かっているんだ。⸻⸻岡山駅ホーム⸻⸻新幹線が到着し、2人が降りてくる駅舎から出てくる2人駅前には桃太郎の銅像友香おお、岡山と言えばやっぱこれだな。やあやあ、どーもどーも!出迎えありがとう桃太郎くん。ヒデ、早く猿くんと雉くんにも挨拶挨拶。秀亮ハイハイ俺は家来担当ね、まったくもう!(と言いつつ律儀に挨拶)よろしくな猿と雉。友香何でちょっと上から(笑)人としての誇りか(笑)そうだ写真、写真、写真を撮らねば!ヒデあの人たちに頼んできてよ。秀亮嫌だよ外国の人じゃん。俺たちが撮ってあげる立場でしょ本来。友香本当にヒデは常識にとらわれてんな。だったら「テイクアピクチャー イーチアザー」でいいじゃん。ちょっと待ってろよぉ。(友香外国人と交渉中)(お互いに桃太郎との写真撮り合いっこ)友香サンキューソーマッチ、バイバイ!

(走って戻ってくる友香)友香スペインから来たんだって。あの人たち帰国した後「どうだったジャパンは?」とか友達に聞かれて、観光地で写真撮ってくださいって頼まれちゃったよ、日本人に間違われたのかな?俺日本人に似てる?HaHaHaHaって、旅の話題が一つ増えたじゃん。ヒデももっとオープンマインドでね。女性観光客すみませーん、写真いいですか?秀亮はいはいはい、喜んで!写真を撮ってあげるヒデ友香ふーん女性だとねぇ、ふーん!

秀亮違うよ、友香ちゃんのおかげで人見知り克服して、ちょっと成長したの。友香ふーん!ま、いっか。さぁ観光観光、どこいく最初にさ。ヒデ観光案内所の地図を覗き込む秀亮その前に昼飯じゃね?

友香ちょっとそれ見せてみ?

秀亮順番、順番、、、。友香ガイドマップ奪い取ろうとしてちょっと揉み合いはずみで友香の手首を掴んでしまう秀亮一瞬ドギマギする秀亮、意に介さない友香にマップを奪われる友香岡山名物って何だっけ?

デミカツ丼食べる2人

友香うまいな(笑)

秀亮うまいね(満面の笑)

お茶を飲みながらガイドを見ている秀亮

秀亮このあと岡山城と後楽園行って、商店街ぶらぶらしてホテルかな。

⸻⸻シーン10 岡山城⸻⸻岡山城天守閣前観光客が写真撮影をしている秀亮(パンフレットを読みながら)「宇喜多秀家が築いた西国有数の名城」か・・・。なんかさ、歴史って実物見るとグッと近くなるよねー。横浜にはお城ないからさ、実際のお城見るとなんか上がるよね

友香(笑)ご先祖様の六兵衛さんも、毎朝ここに出勤してたってことかな?

秀亮いや、六兵衛は無役だったからここでは働いてないだろうね。

友香じゃあここでは、ヒデのパパみたいな優秀な選ばれたエリートさんが働いてたってこと?秀亮いや、本人の能力もあっただろうけど、多くは世襲だろうね。

友香家柄かぁ・・・。ある意味、学歴で逆転できる今の方が平等なのかなぁ。

友香の横顔を見ている秀亮(何か考えるところがありそうだ)

2人で天守からの眺め遠くに旭川と後楽園

秀亮(モノローグ)850年前、僕らの先祖が根を下ろそうと思った土地。その土地にいま僕は確かに来ているんだ。⸻⸻シーン11 昇の家(到着~昼)⸻⸻2日目 ホテルの前迎えを待っている秀亮友香が荷物を重そうに持ちながらゆっくりと歩いてくる

秀亮遅いじゃん、って顔色悪くない?具合悪いの?大丈夫?荷物持つよ。友香ありがとう平気平気。(と言いつつちょっとしんどそうな友香)それにしても、わざわざ昇さんに迎えに来てもらうの悪いなぁ。言っちゃ何だけど80歳でしょ。私たち自力で行けなかったの?秀亮いや俺もそう言ったんだけど、「先祖伝来の土地を舐めてはいけませんよ」って。友香あっ!あれじゃない?来た来た。こんにちは。軽自動車に歩み寄る秀亮こんにちは、わざわざお迎えありがとうございます。

昇(運転席から片肘出して)おお、遠いところよく来たねぇ。ようこそ、ご先祖様のふるさとへ。軽自動車の前で2人並んでぴょこんと挨拶。秀亮お世話になります!友香おじゃましまーす!昇まぁ挨拶はあとあと、乗って乗って。走り出す軽自動車秀亮ご無沙汰してます。昇こちらこそご無沙汰してます。果歩ちゃんの結婚式以来ですね。秀亮今回は突然のお願いすみませんでした。昇何の何の、君たちのお父さんたちとは、彼らが君たちくらいの時よく遊んでもらったよ。おっと!ちょっと気をつけて。車が大きく跳ねる道無き道をいく軽自動車友香わたたたっ!すごい道だ!!というかこれ道?確かにこりゃ自力で辿り着くのは無理だったね。秀亮友香ちゃん失礼だよ、失礼。道無き道をいく軽自動車昇わっはっはっ!(大笑い)いいんですよ事実ですから、事実は事実として厳粛に受け止める。これが技術者の基本ですから。で、事実を厳粛に受け止めると、自力で辿り着くのは・・・。秀亮・友香無理でーす!昇わっはっはっ!(大笑い)

3人で大笑い⸻⸻昇さん宅外観⸻⸻古い日本家屋室内に入る3人居間の壁には古い白黒写真、本棚には分厚い郷土史や資料ファイルがぎっしり並んでいる。

友香わぁ・・・図書館みたい。個人の家とは思えない、変人の棲家?ぽいかも・・・。

秀亮 (ひそひそ声で) 友香ちゃん、失礼だよ。

昇そうですね、変人の爺さんの家に相応しいと思いませんか?(笑)

秀亮 いやいや、変人の爺さんなんて、とんでもないです。 素晴らしいです。

昇 理系を極めた人間にとって「変人」は褒め言葉です。 「爺さん」は事実なので、理系として厳粛に受け止めていますよ(笑) つまり私らしい家という評価で嬉しいです。

秀亮(本棚を見て)「瀬戸内町誌(大正版)」「瀬戸内町誌(昭和60年版)」・・・。これ俺がネットで、やっとこさっとこPDFの一部を見つけた史料だ。

昇そう、君がネットで見つけたっていう本。現物はこんな感じです。一冊をそっと手に取ってテーブルに置く。友香この史料が全てのきっかけだと思うと・・・、しかも原本がここに・・・ねぇ。秀亮この原本に会いに、ここに来た気がするかも。昇彼らもね、昔ここでこの史料見て大騒ぎしてましたよ。「世紀の大発見だ!」とかね。秀亮・友香「え・・・?」と顔を見合わせる昇その話は、あとでゆっくりしましょうか。まずはお昼ごはんにしましょう。ここらの魚は美味しいですよ。

大叔母さん(台所から出てくる)いらっしゃい いらっしゃい。さぁさ、お昼の準備してありますから、食べましょうね。

友香どうもありがとうございます。(大叔母さんの方に歩いて行く)大叔母様ちょっとだけ宜しいですか?

2人で隣の部屋に入っていく

秀亮何ですかね、変なの。

昇まぁね、女性には女性の話があるんでしょう。さぁ、我々男衆でご飯運んじゃいましょう。

秀亮はい。

立ち上がって、台所に向かう秀亮

⸻⸻シーン12 昇の家(夕方~夜・片岡家存亡の危機)⸻⸻夕方 縁側3人でスイカを食べている、庭先には、昔ながらの井戸と、小さな畑

秀亮(モノローグ)昇さんは数少ない残された史料から、この地域と片岡家の歴史をかなり詳しく調べていた。

昇この地域は、タタラ製鉄と刀鍛冶集団が集まる場所でした。片岡家は1180年から1185年の源平合戦の頃に移住してきた、刀鍛冶と鋳物士集団の一族と推測されています。

秀亮(モノローグ)中でも衝撃的だったのはこの話だった。

昇片岡家最大の危機は、戦国時代の北の山向こうの人との諍いでした。片岡家は夜襲を受け、子守のお手伝いさんが助けた赤ん坊1人を残して、全員が殺されてしまいました。今の片岡家は、その子の子孫だと言われています。どうやって一家が立ち直ったかまでは、史料にはありませんが、近くの一族が助け合ったのは間違いなさそうです。友香まるで大河ドラマみたい・・・。でもそれが私の先祖に起きた現実だと思うと・・・。何だか怖い。秀亮(モノローグ)歴史の話って、自分とは直接には関係のない出来事だ!と思ってた。でも昇さんの話を聞いていると、僕が僕であるのは偶然ではなく、遠い昔からの、たくさんの人や出来事が、僕が僕であるために、繋がっているように感じたんだ。生き残った赤ちゃん・六兵衛さん・ひいおじいちゃん・お父さん、そして僕。もちろん友香ちゃんも。僕も友香ちゃんも、自分たちが思っていたより大切な存在に感じられた。

昇このお手伝いさんが赤ん坊を助けなければ、今ここにいる僕ら全員いなかったわけです。いや、これは例えばの話じゃないんです、実際にそうなんです。僕らはみんな、見えない糸で繋がっているんです。秀亮(モノローグ)僕は大発見に関する質問を昇さんにぶつけてみた。

秀亮どうして、いっさいの続報が抹消されたんですか?

昇あれ?お父さんたちに聞かされてない?

友香あれ?パパたちこの話知ってるんですか?

昇奴ら言いにくい話を私に押し付けたな(笑)知ってるも何も、彼らが君たちくらいの時に、大発見!大発見!と張り切って私に報告に来ましたよ。秀亮・友香、顔を見合わせて。

友香えっ!?どういうこと?

昇「世紀の大発見です!」「国家レベルで調査が必要です!」ってね(笑)

秀亮(頭を抱えながら)あちゃー、そういうことか・・・。

友香遺伝子って怖いねぇ。

昇その時私は彼らにこう言ったんです。続報が抹消された理由は・・・。あまりにも馬鹿馬鹿らしすぎて、みんな嫌になっちゃったんじゃないですか?ってね。秀亮えっ?どう言うことですか?ちょっと理解が・・・。

昇全部嘘っぱちの出鱈目ってことですよ。坂本龍馬を助けたなんて。奉行所の役人も、その後の記者2人も、本当のことを知って、しまった!やっちゃった!って思ったんじゃないんですか?世紀の大誤報、恥となる文書を書いてしまったわけですから。しかも土佐藩の手前、政治的にもデリケートな問題だ。だからなかったことにして、頬かぶりしちゃったんでしょ。あの2人にもそう言ったのにな。一族の恥だから口にするのはもうよせって。秀亮よかったら詳しい内容教えていただけますか?

昇本人が書いた自筆の文書がありますよ。そのほうが正確で確実でしょう。

秀亮よかったら見せていただいてもよろしいですか?

昇あれは友香ちゃんのお父さんの拓人くんが、横浜に持ってっちゃったはずですよ。秀亮・友香顔を見合わせて「えっえー!」

縁側に秀亮・友香2人並んで腰掛けている。横浜では聞けないほどの夏の虫の音。うるさいくらいに、でもそれが心地良い。

秀亮お父さん達、どういうつもりだったのかな?わざわざ岡山まで来させてさ。

友香まぁ、パパ達なりの理由があったんだと思う。だってあの場でさ、実はパパ達がどーして、こーして。って始めたら、私たちはこんなに先祖に近づいた気持ちになれなかったと思うしねー。

秀亮たしかに、おかげで自分も片岡一族の一員なんだって気持ちが強くなったよ。まぁ末席だけど(笑)。

友香それにさ、私はヒデと初めての2人旅できて楽しいよ。だからそれはそれでいいや、って感じ?ヒデは?楽しい?

秀亮いや、まぁそこに関しては・・・楽しかったというか・・・。

友香ヒデね、そう言うとこはしっかりして、お願いだから。私と2人旅したい男子なんかうちのクラスに山ほどいるんだから。

秀亮ハイ、それはわかってます、ハイ・・・

友香そう言うところがね、まぁいいところと言えば、そうなんだけどもねぇ。(友香、秀亮の目をしっかりと見ながら)あとね、これはヒデだから特別に言うんだけども。私は今朝からある事情があってとても体調が悪いんで、もう寝るから、で、明日は重い荷物はヒデに持ってもらうからね。いい?

秀亮はい・・・。

友香じゃあ私寝るから、おやすみ。秀亮おやすみ・・・なさい。

縁側に一人残された秀亮

秀亮(モノローグ)それって、いわゆるアレのことだよなぁ、多分なぁ。そんなこと言われたってなぁ、どうすりゃいいかなんてわかんないよ。つーか普通俺に言うか?言わないだろ。でもヒデだから特別って言ってたよなぁ。それはちょっと嬉しいことではあるよなぁ・・・。相手の気持ちになったら、ってそう考えれば良いのか?相手の気持ちかぁ、、、。

悩みながら夜が更けていく

⸻⸻岡山駅⸻⸻岡山駅前で昇さんに別れを告げる2人軽自動車で走り去る昇さん昇さんを見送る2人

秀亮さてっと、友香ちゃん、荷物荷物、俺持つよ。

友香そっか、昨日お願いしたんだっけ。忘れてたよ(笑)どうもありがとっ。

荷物を渡す友香。「よいしょ」っと荷物を担ぐ秀亮二人並んで改札まで歩く後ろ姿

秀亮(モノローグ)これで良いんだよな、間違ってないよな。でも、こうやって2人で並んで歩いてると。なんかちょっと、大人のカップルぽい?荷物は重いけど、なんか嬉しい感じ?大人のカップルって、こんな気持ちなのかな。

新幹線に乗車する2人走り出す新幹線車窓から流れる岡山の街を見ている秀亮秀亮(モノローグ)結局真相は足元にあったわけ。何だか「幸せの青い鳥」みたいだけど。僕らは横浜に逆戻り。でも岡山に来て、実際にその空気に触れて良かったと思うから、お父さんたちの狙いはそこにあった!と思うことにしよう今は。⸻⸻シーン13 拓人家の居間・事件の真相⸻⸻拓人家の居間に入っていく秀亮と友香。秀亮旅行以来だね。

友香そうだね、元気にしてた?

秀亮俺は大丈夫、それより友香ちゃんだよ 具合よくなった?この一週間ずっと心配だった。

友香へへっ、大丈夫。女の子はね一週間もあれば治っちゃうんだよ。心配してくれてありがとね、嬉しいよ。

なぜか顔を赤くなる秀亮自分の席に着席する2人拓人が本を手に、座っている3人の前に立っている

秀亮(モノローグ)友香ちゃんの家に関係者全員が集合した、と言っても4人だけだけど。日本を揺るがす・・・かもしれない大発見の発表の場としては、少々寂しい人数だ。

拓人(2冊の本を手に)さてここに、我が家に代々伝わる六兵衛自筆の書き物がある。例の一件の仔細がしたためてある、ある意味一族の恥だから門外不出だ。

秀亮一族の恥、ということは出鱈目の嘘っぱちという話は・・・?

拓人本当だ、だがこの話をどう受け取るかは、、、。読んだもの次第、君たち次第だ。ちなみに俺はこの話を恥とは受け取っていない!だからこうして横浜まで持ってきて、保存しているわけだ。

友香パパは恥とは受け取っていないのね。大嘘なのに?

拓人そうだ、俺はこの話を恥とは受け取っていない!むしろ逆だとさえ思う。

秀亮お父さんはどうなの?

秀一まぁ、どっちとも言える・・・。という立場だ。

拓人(2冊から1冊を右手に持ち替えて)で、こっちは六兵衛の孫の強がこの本をもとに、簡単な追加取材をし、自らの見解も含めしたためたもの。口語になっているから、小学生でも読めると思う。私が抜粋したところを、朗読する形で進めるけど、いいかな?一同神妙に頷く

秀亮(モノローグ)そうして片岡一族の2組の親子による、不思議な朗読会は始まったのだ。⸻⸻強の手記①・・・したためた理由⸻⸻(拓人が読み始めて、2行目から再現VTR&強の声)一昨日祖父が亡くなった。大学から10日間の休みをとって東京から夜行で駆けつけたが、今際の際には間に合わなかった。今日葬儀が執り行われた。「公に送ってもらえる立場ではないから」との祖父の希望で極めて質素な葬儀となったが、祖父らしく和やかで穏やかな式だった。大学からは10日間の休みをとっているが、今更この街で見るべきものもない。ちょうどいい機会なので祖父の人となりを、文章として残しておくことを思いついた。とりわけあの大騒動の顛末を、祖父の手記を元に振り返ってみたい。⸻⸻拓人家居間⸻⸻拓人、本をパタンと閉じて。

拓人こういった次第だ。

友香亡くなった2日後から書かれたのね。そもそも六兵衛さんてどんな人だったのかなぁ。⸻⸻強の手記②・・・かねインタビュー⸻⸻(再現VTR)

強(モノローグ)私の知る祖父は好々爺然とした優しい穏やかな人だった。いつも隅の方からにこやかに家族を見守っている、しかし静かな威厳が漂う人だった。幼馴染で晩年まで茶飲み友達だったかねさんに聞いてみた。

団子屋の扉を開ける強

強こんにちは・・・。

かねあれ!強くん、帰ってたの。(本当に久しぶりじゃないと言いかけて)あっ、この度は本当にご愁傷様なことで・・・。

強、店の椅子に座って

強今日はちょっとかねさんに聞きたいことがあってね。

湯気の経つお茶と饅頭

かね六さんの若い頃ねぇ、なんせもう昔のことだから・・・。時効ということで、ちょっときつい事言うね。みんなの評判は「臆病者」だったわね。小さな頃から喧嘩や口論をした試しがないし、危険な遊びもしたことがないでしょ。もちろん武芸も苦手だしね。

⸻⸻拓人家居間⸻⸻友香、秀亮を指さして笑顔

友香(ひそひそ声で)ひょっとして、生まれ変わり?

秀亮(ひそひそ声で)バカ言わないで。

⸻⸻強の手記②・・・かねインタビュー⸻⸻(再現VTR)

かねそうそう犬が嫌いで、少し大きい犬がいると道をよけて通ってたわね。⸻⸻拓人家居間⸻⸻友香(ひそひそ声で)遺伝?遺伝だ遺伝(笑)ロクとヒデそっくりじゃん。

秀亮やめろって、ちゃんと聞けって。あとロクっていうな。⸻⸻強の手記②・・・かねインタビュー⸻⸻(再現VTR)

かねネズミを見ると飛び上がって、蛇なんか見たらもう蒼くなっちゃって。人間て本当に顔色が蒼くなるのね、私あれ見た時びっくりしちゃったわよ(笑)それで自然と家中一般の評判になっちゃって、しまいには本人まで自分は臆病者だと信じ込むようになっちゃってね。でも私はそうは思わなかったね。犬や蛇が苦手なのは、犬や蛇が苦手だってだけのことでその人間が臆病かどうかとは何にも関係ないよ。六さんは虫や草や弱いものには優しかったし、私みたいなものにも思いやりを持って接してくれた。本当の臆病者ってのはさ、意味もなく威張り散らして人に当たるやつだよ。そう言う意味で、少なくても私は六さんを臆病者と思ったことは、一度もないわね。⸻⸻拓人家居間⸻⸻友香(ひそひそ声で)私もそう思う!ロクとヒデ臆病者なんかじゃないもん。あえて言えば俊輔だ。

秀亮(ひそひそ声で)やめろって、あとロクもだめ!

⸻⸻強の手記②・・・かねインタビュー⸻⸻(再現VTR)

かね臆病者の評判でお嫁さんのきてもなかったけど、本人は大して気にしてなかった感じだったねぇ。そのかわり、本人が大いに気にしちゃったのがあれよあれ。卑怯者って言われたこと。どこでって、場所?ここよ、この店で集まってたのよ。本当になんてことない、仲間内のお茶飲み話だったんだけど・・・。

⸻⸻同僚1⸻⸻(再現VTR)同僚1まぁ片岡殿の評判は家中に知れ渡っているが、それを気にしないところが、片岡殿の心の広さというか、大らかさというか、見習いたいですな。ほら、何でしたっけあれ?あれですあれ・・・そう!卑怯者。その一言を聞きブルブルと震え出す六兵衛、額からは大汗。

六兵衛そ、そ、即刻取り消していただきたいその言葉!

同僚1はて、何をそんなに興奮して片岡殿らしくもない。

六兵衛と、と、取り消していただきたいと申しております!

同僚1はて、卑怯者でございましたっけ。

六兵衛せ、拙者は確かに臆病者と呼ばれております。それは私も納得しています、事実臆病ですからどうぞお呼びくださいと、腹を立てたこともございません。しかし!しかし卑怯者となりますと話は違いますぞ!

同僚2臆病も卑怯も大して変わらんではないですか?

六兵衛全然違う!武士に卑怯とは絶対に聞き捨てなりません!片岡家一族に顔向けできません。私が私であるために、その一言は許すことができません!どうか、言い改めと謝罪をお願いいたします。

⸻⸻かねちょうどこの部屋だったのよね、私はあそこの廊下で聞いててさ。ほら私もさ、幼馴染だからさもう頭きちゃってね。そこの襖ガラッと開けて言ってやったのよ。あなた方は臆病と卑怯の区別もつかないんですか?六さんのことは小さい頃から知ってますけど、ずるい事や人の足を引っ張るような事してるの見たことありません!本当に優しいいい人なんです!ってね。もう、腹たっっちゃってねホントに。え?六さんのことが好きだったかって?やなこと言うね強さんも、ええ好きでしたよ幼馴染ですもん。なんで一緒にならなかったって?なぜかしらねぇ、、、。六さんも多分私のこと好いてたと思うんだけどねぇ。でもこう言うことって、そう言うもんなのよ。結局2人とも違う人と一緒になっちゃったもんね。

⸻⸻拓人家居間⸻⸻友香(ひそひそ声で)そう言うもんなのかなぁ。なんかやだなぁ。そういうとこはロクとヒデ似てないといいけどなぁ。ヒデ大丈夫だよね?

秀亮(ひそひそ声で)だからやめろって、あとロクも!

⸻⸻強の手記③・・・かねインタビュー⸻⸻(再現VTR)

かね一緒になるとかさ、こればっかりはわかんない、、、。えっ?話の続き?そうそう御免なさい、変なこと聞くからすっかり脱線しちゃったわよ。それでね、同僚が謝罪をしなかったんで、六さん席を蹴散らすように立っちゃって。自宅に戻って3日3晩「家中では私を卑怯者となじっていたのか」と、うんうん唸って、そいで思いついちゃったのよあれを・・・。⸻⸻拓人家居間⸻⸻拓人何としても卑怯者の汚名を晴らしたいと思った六兵衛は、本当にバカなことを思いついちゃうんだ。

秀亮どんなことですか?バカなことって。

拓人賞金首や仇討ちの剣豪の首をとって、卑怯者の汚名を晴らそうとしたんだな。武芸苦手なくせに。

友香バカだねぇ。ご先祖様にいう事じゃないけど、信じられないほどバカ。⸻⸻強の手記④・・・剣豪探し⸻⸻(再現VTR)

六兵衛(モノローグ)私は日中は街道を見張り、他国からやってくる賞金首らしき男を探した。夜は夜で飲み屋や、治安の悪そうな場所を廻ってはそれらしき男を物色し、飲み屋に誘い話を聞き出した。

六兵衛(道端で悪そうな男①に話しかける)いやいやこれはこれは、どうです?いっぱい奢りますから、ちょっとお話ししましょうよ、ねぇ、どうです?いっぱい奢りますから、ちょっとお話ししましょうよ、ねぇ。

六兵衛(飲み屋で男②に)なるほどなるほど、ではそのお首には何の賞金も掛かっていなければ、仇討ちのお札も掛かっていないと・・・残念ですねぇ。

酔っ払った男③(刀を振り回して)何でい何でい!あんまし失礼なことばかり抜かしやがると、コテンパンの、しっちゃかめっちゃかにしちゃうぞ。

六兵衛(真剣にめちゃビビりの六兵衛)あー暴れないで暴れないで、真剣はだめ、真剣は当たったら死んじゃうから!あーちょっとこっち来ないで、皆さん逃げて!ひとごろしです、ひとごろし!!

六兵衛(モノローグ)私が考えていた以上に世間はまともであり、私が手をかけても、どこからも文句が出なそうな男は中々見つからない。しかしついに私は見つけてしまったのだ、うってつけの仇討ちの看板を背負った男を・・・。それがこの男、梶 広一朗。

六兵衛いやーお近づきの印にどうぞ一杯。はいはいはい、遠慮は入りません。

六兵衛(モノローグ)最近この居酒屋に、ちょくちょく顔を見せているらしい。剣と槍の腕は一流だが、その腕を鼻にかけた尊大な人物との噂。仕官のため全国を巡っているが未だ仕官の道はなく貧乏暮らし。自分の持っている才能・能力と現状の立場の差に納得がいっておらず、常に苛立っている。そして・・・。

六兵衛えっ!梶さんは仇討ちの対象者でいらっしゃる!!

広一朗しーしーっバカ、そんな大きな声で言うな。だからよ、どこかに仕官さえしてしまえばこんな町場でウロウロしてるより、仇討ちから見つかる可能性がグッと下がると言う算段よ。

六兵衛なるほど、それは妙案ですな。(立ち上がって腰が引けたまま後退りながら)ここで相談、いやお知らせなんですが、突然ですがその仇討ち私が代行させていただきます。

広一朗(刀を手に立ち上がる)何だと!

六兵衛やめてやめて、立たないで立たないで、怖い怖い。か、刀抜かない、危ないからダメダメ。

広一朗(脇に刀を置き、勢いよく座って腕組み&足組み)理由を説明しろ!

六兵衛それはそうです、それはそう、当然その権利があなたにはあります。何だか私よか、あなたの方がまともな人に見えてきたくらいです。ただ、理由は長くなるので割愛します。あなたは黙って切られてください。

広一朗(刀を手に立ち上がって)何だと!おう!よしじゃあここで勝負だ。さっさと刀を抜いて勝負しろ!

六兵衛(どんどん後退り横倒しにした机を盾に)ちゃんとした勝負はしません、私が絶対に負けるからです。だから私はいつかどこかで、あなたに不意打ちを喰らわせます。いくらあなたが武芸の達人と言っても、不意をつけば何回かに一回は私が勝つかもしれない。それしか私には勝つ手はない

広一朗それでもお前は武士か?不意打ちなどそんな卑怯な手を使って、恥ずかしくないのか?正々堂々と戦う気は無いのか?そんなに卑怯な方法で勝って先祖に顔向けはできるのか?

六兵衛ずいぶんたくさん質問しましたね、答えるのが大変だ。左様私は武士です、名は片岡 六兵衛。不意打ちは卑怯です、でも今回に限り卑怯ではありません。私は「不意打ちを喰らわせますよ」と予告しました。予告した以上、断じてこれは不意打ちなどでは無いからです。正々堂々と戦う気は無いのか?無いです。だってあなたが勝つに決まってますから、あなたはいわゆる剣豪でしょ?私は武芸が苦手な臆病者です。勝負は見えています。あなただって手の届かない棚のものを取るときには、足台を使うでしょ。私にとってあなたは手の届かない棚で、足台が不意打ちです。これは卑怯ではなく”工夫”です。また、さっきから聞いていると失礼な人ですよあなたは。武士に向かって卑怯卑怯と連呼するなど、私でなければ決闘ものですよ。

広一朗だからそれを望んでおる、しようではないか決闘を。

六兵衛(ゆっくりと後退りしながら)危ない危ない、危うく口車に乗るところでした。武芸も上手くて口も上手いとは、油断ならない人だあなたは。

(走って逃げながら)と言うわけですから、首を洗って待っていて下さい!⸻⸻拓人家居間⸻⸻友香私、何だか梶さんが気の毒になってきた。

秀亮完全な言いがかりだもんな。

友香梶さんの子孫に会ったら、先祖がすみませんでしたって謝りたい気分・・・。⸻⸻強の手記④・・・付け狙う六兵衛⸻⸻(再現VTR)

六兵衛(モノローグ)こうして私は奴を付け狙うのだが・・・。

襲撃1昼間の大通り、家の影に隠れて梶を待つ六兵衛梶がやってきたのを見計らって飛び出し切り付けるも・・・。あっさりかわされ足を引っ掛けられ、勢い余ってくるくる回りながら川の中にドボン

襲撃2道を歩く梶の前に飛び出し吹き矢を向ける六兵衛。「この吹き矢には熊でさえも3秒でコロリと死んでしまう猛毒が仕込まれていて」と口上を述べていると、通りかかった犬がワン!「ヒッ!」っと思わず息を呑んだ途端、慌てて吹き矢を飲み込んでしまい、梶と通りがかりの人に介抱される羽目に。襲撃3梶が渡し船の舳先に乗っている、ふっと水面を見やると気泡が2、3泡ぶくぶくと浮いてきた。ほっほうコレコレはと眺めていると、水面に細い竹の筒が一本にゅっと出てきた。「おいオヤジその湯呑みを貸してくれ」船頭の弁当用の湯呑みを借りると、川の水をすくい竹の筒に流し込む。途端に竹筒を咥えたまま、咽せながら水面に飛び出してきた六兵衛。「わはははっ!まさか水の中から現れるとは思いもしなかったろう!覚悟!!」的なことを言いたかったのだろうが、聞いている方には「ゲホッ、ゲホゲホゲホ、ゲホッゲホッ、ウッゲェ」としか聞こえない。挙句に溺れ始め、梶と客に船に引っ張り上げられ、またも介抱される始末。

広一朗(笑いながら)もういいかげん理由を教えてくれ。なんなのだお前は、なぜ俺を付け狙う、しかもおかしな卑怯な手で。飲み屋で話をする2人・熱弁を振るっているらしき六兵衛

六兵衛(モノローグ)なぜだか知らないが、家中に知れ渡っている幼少の頃からの臆病者の評判や、そのせいで嫁が来ないこと。今回の「卑怯者」問題まで、気がつくと洗いざらい梶に打ち明けてしまっていた。記憶が定かではないが、最後の方は感極まって泣いていたような気もしているが、まさかそれはなかろう。

六兵衛(泥酔の大泣き)私は臆病ではありますが断じて卑怯ではないのです。私が私であるために、そこだけは断じて譲れない一点なのです。わかりますか梶殿。

広一朗なるほどな、お主の立場はひとまず理解した。むしろ同情さえしておる。とは言え、俺も縁もゆかりもないお前のために命をくれてやる訳にはいかんのでな。まぁ今しばらく付き合ってやれるだけは、付き合ってやろう。

(広一朗の手を両手で握り、 腕が取れちゃうくらいブンブン振って)

六兵衛梶さんあなたはいい人だ!

六兵衛(モノローグ)そしていよいよ運命の日が・・・。この日も私は朝から思案にくれていた。

六兵衛落とし穴を掘るのはどうだろうか。落ちたところを竹槍でグサリだ。これなら私は安全な場所に身を置いたまま、攻撃し放題だ!名案だぞ今度こそ!苦労して穴を掘っている六兵衛

六兵衛いやぁこれは大作業だな、人1人落とす落とし穴を掘るのがこんなに大変とは!さらに穴を掘り続け3メートルほど掘り進んだ穴の底で、穴を掘り続けている六兵衛に。謎の声(穴の上から声が聞こえる)おーい!

六兵衛はいはーい!

謎の声何やってんだ?

六兵衛落とし穴をね、掘ってます。謎の声あの梶、何がしとかを落とす穴か?

六兵衛そうです

謎の声上を見ろ、上だ上。六兵衛見上げると、穴を覗く満面の笑みの広一朗

広一朗手伝ってやろうか?

六兵衛(がっくり)あーもうここまでだ、全てがここまでだ。スミマセーン、穴から出るのを手伝って下さい。広一朗に手を引っ張ってもらって穴から出る六兵衛六兵衛何だかね、今の今まで、自分の知らないうちに自分が掘った、変な穴に入り込んでたみたいな気分です(笑)

広一朗とりあえず俺のねぐらに来い!酒ぐらいあるぜ(笑)

六兵衛(モノローグ)その後は、梶殿がねぐらにしている今は使われていない漁師小屋で、何故だか楽しく酒を飲み交わした。本当に楽しかった。六兵衛こんな楽しい酒は本当に久しぶりです!それにしてもお人柄が評判と違うというか、、、。

広一朗評判が悪いってことだろ。腕が立つ、これだけで世間は良くは言わん。腕を上げるためには常人がやらないような無茶もしばしばやるでな。その都度変人扱いだ。六兵衛(モノローグ)剣豪には剣豪の苦労があるのだ。

広一朗しかしそこまでやらんでは腕はあがらん!これは何かを極めたものにしかわからん!しかし世間の評判は修行のようにはいかん。これは剣の腕が上がり、名が上がるごとによーくわかった。ましてや俺のような愛想なしなら、なおのことだ。⸻⸻拓人家居間⸻⸻秀一あーこれわかるな。

拓人(本から目を上げて)何だいきなり。

秀一優秀すぎると叩かれるこの国における、憎まれない、足を引っ張られない優秀さの下限が東大なんだ。「すごいですね」と褒められるだけで敵視されない。損もまずはしないしな。そう言った意味でコスパが良いんだ東大は。

拓人逆に俺みたいに学歴のない奴が成功してると、とやかく言うやつも出てくるな、確かに。⸻⸻強の手記⑤・・・そして事件は起きた⸻⸻(再現VTR)

六兵衛(モノローグ)梶殿の話は、私にも共感出来るものが少なくなかった。

広一朗すると妙なもので、こちらも変にいじけてしまって、世間の評判通りの人間を装うようになってしまうから、おかしなものだ(笑)お主もそうなのではないかな。弱虫弱虫と言われている間にな(笑)妙なものだ人間などは、そして恐ろしいものだ人の評判とはな。

六兵衛(モノローグ)その後しばしば梶殿のねぐらを訪れ、酒を飲み交わすようになった。話してみるとなかなか良い人間で、仇討ちの件もよくよく話を聞いてみると喧嘩両成敗・・・。いやいや梶殿と親しくなった立場から聞くと、彼はむしろ被害者と言ってもいいようにさえ思えた。そして事件は起こった・・・。六兵衛(酒を片手に漁師小屋を訪れる六兵衛)梶氏今日も朝酒といきましょうや。いるんでしょ梶氏。扉を開けると倒れている梶駆け寄る六兵衛

六兵衛どうした、大丈夫か?どうした。

広一朗六さん遅かったな、待ってたぜ。

腹を押さえている梶の腹に手をやる六兵衛腹を触った自分の手には血がべったり

六兵衛大丈夫か?大丈夫なのか?死んじゃったりしないよな。医者だ医者、医者行けるか?呼んでくるか?

広一朗飲み屋でちょっとトラブルがあって、油断してたもんでな。確かに不意打ちはタイミングが良ければいい手かもな。

六兵衛しゃべるな、大丈夫なのか?お主を死なせるわけにはいかん!何としてもだ。

広一朗大丈夫だ、生きるの死ぬのって怪我ではない。ただ本名で医者にかかるとまずいってのはわかるだろ。六兵衛仇討ちの件か。

広一朗そうだ、だから偽名でなければいけないんだが、もう面倒くさいからここは坂本龍馬ってことにしてくれ。瀕死の坂本龍馬を救ったとなりゃ、お前さんの評価も上がって、もう誰も臆病や卑怯とは言わねえよ。だから、ここからは小さめの声で頼むぞ。

六兵衛(ささやき声)なぜ坂本龍馬なんだ?梶氏は坂本龍馬と似てるのか?

広一朗(ささやき声)知らん、坂本龍馬の顔なんぞ見たこともない。だが周りの人間も一緒だから大丈夫だろ。で、なぜ坂本龍馬なのか?理由なんてないよ。あえて言えば今一番有名だから?そんなことよりも、この傷だと浅すぎて入院もできないんで、この傷もう少し深くして、死なない程度の重症にして、出来れば意識不明くらいにして医者を呼んでくれ。一大事!一刻を争う!感じが大事だからな。ではこの小刀で、頸動脈からちょっと外れたここ。ここをグサっと頼む。六兵衛(ささやき声)ここか?ここをグサっと・・・。あーやっぱり無理です!私には人は刺せない。広一朗(ささやき声)いいからやれ!やれというのに!!六兵衛(ささやき声)無理無理無理、私には無理。梶氏、申し訳ないがご自分でやって下さい。広一朗(ささやき声)えっ?俺が自分で?死なない程度に自分を刺すのか?バカ言うな、いいからやってくれ。六兵衛(ささやき声)あーじゃあもう、目をつぶって。見えない何も見えない。どこ?ここ?広一朗(ささやき声)そんなとこ刺したら本当に死・・・。あーもう貸せ!自分でやる、ここだここ。自分で切る広一郎

広一朗(ささやき声)んっ!うっうーむっ・・・六兵衛(ささやき声)死なない程度に、死なない程度で・・・。頼りにならない友人でかたじけない小屋を飛び出し砂浜を駆け上る六兵衛手には血のついた短刀道ゆく人々に両手をふり叫ぶ

六兵衛(少しどもりながら)たっ、、大変だ!さっ、さっ、坂本龍馬だ。

(声少々ひっくり返る)あっ、あの坂本龍馬が倒れているぞ、 しっ、しかも瀕死、瀕死だ坂本龍馬が・・・。 (声大いにひっくり返る)はっ、早く助けなければ、坂本龍馬の命を助けなければ!周囲の人々のザワザワ

嘘がバレないか緊張しオドオドしながらあたりを見渡す六兵衛

朝日にキラキラと輝く海面⸻⸻拓人家居間⸻⸻友香あーこれ本当に正真正銘のデタラメの嘘っぱちだ。絶対ダメなやつだ。

秀亮これ流石に通りませんよね。

拓人当然この嘘は即座にバレた(笑)

秀一計画性も準備もまるでない、行き当たりばったりの、嘘の中でも最もたちが悪く低級の嘘だ。

拓人ただ実害がなかったことと、土佐藩への手前、このことを騒ぎ立てて話が広まることを嫌った藩は、片岡家へのお咎めはうちうちで済ませたそうだ。

秀亮気になるのは梶 広一郎だけど・・・。

拓人福井藩へ引き渡された、まぁ当然だな。

秀亮この文章はなぜ公にされなかったんですか?

拓人まぁ一族としてみっともないという思いもあったろうし、そこまでして世に出す価値を見出せなかったという面もあるんだろうな。それではいよいよこの本の最後、エピローグを読んで今日の読書会を締めるとしよう。⸻⸻強の手記⑥・・・葬儀の日⸻⸻(再現VTR)

強(モノローグ)この話は、祖父の葬儀後のある出会いで終わりとしたい。葬儀が終わり参列客たちが三々五々帰宅の途につき始めた時、杖をついた大柄な老人が、ゆっくりと近づいてくるのが見えた。私にはこの老人が誰なのかすぐに分かった、確信があった。

梶お孫さんの強殿かな?私は・・・。

強(モノローグ)老人が名を名乗った、私の思った通りだった。彼らはあの事件の後、生涯にわたって付き合いがあったという。老人が私に尋ねた

梶なぜ仇討ちの対象だった私が、あのような事件を起こして正体がバレてしまったのに、今もこうして生きながらえていると思うかね

強祖父・・・ですか?

梶そう、わざわざ福井藩まで訪れて、遺族に懇願して仇討ちを取り下げてもらったのだ。まぁ彼方にも重大な落ち度があり、元々喧嘩両成敗的な部分もあったことと、亡くなった方が、かなり問題が多い方で遺族も持て余し気味の人物だった事も影響しているかもしれん藩の力や秩序も弱まっていた時代という事もあったのだろう。

強彼が若い頃、とても気にしていたことがあるんです。彼は卑怯な青年でしたか?

梶私の知る限り、彼が卑怯であったことなど一度もない。出会った頃は少々臆病な青年ではあったがね。あの事件には2つの面がある。悪かった面は勿論、社会を無駄に騒がせてしまったことだ。良かった面は六兵衛さんが変化したことだ。彼は臆病ですらなくなったのだ。

強彼は臆病を克服したんですか?

梶臆病な人間があの時代、他国に行き、他人の仇討ちを取り下げるよう懇願なんてできるかね。寡黙な彼のことだ、誰にも他言はしていないだろう。ただ私はそのことを君に伝えておきたかったのだ。彼は他人の仇討ちを代行するという馬鹿げた目標を定め、行動をしたことで、自分を少しだけ変えることができた。自分で自分を変えたんだ。多少の自負を込めて言えば、我々が出会ったことで、私も変わったし彼も変わった。そして共に生涯の友を得た。

強(モノローグ)2人の間を冬の木枯らしが吹き抜けた。私にはそれが「そろそろ終わらせろ」という祖父の声のように感じた。

梶彼は自分が自分であるために自分ができることをした、ということだ。さて、長話をしてしまったな、ここでお暇しよう。2人が出会ったこの町を歩きながら、親友と少し話をしたいでな。ではな。杖を突きながらゆったりと歩を進める梶 広一朗の後ろ姿は、次第に小さくなっていった。⸻⸻シーン14 僕が僕であること 決めるのは誰?⸻⸻拓人家の居間

拓人(本を閉じて)どうだい、君たちはこれを恥ずべき話だと思うかな?

友香パパはなぜそう思わないの?

ウンウンと頷く秀亮

拓人周りの人に坂本龍馬だ!と嘘をついた時の六兵衛さんの気持ちを想像すると、俺は感動すらする。気の弱い六兵衛さんにとっては、梶を助けたい一心の一世一代の勇気を振り絞った大芝居だったんだ。その時彼は、自分の力で臆病を克服したんだと思うとね。

秀亮(モノローグ)調子のいい大人にありがちな感激屋の叔父さんは、少し涙ぐんでいるようにも見えた。

友香で、強さんはどうなったの?

秀一よくぞ聞いてくれた、ここからが本当の意味の片岡家、我々4人のファミリーヒストリーと言っていいと思う。強さんが通っていたという東京の大学は東大だ。私の先輩ということだな。

拓人東大だ京大だと本当にこの家は高学歴が多いだろ。俺くらいなんだよ学歴ないのは。ヒデくん、中受頑張らないと君もそうなっちゃうかもしれないよ(笑)まぁそれはいいや。さぁここからが、我が一族のファミリーヒストリーの仕上げだ。大学を卒業した強さんは岡山へは戻らずに東京で就職した。そして東京で家族を持ったんだ。

秀亮あれ?聞いたことがあるぞこの話。確か・・・ひいおじいちゃんは東京の大学に進学してそのまま就職。その後、ひいおじいちゃん以降の片岡一族はみんな東京や横浜に根を張った・・・。秀亮と友香顔を見合わせ秀亮と友香「ということは!」

友香強さんは、私たちのひいおじいちゃんでした!ってこと?

拓人そしてパパたちのおじいちゃんだ。

秀一本当に小さい頃、庭で一緒に遊んでもらった覚えがあるんだ、おじいちゃんと。

拓人俺もだ、うっすらとだが優しい声と横顔を覚えてるよ。

秀一私が5歳の時に亡くなったあのおじいちゃんが強さんなんだ。

息を呑む秀亮と友香

秀亮(呟くように)歴史って本当に面白い

友香違うよヒデ!私たちは、みんなつながっているってことだよ。だから人間は一人じゃ生きられないんだよ。私だって、ヒデだってそうだ。

秀一そうつながっているんだ。昇さんにとって強さんはお父さんだからな。

友香ヒーーーー!それ強烈!本当にみんなつながって、それが歴史なんだ!パパの言うとおり、まさにファミリーヒストリーだよこれ!

秀亮(モノローグ)今回の夏休みの宿題は僕に色々なことを教えてくれた(映像・カットバック)友香ちゃんとの2人旅で、友香ちゃんの存在が僕の中でグッと大きくなった。今までも兄弟のように大切な存在だったけど、またそれとはちょっと違った意味で大事な存在になった気がする。相手の気持ちになって考えると、自分が嬉しい気持ちになるって、ちょっと発見だったし。少なくても中学受験に成功することと、友香ちゃんを守れる男になるってことは、必ずしも一緒ではないってことも。そして、岡山で聞いた僕たち一族の話。みんなが本当に大切な一人一人なんだと言うことを強く感じた。一人でも欠けたら、何もかもが変わってしまうことだってあるのかもしれない。あの赤ちゃんのようにだ。中学を受験するにせよ、しないにせよ。どんな大人になって、どんな人生を歩くにせよ。僕はいつだって僕らしくありたい。そして、それを決めるのはいつだって僕でありたい。六兵衛さんや強さん、そしてお父さんたちがそうだったように。そう思ったら色々なモヤモヤは消えていた。僕はいつだって僕らしくあればいい。机に置かれた強の著書の表紙を指でなぞる秀亮

秀亮(モノローグ)そうだ!僕は僕でなければいけない。そして僕が僕であること!それを決めるのは僕なんだ!

END

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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