この手紙というものを見ているあなたへ。
どうかあなたは死んでください。
生きていることで何を引き起こすと思っているのですか。
あなたは早急に死ぬべき存在です。
もちろん、受け入れられないことかとは思います。それでも私たちにとっては、あなたたちには必ず、死んでもらわねばなりません。
あなたは工場を興しましたね。
小さな小さな、会社でした。
ネジの一本を大切にし、ほんの数センチの部品を作る工場でした。
あなたは、それでお金を得て暮らしていますね。
その部品は自動車に使われていると思っていますね。
違うんです。
いや、違うとは言い切れないのかも知れません。
私たちにとっては、それは自動車というものではないんです。
今皆さんが自動車だと言っているもの。あれ、この世界では「チェンバラスト」というんです。
理解できなくても構いません。まだそのレベルの文明であるということはこちらも把握しております。煽る目的はありません。
それでですね、自動車というものは、そちらではどのような使い方をされているのですか?
私たちにとっては、多分あなたたちとは違うものとして使っています。
自動車、という名前から推測するに、壁画を記すための板のように使っているのでしょうか。
私たちはそうではなくて、チェンバラストに「乗る」。チェンバラストの中に肉体を入れ、足と腕で操作するんです。
そして、敵陣に突っ込むんです。
装甲がしっかりとしていて、速度も時速200キロ出る。そしてハイビームで目眩し、クラクションで耳をつぶせる。こんな能力をご存知でしょうか。
そんな感じで、こちらでは最高で、最低の兵器としてこちらで使われているんです。
私たちの同胞は、かつて5000万ほどいました。
そのうち4900万がチェンバラストに殺されました。
チェンバラストで殺された家族の仇として、改造したチェンバラストで敵陣に特攻する同胞もいました。まあ、その同胞は全員死にましたが。
普段の移動でチェンバラストを使っている同胞もいました。まあ、その同胞は全員死にましたが。
チェンバラストを製造する工場に勤めた同胞もいました。まあ、その同胞は全員死にましたが。
チェンバラストよりも大型な、「タラバスト」というものを作ろうとした同胞もいました。まあ、その同胞は全員死にましたが。
チェンバラストの危険性を取り除いた「アーチバラスト」というものを作ろうとした同胞もいました。まあ、その同胞は全員死にましたが。
チェンバラストに轢かれかけた赤ちゃんを、身を挺して守ろうとした英雄がいました。まあ、その英雄も赤ちゃんも死にましたが。
チェンバラストの製造者として弾劾された同胞もいました。まあ、弾劾された方も弾劾した方も全員死にましたが。
最後まで墓を守り続けた同胞もいました。まあ、その同胞は全員死にましたが。
話が長くなりました。
これらの原因はどこにあるでしょうか。
つまるところ、あなた方国家が自動車を輸出していた先は、本当に外国だったのでしょうか。
違うんです。
私たちに送られていたんです。
「最高級のチェンバラスト」、それこそがあなたたちの努力の賜物なんです。
つまりは、あなたたちのネジ1本が4900万の同胞を殺しているのです。
我々はもう我慢できません。
最近、自動車メーカーの社長さんに会う機会はありましたか?
おそらくなかったと思います。
すでに同胞が擬態し、これ以上の生産を止めようとしています。
全ては私たちが生き残るためなのです。
これ以上、手や足をふっ飛ばされ、臓物を撒き散らし、新鮮な体液を地に這わせる同胞を見たくはないのです。
そのために、このお手紙を送らせていただきました。
4900万の同胞があなたの死を今か今かと待っています。
どうか、死んでください。
よろしくお願いいたします。
拝啓、死んでください。
SF書簡体小説
"あなたの日常が、誰かの世界の終焉を招く。"
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