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余熱

743 字

現代文学、内省小説

"熱を失った魂の、静かな告白。"

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僕は人生に向いていなかったようだ。心と体を動かす熱が生まれなくなってしまった。
いつからなのか、考えてみた。理由やきっかけは分からないけれど、きっと中学2年からだ。1年から2年に上がるタイミング。そこからあらゆる熱が徐々に引いていった。欲も感情も、少しずつ薄まっていった。中学3年になる頃には自分の将来に興味が持てなくなった。高校なんてどうでも良かった。金持ちになりたいわけでも、結婚したいわけでも、長生きしたいわけでもなかった。それでもきっとダラダラと生きていくんだろうと、その頃は思っていた。実際、ダラダラと生きた。次第に、もっと小さなものまで消えていった。漫画を読んだ。映画を見た。体を動かしてみた。小さい頃から水泳をやっていたから、市民プールで久しぶりに泳いでみた。何も感じなかった。高揚感も爽快感も達成感も。ただ、倦怠感だけが残った。それから色々なことをやった。ギターや料理や旅行。全て徒労に終わった。ついには家から出なくなった。ふと音楽を聞いてみた。昔から好きだったHipHopや洋ロック、J-POPもいくつか。驚くほど何も感じなかった。いや、驚いたのは「うるさい」と感じたことに対してだ。好きだったはずの音楽を聞いて、うるさいと感じてしまった。
天井を見ていたら、思い出した。僕がずっと昔に置いてきたもの。コミュニケーションだ。いつからか人と話すことが苦痛に感じるようになった。それでも今は、と、縋るように人と話した。すれ違う人への挨拶、旧友へのLINE、マッチングアプリも試した。でも、全ての会話は僕の心に何ももたらさなかった。心のどこかで期待していた。楽しさとか、後悔とか、妬みとか、何かを感じるのではないかと。
28歳になった。ただそうなったというだけのこと。

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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