【ユーザ情報】
ユーザID: 2962964
ユーザ名: スペクトラム
【Nコード】
N7388MI
【タイトル】
武器武器ギミック
【作者名】
スペクトラム
【種別】
連載作品
【完結設定】
連載中
【年齢制限】
全年齢
【ジャンル】
ローファンタジー〔ファンタジー〕
【作品に含まれる要素】
指定無し
【キーワード】
ギャグ シリアス ダーク 男主人公 現代 群像劇 日常 伝奇 異能力バトル
【あらすじ】
武器の力を引き出す能力――インスティンクト。
その世界で最強の武供と呼ばれる橘湊は、今日も元気に生存戦略を考えていた。
なぜなら、自分は武器にされる予定だから。
討伐対象を匿う苦労人の火ノ宮楓。
仕事よりサボる理由を探している相馬玲志。
笑顔で脅迫しながら部下を振り回す雨宮紬。
そして、自分の可愛さを信じて疑わない武供の最高傑作・橘湊。
目的は一つ。
千年間誰も破壊できなかった史上最悪の武器『骸の王』を破壊すること。
ただし失敗した場合、湊は武器になる。
問題児だらけの対策課と、死にたくない武供による、少しだけ頭のおかしい武器譚。
【掲載エピソード数】
19
【初回掲載日時】
2026-06-17 01:37:01
【最終掲載日時】
2026-06-21 23:07:35
【感想受付】
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【評価】
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【収益情報】
収益化設定: 有効
累計獲得チアスコア: 0.00
累計獲得なろうリワード: 0
------------------------- エピソード1開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
武供
【本文】
「屋根があるって良いですね!」
橘湊は心底嬉しそうに天井を見上げた。
その様子に、火ノ宮楓は深いため息を吐く。
「気楽なのやめてくれる? こっちは殺してでも捕らえる予定だったんだから」
「殺せば良かったじゃないですかー」
湊は悪びれもせず笑う。
「殺そうとはした。でも無理だったから今こうなってるの」
「奥の手を使えば勝てたでしょ」
楓の視線が僅かに鋭くなる。
「…………ふーん。分かってたんだ」
「その刀、良いですよね!!」
話題を変えるように湊が楓の腰の刀を指差した。
楓は一瞬だけ黙り込む。
「私が持つべき物じゃないけどね」
「確かに!!」
即答だった。
楓は額を押さえる。
「やっぱり殺せば良かったかな」
「その刀は人間が持って良い物じゃないですよ」
妙に真面目な口調で湊が言う。
「まぁ、否定はしないけど」
楓は肩を竦めた。
「アンタを殺して武器を作れば、似たような性能になるんじゃない?」
「ブラックジョークが過ぎますよー」
「武供の最高傑作として生まれた自分を恨めば?」
「いーやーでーす」
湊はぶんぶんと首を振る。
「生贄なんて真っ平ごめんですから」
楓は頭を抱えた。
「あー……なんてあの女に説明しよう」
「失敗しちゃった! で良くないですか?」
「舐めてんの?」
即答だった。
「バレたら絶対アイツを仕向けてくるわ」
「僕の心配ですか! 嬉しいです!」
ぱっと顔を輝かせる湊。
楓は机を叩きそうな勢いで叫んだ。
「私の心配!!」
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード2開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
処遇
【本文】
火ノ宮楓は緊張した面持ちで部屋へ入った。
「失礼します」
扉が閉まるより早く、明るい声が飛んでくる。
「どうだった!」
机から身を乗り出した雨宮紬が、期待に満ちた顔で楓を迎えた。
楓は一瞬だけ言葉を選ぶ。
家で匿っている、などと言えるはずもない。
「深手は負わせたのですが、逃げられました」
「そうなんだ」
紬は顎に指を当てる。
「強かったんだね。何の武器を使ってたの? 逃がしたってことは、名の知れた武器を持ってたのかな」
楓は本当のことを口にする。
嘘のような真実だった。
「何も使っていませんでした」
一瞬の沈黙。
「……へぇ」
紬は目を細めた。
「信じられないかもしれませんが」
「信じないに決まってんじゃーん!」
即答だった。
楓が思わず眉をひそめる。
「いや、ですが本当に武器は――」
「逃がしたって話を信じないって言ってるんだけど」
紬はにっこりと笑った。
楓は頭を抱えたくなる。
「強敵でしたから」
「その刀は飾り?」
紬の視線が楓の腰へ向く。
「力を引き出せば敵無しでしょ」
「…………」
楓は答えない。
答えたくない。
「で?」
紬は椅子の背もたれに身体を預けた。
「対象の戦闘スタイルは? その程度なら答えてもらうよ」
「素手であらゆる武器を使いこなします」
楓は言葉を探しながら続ける。
「……説明するのが難しいのですが」
紬の口元が楽しそうに歪む。
「いーねー!!」
机を叩く勢いで立ち上がった。
「そいつ、面白い奴だね!」
楓は嫌な予感しかしなかった。
「私の処遇は?」
「いやいや」
紬は手をひらひら振る。
「いきなり斬首とかしないからぁ」
「…………」
「怯えない怯えない」
「…………」
楓は無言のままポケットに手を入れる。
その仕草を見て、紬が吹き出した。
「てかさぁ」
「楓ちゃん、ポッケにある辞表、シュレッダーにかけといて」
楓の動きが止まる。
「…………」
「楓ちゃーん」
紬は楽しそうに笑う。
「逃がすわけ無いじゃーん」
その瞬間。
部屋の外から勢いよく声が飛んできた。
「二人共ね!!」
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード3開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
従斧
【本文】
「玲志君!」
雨宮紬が勢いよく手を挙げる。
「楓ちゃんが駄々こねちゃったから、代わりに武供を殺して回収してきて」
そう言ってケラケラと笑った。
相馬玲志は一切表情を変えない。
「予定があるので難しいです」
「仕事でそれ言う奴初めて見たー」
紬は楽しそうに笑う。
玲志は平然と続けた。
「外せない用事がありまして」
「面白いから聞いてあげるよ」
紬は頬杖をつく。
「親戚の結婚式です」
「仮にあったとしても出てから行けば?」
紬は腹を抱えて笑った。
「火ノ宮が手に余るのなら、自分の手にも負えないかと」
「そっち路線で回避するんだー」
紬は感心したように頷く。
「従斧の現在の主人が」
そこまで言いかけたところで、玲志がため息を吐いた。
「いやぁ……先代の主人が弱かっただけですよ」
「自分より強い主人に乗り換えまくる従斧を持って何年?」
「五年です」
「それだけ持ってて乗り換えられないって異例じゃない?」
玲志は少しだけ考える素振りを見せた。
そして。
「あー……面倒くさいんで無理です」
「本性出すの早ー」
紬は机に突っ伏す。
「なーんで私の部下って私の言うこと聞かないんだろ」
玲志は即答した。
「尊敬できる人間じゃないからでは?」
「泣いちゃうぞ」
「貴方の泣き顔を見たい人間なら山ほど居ますよ」
「酷くない?」
全く傷付いた様子もなく紬が笑う。
「とにかく行ってよー」
椅子をくるりと回しながら続けた。
「サクッと殺して帰ってきてよ」
「仕事があるんですが」
「楓ちゃんに押し付ければ良いじゃん」
玲志は冷たい視線を向ける
そして静かに言った。
「だから尊敬されないんですよ」
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード4開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
死合
【本文】
「ふんふーん、ふん」
橘湊は鼻歌を歌いながら人気のない道を歩いていた。
次の瞬間。
上空から何かが凄まじい勢いで落下する。
轟音。
湊が立っていた場所を中心に地面が砕け、大きな亀裂が走った。
土煙の中から現れたのは相馬玲志だった。
「えー……今ので死なねぇのかよ」
心底嫌そうな顔で呟く。
対する湊は周囲を見回した。
「警察呼ばないと!」
そして少し考える。
「あれ。携帯持ってませんでした」
全く緊張感がない。
玲志はため息を吐いた。
「殺しに来るって分かってて散歩とは良い度胸だな」
「日課の散歩ですよ!」
湊は満面の笑みで答える。
玲志は従斧を軽く振った。
次の瞬間、その巨体が斧に引っ張られるように加速する。
一瞬で間合いを詰めると、そのまま湊へ斧を振り下ろした。
だが。
湊は片手を上げる。
何も持っていない。
それなのに。
甲高い金属音が響いた。
だが弾かれる。
「うわ」
湊は目を丸くした。
「あっれー!」
迎撃が間に合わないと判断したのか、そのまま後方へ飛び退く。
さらに空中で何かを掴むような仕草を見せる。
そのまま身体が持ち上がった。
まるで見えない槍でも電柱に突き刺したかのように。
湊は宙吊りのまま玲志を見下ろした。
「武供の最高傑作……か」
玲志は従斧を肩に担ぐ。
「なるほど。見えない武器を常に持ってるって解釈で良さそうだな」
「その斧……重すぎますね」
湊は興味深そうに従斧を眺める。
「インスティンクトで引き出された能力ですか?」
玲志は答えない。
代わりに眉をひそめた。
湊は人差し指を向ける。
「バン!」
玲志は即座に従斧を前へ出した。
だが何も起こらない。
沈黙。
玲志は顔をしかめた。
「ブラフかよ」
「逃げまーす!」
湊は踵を返した。
「させるかよ」
玲志は再び従斧を振り上げる。
その瞬間。
湊が振り返った。
「バン!」
乾いた声が響く。
玲志の身体が僅かに揺れた。
視線を落とす。
腹部に小さな穴が空いていた。
血が滲む。
「狸がよぉ」
玲志は顔をしかめる。
湊は楽しそうに手を振った。
「バイバイです!」
そしてそのまま路地の向こうへ消えていった。
静寂が戻る。
玲志はしばらく立ち尽くしたまま、自分の腹を見下ろす。
「うわぁ……」
他人事のように呟いた。
「体に穴空いてるよ」
しばらく考える。
そして携帯を取り出した。
「これ口実にして今日は休もうっと」
電話の相手が出る前から、もう帰る気だった。
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード5開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
言い訳
【本文】
「えー。負けたの?」
雨宮紬は頬を膨らませた。
不満そうな顔だ。
対する相馬玲志は、神妙な顔で頷く。
「強敵でした。やはり自分では無理かと」
「勝てたでしょ」
即答だった。
玲志は肩を竦める。
「まさかぁ」
「従斧が乗り換えてないってことは、そういうことでしょ」
「あー」
玲志は腹を押さえた。
「体に空いた古傷が痛む」
「昨日空いた穴を古傷扱いする時点で頭おかしいんだけど」
紬は呆れたように言う。
玲志は気にした様子もない。
「仕事はしましたし」
「言い訳くらいは聞いてあげるよ」
「強かったんで」
「体に穴が空いたくらいでパフォーマンス落とさないでしょ。玲志君は」
「無茶言わないでくださいよー」
全く説得力のない声だった。
紬は机に肘をつく。
「昨日さぁ」
「電話したよね、私に」
「はい」
玲志は平然と頷いた。
「家で休養を取っていました」
「へぇ」
紬の口元が吊り上がる。
「玲志君の家って、パチンコ店みたいにジャラジャラ音がするんだぁ」
「心地の良いBGMの中で安静にしてました」
「最低だね君」
「褒め言葉として受け取っておきます」
紬は大きくため息を吐いた。
そして本題に入る。
「で?」
「なんで逃がしたの?」
玲志は少し考える素振りを見せた。
「相手は只者では無いです」
「本音で言ったら減給はやめてあげるよ」
「あー……」
玲志は視線を逸らした。
「ぶっちゃけ、クソ女に押し付けられた仕事なんで」
「逃がしても良いかなって」
紬が固まる。
「更に言うなら」
玲志は続けた。
「武供を捕らえろって圧かけられてるんで」
「ザマァ見ろって感じですね」
「あー……」
今度は紬が視線を逸らした。
数秒の沈黙。
やがて紬が口を開く。
「え?」
「クズが目の前に居るんだけど」
玲志は真顔のまま答える。
「奇遇ですね」
そして一拍置いた。
「俺の前にもクズが居ます」
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード6開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
生存条件
【本文】
橘湊は自信満々に胸を張った。
「喜んで下さい。僕が死なずに済む方法があります!」
火ノ宮楓は興味なさそうに相槌を打つ。
「そうなんだ」
「もっと喜んで下さい!!」
「喜ぶ程仲良くない」
即答だった。
湊は気にした様子もなく頷く。
「ツンデレですね。説明します。史上最悪の武器を破壊すれば、僕を武器にする必要は無くなりますよね!」
楓は呆れたようにため息を吐いた。
「破壊出来ないからアンタを武器にしようって話になってるんだけど」
「完璧な作戦ですね」
「全然完璧じゃない」
楓は冷たく言い放つ。
「仮に破壊出来たとしても、アンタ自身が軍事利用される。穴だらけだよ」
それでも湊は満足そうに頷いた。
「完璧な作戦ですね」
「話聞いてた?」
楓は額を押さえる。
すると湊が人差し指を立てた。
「ですが、僕にも奥の手がありますし、破壊自体は可能です」
楓の眉が僅かに上がる。
「奥の手?」
「斬るという概念を植え付けて、何でも斬れます」
数秒の沈黙。
楓はあっさり頷いた。
「良いじゃん」
「でしょー」
湊は嬉しそうに胸を張る。
しかし次の瞬間。
「早速アンタを殺して武器にすれば破壊達成出来るじゃん」
笑顔が固まった。
「ですが!」
慌てて言葉を重ねる。
「発動条件があるんですよ! 対象の半径二十メートル以内に二分間居ないと駄目なんです!」
「問題無いね」
楓は即答した。
「武供は武器にすれば、元になった人間の力を飛躍的に引き出せる。発動条件くらい無視出来るでしょ」
湊はしばらく黙り込む。
やがて、絞り出すように言った。
「僕を殺さない方向で話を進めません?」
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード7開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
ツンデレ
【本文】
雨宮紬は頬杖をついたまま首を傾げた。
「楓ちゃん。なんで武供殺さなかったの?」
火ノ宮楓が言葉に詰まる。
「それは……」
「僕が可愛くて愛くるしいからです!」
元気な声が割り込んだ。
全員の視線がそちらへ向く。
いつの間にか湊が窓際に立っていた。
紬が目を細める。
「へぇ……」
「ちょっ……」
楓が慌てて立ち上がる。
だが紬は人差し指を唇に当てた。
「楓ちゃん、お口チャック」
次の瞬間。
湊は窓の外へ何かを放り投げた。
数秒後。
少し離れた場所で爆発音が響く。
窓ガラスが微かに震えた。
それを見ても紬は表情を変えない。
「爆弾を沢山仕掛けました!」
「ふーん」
興味深そうに頬杖をつき直す。
「お話は何かな?」
湊は得意げに胸を張った。
「史上最悪の刀――骸の王を破壊します!」
そして大きく両手を広げる。
「そうすれば、僕は殺されません!」
力強い肯定だった。
紬は少しだけ考える素振りを見せる。
「乗ると思う?」
湊の動きが止まった。
「さっきの爆弾。制約がある筈」
「まっさかー」
露骨に視線を逸らす。
紬は気にせず続けた。
「スナイパーライフルみたいな武器を出せるなら、遠くから交渉出来たよね」
「思いつかなかったんです!!」
即答だった。
「なるほど」
紬は素直に頷く。
そして更に続ける。
「じゃあ、さっき窓から投げたのは何で?」
「え?」
「指差して遠くの建物を吹き飛ばせば良かったじゃん」
湊は固まった。
数秒後。
「思いつかなかったからです!!」
「なるほど」
紬はもう一度頷く。
そして笑顔のまま尋ねた。
「もう一度聞くよ」
「乗ると思う?」
湊はしばらく考え込む。
やがて何かを閃いたように顔を上げた。
「僕が死んだら楓さんが落ち込んで衰弱死します」
紬は即答した。
「それは大変だ!」
ぱっと笑顔になる。
「乗るよ」
「は?」
楓が素で聞き返した。
「んな訳無いでしょ」
「ツンデレなんです」
湊は満足そうに頷く。
紬も楽しそうに笑った。
「ツンデレで可愛いねぇー楓ちゃん」
楓は無言で頭を抱えた。
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード8開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
口止め
【本文】
「玲志君は本当にクズだよねぇ」
雨宮紬がしみじみと言う。
相馬玲志は特に気分を害した様子もなく頷いた。
「いやいや、それ程でもありませんよ」
「クズって言われて謙遜する奴初めて見た」
紬は思わず吹き出す。
玲志は平然と続けた。
「やはり雨宮さんには及びません」
「上司なんだけどなぁ、私」
「そこは否定しないんですね」
そんなやり取りを遮るように、男が声を掛けた。
「おい」
紬が振り返る。
「あー……えっと……偉い人!」
「雑すぎない?」
玲志が呆れたように呟く。
男はこめかみを押さえた。
「……まぁいい」
深いため息を吐く。
「爆発事件。そして監視カメラには武供がお前の部屋に入っていく姿と、出ていく姿が映っていた」
男の目が鋭くなる。
「言い訳はあるか?」
紬は一瞬も迷わなかった。
「まさかー。彼は顔が似てるだけの別人ですよ!」
「その言い訳が通ると思うか」
「世界には似た人が三人居ます!」
「お前の処遇だが――」
男が言いかけた瞬間。
紬がぱんと手を叩いた。
「暗い話はやめましょうよー」
男の眉がひそむ。
「五千万あったら何に使います?」
沈黙。
男の額にうっすら汗が滲んだ。
紬は不思議そうに首を傾げる。
「どうしました?」
そして満面の笑みを浮かべた。
「夢の話なんですから、もっと明るく元気にいきましょうよ!」
男は何も言わない。
数秒後、踵を返した。
そのまま足早に部屋を去っていく。
扉が閉まる。
静寂。
やがて玲志が口を開いた。
「相手が横領した事で脅すの、クズすぎません?」
「世間話が苦手みたいだね」
紬は悪びれもせず肩を竦めた。
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード9開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
骸の王
【本文】
ファミレスの一角。
火ノ宮楓は真剣な表情で話していた。
「骸の王。千年破壊出来なかった、自我を持つ所有者不在の武器」
向かいに座る橘湊は元気よく手を挙げる。
「僕は世界一可愛いです!」
楓は無視した。
「武供で武器を作るには、原則として一人につき一つ」
「パフェ食べたいです!」
「何故なら骸の王は、数多の武供を生贄にして作られたから」
そこで湊が楓の皿へ手を伸ばした。
「楓さんのからあげ一つ貰いますね」
楓の額に青筋が浮かぶ。
「聞けや!」
店内に響くほどではない。
だが十分大きな声だった。
湊はもぐもぐとからあげを咀嚼する。
「聞いてますよ」
「じゃあ私が何話したか言ってみて」
楓は腕を組む。
湊は少しだけ考える素振りを見せた。
そして自信満々に答える。
「骸の王が可愛くて、数多のからあげを生贄にして作られたって話ですよね」
沈黙。
楓はゆっくりと顔を覆った。
「本当になんなの……」
数分後。
楓は諦めたようにコーヒーを口にする。
「で。アンタ一人で倒せるの?」
湊は首を傾げた。
「楓さんは当然として、この前戦った斧使いの人も欲しいですね」
楓の動きが止まる。
「いや……斧使い?」
嫌な予感がした。
「戦った?」
「強かったですねぇ」
湊は楽しそうに頷く。
楓は額を押さえた。
「相馬じゃん……」
そして深いため息を吐く。
「家に来たの?」
「散歩中に会いました」
「家でじっとしてろって言ったじゃん」
「散歩は大事です」
全く反省していない。
楓は再びため息を吐いた。
「まぁ、もういいや」
疲れ切った声だった。
「雨宮にもバレた後だし」
「まぁ、殺されないと思いますし良かったじゃないですか」
湊は満面の笑みを浮かべる。
「僕の完璧な作戦のおかげですね」
「違う」
即答だった。
楓は真顔で言う。
「雨宮を味方に付けたから」
「強いんですね! あの人」
「強さは置いといて」
楓は首を振る。
「あの女はアンタの殺害命令を実際に取り消した」
湊が目を丸くする。
楓は指を一本立てた。
「顔面が識別出来ない死体を用意する」
もう一本指を立てる。
「武器を作ろうとした所をテロリストに襲撃させる」
さらに一本。
「そして、そいつらが持ってる筈のない爆弾で全部吹き飛ばす」
湊はしばらく黙り込んだ。
やがて。
「エグすぎません?」
「やるんだよ」
楓は即答した。
「しかも手柄は自分で持つ」
「うわぁ」
「邪魔な人間には責任ごと押し付ける」
「うわぁ……」
「最後に全部まとめて抹消する」
湊は真顔になった。
「酷い話ですねぇ」
楓はコーヒーを飲み干す。
そして静かに言った。
「発端はアンタだけどね」
湊は視線を逸らした。
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード10開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
クソ女
【本文】
「火ノ宮……武供を匿ってたなんて良い度胸してんじゃん」
相馬玲志が呆れたように肩を竦める。
火ノ宮楓は冷や汗を流した。
「いやぁ……その、色々訳があって」
「お陰で俺に仕事回ったじゃん」
玲志はため息を吐く。
「結果的にサボる口実が出来たから良かったが」
「すみません」
楓は素直に頭を下げた。
そして心の中で思う。
――玲志がクズで本当に良かった。
玲志は楓の腰に差された刀へ視線を向ける。
「その布都御魂剣」
「インスティンクトで力を引き出せる適合者じゃなかったら危なかったんじゃないか?」
楓も視線を落とした。
「この刀は確かに危ないですからね」
「悪霊を退散させる聖なる力があるらしいが」
玲志は首を傾げる。
「正直、強いのかよく分からねぇな」
楓は少し考える。
そして苦笑した。
「聖なる力ですかぁ……」
「悪霊が存在して退散するんだとしたら、この刀に宿ってるドス黒い怪物にビビってるだけですよ」
「怖い怖い」
玲志は即座に距離を取る真似をした。
楓は呆れたように続ける。
「先代の従斧の主を素手で叩きのめした相馬さんも十分恐ろしいですけどね」
「騒がしいから見に行ったら、急に襲いかかって来た奴が悪い」
悪びれた様子は一切無い。
「先代を抑え込もうとした討伐隊が返り討ちに遭って」
「その後、一般人が新しい従斧の主になったら周りはビビりますよ」
「それでも数年は普通に仕事してたんだよ」
玲志は遠い目をする。
「確か、ここに入ったの去年でしたよね」
「ああ」
玲志は頷いた。
「そしたら社長に呼び出されてさ」
「配属先をよく分からん国にするか、ここにするか選べって言われた」
楓の表情が引きつる。
「うわぁ……」
「そしたら、あのクソ女の部下になってた」
「私はいきなり適合者だって言われて」
楓もため息を吐いた。
「就活失敗したら来なよって誘われました」
「失敗したん?」
「内定した会社が倒産しました」
数秒の沈黙。
玲志は空を見上げる。
「うわぁ……」
「その後もアルバイトすら全落ちですよ」
「冷静に考えておかしくないですか?」
玲志は深く頷いた。
「……あの女クソだわ。マジで」
楓も真顔になる。
「不況だから可哀想って言われた時、殴りそうになりました」
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード11開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
可愛いは正義
【本文】
雨宮紬は頬杖をつきながら橘湊を眺めた。
「湊君は何が出来るの?」
湊は迷うことなく答える。
「長所は可愛い所です」
「可愛さで骸の王は破壊出来ないねぇ」
紬は肩を竦めた。
湊は真顔で頷く。
「可愛さは万能ではありませんから」
「そうなんだ」
紬は適当に流した。
そして思い出したように続ける。
「不変の鎖を斬って脱走したらしいけど」
「面白い事するよね」
「可愛さで斬りました」
「なるほど」
紬は何故か納得したように頷く。
「見えない武器を操り、不変の鎖を断ち切る」
「それに可愛い」
「完璧だね!」
「ですです!」
湊は嬉しそうに頷いた。
紬は笑いながら続ける。
「それにしても驚いたよ」
「インスティンクトを扱える武供とはね」
「可愛さの次に凄いです!」
「順位低くない?」
紬は思わず吹き出した。
そして指を一本立てる。
「インスティンクトは武器の本能を呼び覚ます能力」
「例えば従斧」
「あれが引き出す力は過重」
「重さを自在に操れる」
湊は感心したように声を漏らす。
「凄いですね」
「それだけじゃない」
紬は楽しそうに笑った。
「従斧の恩恵で主人には高い治癒力が与えられる」
「便利ですね」
「その代わり」
紬はあっさり続けた。
「見限られたら即死の呪い付きだけどね」
「怖いですー」
湊は全然怖そうではなかった。
「インスティンクトを扱う人間は大きく二種類」
「片方は適合者ですよね!」
「そうそう」
紬は頷く。
「玲志君と楓ちゃんがそれ」
「武器に選ばれた人間」
そして少しだけ真面目な顔になる。
「もう片方は稀代の天才」
「どんな武器でも力を引き出せる人間」
「その天才が」
紬は湊を指差した。
「自分自身を武器にした」
「武器になった際の自分の力まで引き出せる」
「恐ろしい話だよ」
湊は胸を張った。
「褒めても何も出ませんよ!」
「褒めてるんだけどなぁ」
紬は苦笑する。
そして少しだけ目を細めた。
「君を殺さなかったのは何でだと思う?」
「可愛いからです」
即答だった。
紬も即座に頷く。
「そう!」
「可愛いからってのもある!」
「ですよねー」
「それと」
紬は笑顔のまま続ける。
「君を武器にした時、その力を引き出せる適合者が見つかる保証が無いから」
湊は数秒考えた。
そして結論を出す。
「可愛いは正義ですよねー」
「だよねー」
紬も満足そうに頷いた。
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード12開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
お月様
【本文】
「おい、武供」
背後から声を掛けられ、橘湊が振り返る。
「あ、斧使いさん!」
相馬玲志は眉をひそめた。
「そうそう。覚えてたんだな」
そして腹を指差す。
「腹に穴を空けやがったクソ野郎」
「許して下さいよぉ」
湊は全く反省していない様子で両手を合わせた。
玲志はため息を吐く。
「で」
「骸の王を破壊するなんて本当に出来んのか?」
湊は自信満々に胸を張った。
「破壊すれば皆ハッピーです!」
「質問に答えろ」
即答だった。
「出来ます!」
「根拠は?」
「自信です!」
玲志は頭を抱えた。
「次の満月が楽しみだな……」
すると湊が人差し指を立てる。
「知ってます?」
「千年前はお月様は赤くなくて、一ヶ月に一回って規則的に満月になったらしいですよ!」
「賢いなぁ」
玲志は適当に頷いた。
「義務教育受けてない割には」
「フフン!」
湊は得意げに胸を張る。
「火葬の文化も、満月になると生き物の死体が骸になって暴れるから広まったらしいですよ!」
「賢いなぁ」
「僕は賢いんで!」
満面の笑みだった。
玲志は遠い目をする。
「いやぁ……その賢さ少し分けて欲しいわ」
湊は嬉しそうに頷いた。
「馬鹿に付ける薬が無い事も、賢いので知ってます!!」
沈黙。
玲志の額に青筋が浮かぶ。
「死人に口無しって知ってるか?」
「知ってますよー、勿論」
湊は元気よく答えた。
玲志は数秒黙り込む。
やがて。
「…………」
深いため息を吐いた。
「クソ女の次に嫌いだわ」
【リアクション】
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------------------------- エピソード13開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
バグ
【本文】
「対策課で一番頭のおかしい人間、誰だと思う?」
雨宮紬が頬杖をつきながら尋ねた。
相馬玲志は迷うことなく人差し指を向ける。
「アンタ」
紬は予想していたかのように机の下から鏡を取り出した。
玲志の顔を映し、満足そうに頷く。
「さて、冗談は置いといて」
「冗談だったのか?」
玲志が呆れたように眉をひそめる。
紬は無視した。
「一つ聞くね」
「なんだ」
「骸って何?」
「満月の日に死体が動き出したモノだろ」
玲志は即答する。
「で、骸を殺す方法は?」
「無い」
今度も迷いは無かった。
「そもそも死んでるからな。細切れにするか燃やすかで対処する」
「そうだね」
紬は満足そうに頷いた。
そして指を一本立てる。
「じゃあ次。強い武器の特徴は?」
「適合者が少ない」
「正解」
紬は笑う。
「逆に言えば、適合者じゃなくても強い武器もある」
「不変の鎖とかか」
「そうそう」
玲志は腕を組んだ。
「話が見えねぇな」
「自我を持つ骸が居るんだよ」
沈黙。
玲志がゆっくりと顔をしかめた。
「前提からおかしいだろ」
「何が?」
「骸は死体だろ」
紬は楽しそうに笑った。
「主従の首輪と死のリングは知ってる?」
「死のリングは知ってる」
玲志は即答する。
「強大過ぎる力を得るが十秒も付けてりゃ死ぬ欠陥品だろ」
「大体合ってる」
紬は頷く。
「主従の首輪は、首に嵌めると主従契約を結べる武器」
「便利そうだな」
「双方の同意が必要だけどね」
「あー」
玲志は納得したように頷いた。
「だから無名なのか」
「で、その首輪には欠陥がある」
紬の笑みが深くなる。
「主が死んでも、首輪の中に残った魂が従者を操るんだよ」
玲志は数秒黙り込んだ。
やがて。
「察した」
「察した?」
「頭のおかしい奴が居たんだろ」
「正解」
紬は楽しそうに手を叩く。
「自分を主に設定した状態で首輪を装着」
「満月の日に死のリングを使用」
「そのまま骸になった」
玲志は天井を見上げた。
「馬鹿じゃねぇの」
「まだ続きがあるよ」
「聞きたくねぇな……」
「骸になっても死のリングの効果が続いてる」
沈黙。
玲志は真顔になった。
「確かにそいつ頭おかしいわ」
紬はニコニコしながら尋ねる。
「なんでこの話したと思う?」
「危険だから気を付けろ、とか?」
「あ、違う」
紬は笑顔のまま言った。
「私の部下にしたから、面倒よろしく」
玲志は数秒固まる。
そして静かに言った。
「一番頭おかしいのテメェだよ、クソ女」
【リアクション】
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------------------------- エピソード14開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
ユキ
【本文】
玲志は目の前の少女を見て露骨に嫌そうな顔をした。
白い髪。
白いワンピース。
首には見慣れない首輪。
そして何より。
妙に距離感が近い。
「よろしくお願いします!」
少女は満面の笑みを浮かべた。
玲志は眉をひそめる。
「えっと……確か名前は」
「ユキです!」
元気よく答える。
「違うだろ」
玲志は即座に切り返した。
「いや、絶対本名じゃねぇだろ」
ユキは首を傾げる。
「首輪付けてるので猫っぽく扱ってください!」
「話聞けよ」
「良い子にしたら撫でてください!」
「嫌だけど」
即答だった。
ユキが本気で傷付いたような顔をする。
「なんでですか?」
「なんで良いと思った?」
数秒の沈黙。
ユキは真剣に考え始めた。
玲志は大きくため息を吐く。
「一つ聞いて良いか」
ユキの目が輝く。
「答えたら撫でてくれますか?」
「……分かった」
玲志は諦めたように答えた。
どうせ何か理由があるのだろう。
そう思った。
「なんで骸になった?」
ユキは迷うことなく答える。
「今が一番可愛いと思うんですよ、私」
「うん」
「骸になれば年を取りません」
玲志は黙り込んだ。
数秒後。
「なるほど」
「ですよね!」
ユキは嬉しそうに身を乗り出す。
「答えたので撫でてください!」
玲志は再び黙り込んだ。
逃げるという選択肢も考えた。
だが約束してしまった。
仕方なく頭へ手を伸ばす。
優しく撫でる。
ユキは目を細めた。
「嬉しいです、玲志様!」
「……ちょっと席外してくるから待っててくれ」
「はい!」
満面の笑みだった。
玲志は立ち上がる。
そして一直線に雨宮紬の部屋へ向かった。
ドアの前で立ち止まる。
一秒考える。
やっぱり考えるのをやめた。
次の瞬間。
ドゴンッ!!
鈍い音と共にドアが吹き飛ぶ。
「玲志君!?」
紬が椅子から飛び上がった。
「何してんの!?」
玲志は真顔だった。
「とりあえず遺言言え」
「物騒だなぁ!」
紬は慌てて手を振る。
「今は玲志様だったね!」
「死にたいのか?」
「引き入れる条件だったんだよ!」
紬は必死に弁解した。
「世界一強い従斧の主の玲志様のペットになりたいから叶えてくださいって!」
玲志は無言になる。
数秒。
さらに数秒。
そして静かに頷いた。
「オッケー」
「分かってくれた!?」
「遺族に伝えとくわ」
「待って待って待って待って!!」
【リアクション】
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------------------------- エピソード15開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
変態
【本文】
「やっぱり対策課の食堂は美味しいですし、タダで素晴らしいです!」
橘湊は満足そうに唐揚げを頬張った。
幸せそうな顔で味噌汁を飲む。
そんな湊へ、隣の席から声が掛かった。
「あれ? タダじゃないですよ?」
白い髪の少女――ユキが不思議そうに首を傾げる。
湊も首を傾げ返した。
「そうなんですか?」
「カードをピッてしたら、お金払いませんでしたよ?」
「給料天引きです、それ」
「あ」
湊は数秒考えた。
そして納得したように頷く。
「それなら問題ありませんね」
「そうですか?」
「楓さんの給料なので」
ユキが固まる。
「えー……それは良くないですよー」
珍しく真っ当な意見だった。
だが湊は自信満々に胸を張る。
「僕は可愛いので許されます」
ユキは感心したように目を輝かせた。
「確かに!」
力強く頷く。
「可愛いなら大丈夫ですね!」
湊も満足そうに頷き返した。
誰も大丈夫ではなかった。
その時だった。
「そこに居たのか」
低い声が響く。
二人が同時に振り返る。
相馬玲志だった。
ユキの顔がぱっと明るくなる。
「玲志様!」
勢いよく立ち上がると、自分の首輪に繋がったリードを差し出した。
「はい!」
玲志は無言でそれを受け取る。
ユキは嬉しそうに続けた。
「連れて行くなら引っ張らないとですね!」
玲志はしばらく黙り込んだ。
やがて。
「もうヤダ……」
心の底から疲れ切った声だった。
湊はそんな玲志を見て感心したように頷く。
「僕、賢いので知ってます」
嫌な予感しかしなかった。
玲志が眉をひそめる。
「何をだ?」
湊は自信満々に答えた。
「変態って言うんですよね」
沈黙。
玲志は無表情のまま答える。
「俺の事言ってるんだとしたら」
一歩前へ出る。
「トイレの詰まり取りの素材にしてやるよ」
湊は素早く椅子の後ろへ隠れた。
「図星でしたか!」
「違う」
即答だった。
【リアクション】
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------------------------- エピソード16開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
打倒英雄
【本文】
「さぁ、やってまいりました!!」
雨宮紬が両手を広げる。
まるで司会者のような笑顔だった。
「英雄殺し!」
「ワクワクするね!」
楓は呆れたように額を押さえた。
「骸の王の破壊に関係あります?」
「もちろん」
紬は即答する。
「今のままじゃ当然、骸の王には勝てない」
その言葉に場の空気が少しだけ変わる。
「だから湊君には従刀の主になってもらう」
「あー……」
楓が納得したように頷いた。
「従斧も武供から作られてましたもんね」
「双子の片割れは従刀になった」
「そうそう!」
紬は楽しそうに指を鳴らす。
「従斧は最も強い者を主とする」
「従刀は最も才ある者を主とする」
紬は笑う。
「何より従刀のインスティンクトは主の才能を極限まで引き上げる」
「素晴らしいね!」
楓は深いため息を吐く。
「絶望的なのは現在の主ですけどね」
「ん?」
「千年前、骸の王を追い詰めた神速の居合斬りの使い手」
「つまり化け物」
楓の言葉に紬は満面の笑みを浮かべる。
「しかも死んだ後も骸になって主を続けてる」
「最高だね!」
「最悪なんですけど」
即答だった。
紬は気にした様子もなく続ける。
「という訳で四人で英雄をぶち殺してね」
「頑張って」
楓は無表情になる。
「その四人の中に私は入ってませんよね」
「参加してくれたら豪華プレゼントをあげちゃいます!」
「要らないです」
間髪入れずに断る。
紬はニヤリと笑った。
「隼の腕輪」
楓の表情が止まる。
沈黙。
紬は畳み掛ける。
「なんと!」
「腕に付けるだけで足がとてつもなく速くなります!」
沈黙。
楓は何も答えない。
だが視線だけが紬へ向けられていた。
紬は楽しそうに笑う。
「欲しいでしょー?」
「……怨」
静かな声だった。
次の瞬間。
布都御魂剣から黒い霧が溢れ出す。
人の形を模した禍々しい怪物。
怨。
怨の腕が伸びる。
紬の首を掴む。
「持ってるなら寄越せ」
楓の声に怒気は無い。
だからこそ怖かった。
紬は首を絞められながらも笑っている。
「隼の腕輪、武供として生まれた弟の成れの果てがそんなに欲しい?」
楓の目が細くなる。
紬は楽しそうに続けた。
「湊君を殺さなかったのも」
「弟と重ねちゃったからでしょ?」
怨の指に力が入る。
紬の首が締まる。
それでも紬は笑っていた。
「でもさ」
苦しそうな声で言う。
「私を殺したら一生手に入らなくなっちゃうね!」
数秒の沈黙。
やがて怨は腕を離した。
黒い霧となって布都御魂剣へ戻っていく。
楓はしばらく紬を見つめていた。
そして静かに告げる。
「約束は果たしてもらいますよ」
紬は喉を押さえながら笑った。
「もっちろーん」
【リアクション】
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------------------------- エピソード17開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
生存者
【本文】
「骸の王と対峙して生き残った者は二名」
雨宮紬は誰に聞かせるでもなく呟いた。
「一人は橘湊。自身を武器とし、インスティンクトで引き出す能力は概念そのもの」
「あらゆる概念を具現化する」
そこで言葉を切る。
「そしてもう一人は――」
――前の満月。
「やったぁ!!」
ユキは満面の笑みで飛び跳ねた。
「鏡あるかな」
近くの窓ガラスに映った自分の姿を確認する。
「え、髪が白くなってる」
驚いたように目を丸くしたが、すぐに笑顔になる。
「けど可愛いからオッケー!」
骸となった事実よりも、見た目の方が重要だった。
その存在は世界の理から外れた異物。
まるでそのバグを許さないと言わんばかりに、空から一本の刀が落下した。
轟音と共に地面へ突き刺さる。
月明かりの中、その傍らに最悪の刀。
骸の王。
ユキはそれを見る。
「あ、骸の王だ」
まるで近所の知り合いを見つけたような口調だった。
「満月だから居るよねー」
そして軽く手を振る。
「帰るからバイバイ」
骸の王は何も答えない。
次の瞬間。
刀が横薙ぎに振るわれた。
首を刎ねるための一撃。
しかし。
骸の王の身体が不自然に浮き上がる。
下から凄まじい衝撃。
ユキの蹴りだった。
地面のコンクリートが反動で大きく陥没する。
蹴り上げた本人はスカートを押さえながら呟いた。
「あ……スカートだから見えちゃうかも」
そして空中へ吹き飛んだ骸の王を見上げる。
「鉄くずって欲情するのかなぁ」
少し考えた後、真面目な顔で続けた。
「女の子に暴力は良くないって知ってた?」
骸の王は答えない。
「あ、女の子は許されるんだよ?」
ユキは当然のように言った。
「だって可愛いから!」
その瞬間。
月から無数の光が降り注ぐ。
光は四方へ広がり、結界を形成していく。
骸の王は本気だった。
だが。
結界が完成した時には、ユキの姿は既にそこになかった。
結界の外。
遠く離れた場所で、ユキは振り返る事もなく手を振っていた。
「バイバイ」
そして何事もなかったかのように家路へ着く。
骸の王だけが、その場に取り残されていた。
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード18開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
付喪神
【本文】
雨宮紬は椅子の背もたれに身体を預けた。
「骸の王の破壊は不可能だよ」
軽い口調だった。
まるで天気の話でもするように続ける。
「というか、付喪神そのものが壊れにくいんだ」
机の上で指を二本立てる。
「武器を付喪神にする方法は大きく二つ」
一本目の指を折る。
「使い潰すこと。例えば、人を刺し続けたナイフは、人を殺すことに特化した付喪神になる」
続いてもう一本の指を折った。
「もう一つは、人を生贄にして武器を作ること」
そこで小さく肩を竦める。
「原理自体は似てるんだけどね」
その笑顔はどこか冷たかった。
「だからって、何人も生贄を捧げるなんて狂った発想だよ」
紬は少しだけ目を細める。
「でも、その狂人達は一つの法則を見つけた」
静かな声だった。
「質の良い生贄には共通点がある」
部屋の隅に縛られた男へ視線を向ける。
「エメラルドみたいに綺麗な目を持つ人間」
一拍置いた。
「それが武供」
男の顔から血の気が引いていく。
紬は楽しそうに笑った。
「しかもね」
「目の輝きと質は比例するんだよ」
そう言って、自らの目元へ手を伸ばす。
コンタクトレンズを外した。
死んだ魚のように濁っていた瞳が消える。
代わりに現れたのは、宝石のように透き通った翠色の瞳だった。
男の喉が鳴る。
紬は気付いていた。
気付いた上で笑う。
「あーあ」
困ったような声だった。
「知っちゃったなら仕方ないか」
ゆっくりと立ち上がる。
男は必死に首を縦に振った。
何も言わない。
誰にも話さない。
そう訴えるように。
紬は満足そうに頷く。
「うんうん」
「君のことは信頼してるよ」
その言葉に男の顔へ僅かな希望が宿る。
だが。
次の瞬間。
紬はいつも通りの笑顔で言った。
「だって死人は話さないもんね」
悲鳴は上がらなかった。
いや。
上げる暇すら無かった。
【リアクション】
0件
------------------------- エピソード19開始 -------------------------
【エピソードタイトル】
贈り物
【本文】
ユキは嬉しそうに紙袋を差し出した。
「玲志様、こちらつまらない物ですが!」
「贈り物で爆笑モノを選ぶ奴はいないでしょー!」
雨宮紬が横から口を挟む。
「黙ってろクソ女」
玲志はため息を吐きながら袋を受け取った。
思ったより軽い。
首を傾げながら中身を取り出す。
一枚の紙だった。
「……なんだこれ」
「婚姻届です!」
数秒の沈黙。
次の瞬間、紬が机を叩いて笑い始めた。
「待って待って! 全然つまらなくないじゃん!」
「証人欄なら私が書いてあげるよ!」
玲志は無言で婚姻届を真っ二つに引き裂いた。
「あーあ。可哀想」
紬が楽しそうに肩を竦める。
しかしユキは全く気にした様子がない。
むしろ感心したように頷いていた。
「なるほど!」
「奥さんにするより、可愛いからペット扱いしたいという事ですね!」
「嬉しいです、玲志様!」
玲志は天井を見上げた。
「無敵かこいつ……」
心の底から疲れ切った声だった。
そんな玲志をよそに、ユキは今度は別の袋を紬へ差し出す。
「あ、雨宮さんにはこちらです!」
「お、ありがとう」
紬は興味津々で中を覗き込む。
「中身は――」
取り出した瞬間、動きが止まった。
「首輪?」
「自分が貰って嬉しい物を贈るべきだと思いまして!」
ユキは満足そうに胸を張る。
「でも雨宮さんに似合う物を探すのは大変でした!」
紬は首輪を眺めながら苦笑した。
「普通は相手が喜ぶ物を選ぶんだよ?」
「喜ばないんですか?」
ユキは本気で不思議そうな顔をする。
「付けたら可愛いと思いますよ?」
「いやぁ……」
珍しく紬が言葉に詰まった。
ユキは追撃する。
「絶対可愛いですよ?」
紬は頭を抱えた。
「もうヤダー……なんで私の周りってこんなのしか居ないのー」
すると玲志が即座に返した。
「それは俺も思ってる」
「なんでこんな上司なんだろうなって」
紬の笑顔が固まる。
「酷くない?」
【リアクション】
0件
【免責事項】
本テキストデータの利用によって発生する如何なる案件につきましても、株式会社ヒナプロジェクト及びその関連グループは一切の責任を負いません。
このファイルは「小説家になろう」の投稿済み作品テキストダウンロード機能を用いて作成されました。
作成日時: 2026-06-21 23:37:16
武器武器ギミック
現代異能群像劇、ギャグとダークの融合
"頭のおかしい問題児たちが織りなす、命懸けの武器破壊譚。"
武器の力を引き出す能力――インスティンクト。 その世界で最強の武供と呼ばれる橘湊は、今日も元気に生存戦略を考えていた。 なぜなら、自分は武器にされる予定だから。 討伐対象を匿う苦労人の火ノ宮楓。 仕事よりサボる理由を探している相馬玲志。 笑顔で脅迫しながら部下を振り回す雨宮紬。 そして、自分の可愛さを信じて疑わない武供の最高傑作・橘湊。 目的は一つ。 千年間誰も破壊できなかった史上最悪の武器『骸の王』を破壊すること。 ただし失敗した場合、湊は武器になる。 問題児だらけの対策課と、死にたくない武供による、少しだけ頭のおかしい武器譚。
まだコメントはありません。最初のひとことをどうぞ。