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焦土

神影零

407 字

歴史フィクション、静謐な追憶

"過去の焦土と現代の静寂が交錯する、痛切な記憶の断片。"

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そこには、茶色と灰色があった。

それ以外は何もなかった。

地面はひび割れ、コンクリートが避け、水が吹き出していたり、炎が吹き出していたり。

赤ちゃんが泣く。老婆が這う。服はただれ、泣き叫ぶ。

愛していた街を壊され、愛していた家族を壊され、怒り狂う。

慟哭と憤怒。

コンクリートが崩れ、がしゃあああああんとけたたましい音が鼓膜を叩く。

何も思わなかった。

自分の服には、汚れも何もなかった。

呪いの言葉も、祈りの言葉も、記号でしかない。

水を飲ませてくれ、炎を消してくれ、そんな言葉が日本語として入ってくる。

でも、手を伸ばしても、その言葉には届かない。

紙を捲る。

ここは図書館。

本の中で、数千人が焼け死んでいる。

からん、とブラインドが音を立てた。

2026年7月5日。

81年前の今に、私は身を置いている。

── 了 ──

読んでくれてありがとう。良かったら作者にスキを送ろう。

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